2024年07月02日

ベトナム経済:24年4-6月期の成長率は前年同期比6.93%増~輸出と観光業の回復により7四半期ぶりの高成長に

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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1.結果の概要:成長加速、市場予想を上回る

2024年4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比6.93%増1(前期:同5.87%増)と上昇し、市場予想2(同6.00%増)を大きく上回る結果となった(図表1)。
 
産業別の伸び率をみると、まず鉱工業・建設業は同8.55%増となり、前期の同6.47%増から上昇した(図表1)。主力の製造業は同10.04%増(前期:同7.21%増)と加速した。また電気・ガス業が同14.15%増(前期:同12.30%増)と二桁成長を続けた。一方、鉱業が同9.06%減(前期:同5.34%減)と低迷したほか、建設業が同7.07%増(前期:同7.68%増)と鈍化した。

GDPの4割強を占めるサービス業は同7.06%増となり、前期の同6.20%増から上昇した。サービス業の内訳を見ると、運輸・倉庫業(同11.51%増)と宿泊・飲食業(同11.26%増)が二桁成長となり、また卸売・小売業(同7.62%増)、専門・科学技術サービス(同6.20%増)、党関連活動(同5.81%増)、金融業(同5.74%増)も堅調に推移した。一方、不動産業(同3.12%増)、保健・社会サービス(同4.13%増)、教育(同4.69%増)、情報・通信業(同4.90%増)は緩やかな伸びにとどまった。

農林水産業は前年同期比3.34%増(前期:同3.42%増)と小幅に低下した。
(図表1)ベトナムの実質GDP成長率(供給側)/(図表2)ベトナム輸出の伸び率(品目別)
 
1 6月29日、ベトナム統計総局(GSO)が2024年4-6月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査

2.結果の評価と先行きのポイント

ベトナム経済は昨年、輸出の落ち込みや不動産市場の停滞により通年の成長率が同+5.1%(2022年:同+8.0%)と鈍化したが、年後半に輸出が増加に転じたため10-12月期の成長率は同+6.72%まで回復している。今年1-3月期の成長率は同5.87%と鈍化したが、今回発表された4-6月期は同+6.93%と7四半期ぶりの高成長となり、景気回復が続いていることが明らかとなった。

4-6月期は鉱工業とサービス業がそれぞれ改善したことが成長率上昇に繋がった。まず製造業(同+10.04%)は輸出の回復を受けて外資系企業を中心に生産が伸びており、前期の同+7.21%から加速した。通関ベースの貿易統計をみると、4-6月期の輸出(同+11.5%)は電子部品やスマートフォンの出荷が米国向けを中心に回復して二桁成長が続いている(図表2)。

サービス業(同+7.06%)は前期の同+6.20%から加速した。ベトナム政府は外国人旅行者のビザ要件緩和や滞在可能期間の延長といった観光促進策を打ち出しており、4-6月期の外国人観光客が同+45.7%の418万人(図表3)となるなどインバウンド需要が増加している。またモノの貿易量の増加も加わり、運輸・倉庫業(同+11.51%)と宿泊・飲食業(同+11.26%)が好調でサービス業全体を押し上げた。4-6月期の消費者物価上昇率は同+4.39%(1-3月期は同+3.77%)となり再びインフレが加速し(図表4)、24年の国家目標である4~4.5%の上限に近づいている。消費への悪影響が懸念されたが、良好な雇用環境が続いていることから卸売・小売業(同7.62%増)は堅調な拡大が続いた。

不動産市場は回復傾向にあるものの、不動産(同+3.12%)は緩やかな伸びにとどまり、建設業(同+7.07%)は増勢が鈍化した。

経済の先行きは世界的な電子機器輸出の回復と海外からの直接投資の拡大を受けて製造業生産が好調でGDPをけん引する展開が続きそうだ。またベトナム政府は今年6月に終了する予定だった付加価値税(VAT)2%減税を半年延長し、そして7月には最低賃金5%引上げと公務員給与30%引き上げが実施されている。旺盛な消費需要が引き続き内需を押し上げるだろう。従って、ベトナム経済の見通しは明るく、政府の通年の成長率目標(6.0%~6.5%)の達成は可能とみられる。もっとも今後もインフレの高止まりが予想されるほか、今年前半の高めの成長は前年同期の成長率が低かったことも関係したことを踏まえると、24年後半は成長率が鈍化する可能性もある。
(図表3)ベトナムの外国人観光客数/(図表4)ベトナムのインフレ率と政策金利
 
 

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(2024年07月02日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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