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- マレーシア経済:24年4-6月期の成長率は前年同期比+5.9%~内外需が揃って改善して6四半期ぶりの高成長
2024年08月16日
2024年4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比5.9%増1(前期:同4.2%増)と上昇し、市場予想2(同5.8%増)および7月にマレーシア統計局が発表した暫定値(同5.8%)を上回る結果となった(図表1)。
4-6月期の実質GDPを需要項目別に見ると、消費と投資、輸出が揃って改善してGDPを押し上げた。
民間消費は前年同期比6.0%増となり、前期の同4.7%増から上昇した。他方、政府消費は前年同期比3.6%増(前期:同7.3%増)と低下した。
総固定資本形成は同11.5%増(前期:同9.6%増)の二桁増に加速した。建設投資が同12.6%増(前期:同10.7%増)、設備投資が同11.8%増(前期:同9.2%増)と、それぞれ上昇した。なお、投資を公共部門と民間部門に分けてみると、全体の4分の3を占める民間部門が同12.0%増(前期:同9.2%増)と加速した一方、公共部門が同9.1%増となり前期の同11.5%増と鈍化した。
純輸出は実質GDP成長率への寄与度が+0.1%ポイント(前期:▲1.4%ポイント)となり、小幅のプラスに改善した。まず財・サービス輸出は同8.4%増(前期:同5.2%増)と加速した。輸出の内訳を見ると、財貨輸出(同5.5%増)が回復したほか、サービス輸出(同24.6%増)の大幅な増加が続いた。また財・サービス輸入も同8.7%増(前期:同8.0%増)と増加を続けた。
供給側を見ると、主に第三次産業と第二次産業の改善が成長率上昇に繋がったことが分かる(図表2)。
まずGDPの6割弱を占める第三次産業は前年同期比5.9%増(前期:同4.8%増)と上昇した。宿泊業(同12.5%増)と不動産・ビジネスサービス(同11.8%増)、運輸・倉庫(同10.5%増)、金融・保険(同10.1%増)が二桁増となり、政府サービス(同4.8%増)と卸売・小売(同4.8%増)が堅調に推移した。一方、食料・飲料(同3.7%増)と情報・通信(同3.1%増)は伸び悩んだ。
第二次産業は前年同期比5.0%増(前期:同3.8%増)と上昇した。まず製造業は同4.7%増(前期:同1.9%増)と上昇し、2四半期連続のプラス成長となった。内訳を見ると、金属製品(同10.5%増)やゴム製品(同6.4%増)が好調だったほか、主力の電子機器(同3.2%増)や動植物性油脂(同6.3%増)、輸送用機器(同5.7%増)、石油製品(同3.9%増)、化学製品(同3.4%増)がそれぞれ改善した。また建設業が同17.3%増となり、前期の同11.9%増から更に加速した。一方、鉱業は同2.7%増(前期:同5.7%増)となり、天然ガス(同8.9%増)と原油(同1.6%増)がそれぞれ伸び悩んだ。
第一次産業は同7.2%増(前期:同1.7%増)と加速した。シェアの大きいパーム油(同19.0%増)をはじめとして畜産(同5.5%増)、漁業・養殖業(同5.3%増)が回復した。
1 2024年8月16日、マレーシア中央銀行が2024年4-6月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査
まずGDPの6割弱を占める第三次産業は前年同期比5.9%増(前期:同4.8%増)と上昇した。宿泊業(同12.5%増)と不動産・ビジネスサービス(同11.8%増)、運輸・倉庫(同10.5%増)、金融・保険(同10.1%増)が二桁増となり、政府サービス(同4.8%増)と卸売・小売(同4.8%増)が堅調に推移した。一方、食料・飲料(同3.7%増)と情報・通信(同3.1%増)は伸び悩んだ。
第二次産業は前年同期比5.0%増(前期:同3.8%増)と上昇した。まず製造業は同4.7%増(前期:同1.9%増)と上昇し、2四半期連続のプラス成長となった。内訳を見ると、金属製品(同10.5%増)やゴム製品(同6.4%増)が好調だったほか、主力の電子機器(同3.2%増)や動植物性油脂(同6.3%増)、輸送用機器(同5.7%増)、石油製品(同3.9%増)、化学製品(同3.4%増)がそれぞれ改善した。また建設業が同17.3%増となり、前期の同11.9%増から更に加速した。一方、鉱業は同2.7%増(前期:同5.7%増)となり、天然ガス(同8.9%増)と原油(同1.6%増)がそれぞれ伸び悩んだ。
第一次産業は同7.2%増(前期:同1.7%増)と加速した。シェアの大きいパーム油(同19.0%増)をはじめとして畜産(同5.5%増)、漁業・養殖業(同5.3%増)が回復した。
1 2024年8月16日、マレーシア中央銀行が2024年4-6月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査
4-6月期GDPの評価と先行きのポイント
マレーシア経済は、2023年は輸出低迷やペントアップ需要の押し上げ効果の剥落による内需の鈍化により通年の成長率が同+3.6%となり、コロナ禍からの経済活動の正常化により好調だった2022年の同+8.9%から低下した。しかし、今回発表された2024年4-6月期の成長率は前年同期比+5.9%となり、2023年10-12月期の同+2.9%から2四半期連続で回復した。
4-6月期は消費と投資、輸出が揃って改善したことが成長率上昇に繋がった。まず内需はGDPの6割を占める民間消費が同+6.0%となり、5四半期ぶりの高成長だった。雇用者数の増加が続き、失業率が低水準で推移する一方(図表3)、消費者物価上昇率は4-6月期が前年同期比+1.9%(1-3月期の同+1.7%)と安定して推移しており、実質所得が向上した。また政府の低所得層向け現金給付制度「スンバンガン・トゥナイ・ラフマー」の給付が消費を押し上げた。
また総固定資本形成は同+11.5%となり、好調だった前期の同+9.6%から更に加速した。民間部門と公共部門にわたる複数年の投資プロジェクトの進展により建設投資(同+12.6%)が好調だったほか、設備投資(同+11.8%)も新産業マスタープラン(NIMP)2030に基づく政府支援が追い風となり高い伸びを維持した。
純輸出も引き続き改善した。財輸出(同+5.5%)は1-3月期の同+1.0%から加速して2四半期連続のプラス成長となった。またサービス輸出(同+24.6%)はインバウンド需要の回復により大幅な増加が続いた。マレーシア政府は2022年4月以降、入国規制が段階的に緩和、そして昨年12月には中国人とインド人に対して最大30日間のビザなし入国を認めたことで国際線旅客数がコロナ禍前の約9割の水準まで回復している(図表4)。
昨年は世界的な需要低迷により景気が減速したマレーシア経済だが、今年は2四半期連続で市場予想を上回る成長を続けている。年内は堅調な内需と観光業の持続的な回復により、通年の成長率は政府目標(4~5%)の上限である+5%近くを達成しそうだ。もっとも6月には政府は軽油に対する燃料補助金を廃止しており、今後はインフレ圧力が高まる展開が予想され、マレーシア中銀は引き締め的な金融政策を維持するだろう。マレーシアはGDPに占める輸出の割合が7割強と高い国であるだけに、好調な景気が続くどうかは輸出の回復がカギを握るだろう。
4-6月期は消費と投資、輸出が揃って改善したことが成長率上昇に繋がった。まず内需はGDPの6割を占める民間消費が同+6.0%となり、5四半期ぶりの高成長だった。雇用者数の増加が続き、失業率が低水準で推移する一方(図表3)、消費者物価上昇率は4-6月期が前年同期比+1.9%(1-3月期の同+1.7%)と安定して推移しており、実質所得が向上した。また政府の低所得層向け現金給付制度「スンバンガン・トゥナイ・ラフマー」の給付が消費を押し上げた。
また総固定資本形成は同+11.5%となり、好調だった前期の同+9.6%から更に加速した。民間部門と公共部門にわたる複数年の投資プロジェクトの進展により建設投資(同+12.6%)が好調だったほか、設備投資(同+11.8%)も新産業マスタープラン(NIMP)2030に基づく政府支援が追い風となり高い伸びを維持した。
純輸出も引き続き改善した。財輸出(同+5.5%)は1-3月期の同+1.0%から加速して2四半期連続のプラス成長となった。またサービス輸出(同+24.6%)はインバウンド需要の回復により大幅な増加が続いた。マレーシア政府は2022年4月以降、入国規制が段階的に緩和、そして昨年12月には中国人とインド人に対して最大30日間のビザなし入国を認めたことで国際線旅客数がコロナ禍前の約9割の水準まで回復している(図表4)。
昨年は世界的な需要低迷により景気が減速したマレーシア経済だが、今年は2四半期連続で市場予想を上回る成長を続けている。年内は堅調な内需と観光業の持続的な回復により、通年の成長率は政府目標(4~5%)の上限である+5%近くを達成しそうだ。もっとも6月には政府は軽油に対する燃料補助金を廃止しており、今後はインフレ圧力が高まる展開が予想され、マレーシア中銀は引き締め的な金融政策を維持するだろう。マレーシアはGDPに占める輸出の割合が7割強と高い国であるだけに、好調な景気が続くどうかは輸出の回復がカギを握るだろう。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年08月16日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
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