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- 利上げによる住宅ローンを通じた日本経済への影響
2024年09月06日
長らく金利低下局面にあったことから、住宅ローン貸出残高の伸びが継続している。また、円安を背景とする建築資材価格の高騰、人件費の高まりなどを受けて不動産価格の上昇傾向が続いており、それに応じて住宅ローンを利用する際の借入額も増えているものと考えられる。
住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査(2023年10月調査)」によると、変動金利型住宅ローンの利用割合は74.5%で、過去の調査と比較しても徐々に拡大している。不動産価格の上昇も伴ってきた中で、インターネット専業銀行や地域金融機関を中心に住宅ローン残高が拡大しており、変動金利型住宅ローンの適用金利の最低水準は2024年7月時点で0.3~0.4%となっている。
変動金利型住宅ローンの適用金利の決定は金融機関ごとに裁量があるが、「短期プライムレートを参照する」と説明しているところが多い。短期プライムレートの決定も金融機関ごとに裁量があるが、日本銀行が政策金利とする無担保コールレート(オーバーナイト物)と連動する[図表1]。そのため、今後日本銀行が利上げすれば、それに連動して短期プライムレートが上昇する可能性が高い。短期プライムレートの上昇に伴い、変動金利型住宅ローンの利用者の適用金利がそれだけ上昇することになる。
住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査(2023年10月調査)」によると、変動金利型住宅ローンの利用割合は74.5%で、過去の調査と比較しても徐々に拡大している。不動産価格の上昇も伴ってきた中で、インターネット専業銀行や地域金融機関を中心に住宅ローン残高が拡大しており、変動金利型住宅ローンの適用金利の最低水準は2024年7月時点で0.3~0.4%となっている。
変動金利型住宅ローンの適用金利の決定は金融機関ごとに裁量があるが、「短期プライムレートを参照する」と説明しているところが多い。短期プライムレートの決定も金融機関ごとに裁量があるが、日本銀行が政策金利とする無担保コールレート(オーバーナイト物)と連動する[図表1]。そのため、今後日本銀行が利上げすれば、それに連動して短期プライムレートが上昇する可能性が高い。短期プライムレートの上昇に伴い、変動金利型住宅ローンの利用者の適用金利がそれだけ上昇することになる。
適用金利が上昇していく環境になれば、それだけ変動金利型住宅ローンを借り入れている世帯では消費行動の抑制が想定されるだろう。直近の各種データを用いて、日本国内の住宅ローン利用者が支払う元利返済額の総和を推定したところ、筆者の概算で年間13兆3,300億円程度となった。
適用金利の上昇によって住宅ローンの負担増から個人消費にどの程度の影響があるのか推定してみたところ、変動金利型住宅ローンの適用金利が1%上昇すると、元利返済額の総和は年間14兆3,100億円程度にまで増えるという結果になった。
つまり、政策金利の1%上昇で約1兆円程度の返済額の増加が生じることになる。これは、民間最終消費支出が300兆円程度であることを考慮に入れると、1%程度の金利上昇が生じたとしても、変動金利型のローン残高の割合が増えることによる家計支出への影響は、マクロで見ると、家計の消費支出額の0.3%程度ということになる。実際には5年ルール*1や125%ルール*2のある契約も多く存在しており、この試算結果よりも緩やかな上昇幅に留まるものと考えられる。固定金利型よりも適用金利が相対的に低い変動金利型には、毎月の元本返済額が相対的に大きいという特徴があり、より早期に元本返済が進む[図表2]。そのため、変動金利型で借り入れている住宅ローン利用者の元本返済が相応に進んでいるものとみられ、金利上昇による家計の消費への影響は限定的であると結論付けることができる。
適用金利の上昇によって住宅ローンの負担増から個人消費にどの程度の影響があるのか推定してみたところ、変動金利型住宅ローンの適用金利が1%上昇すると、元利返済額の総和は年間14兆3,100億円程度にまで増えるという結果になった。
つまり、政策金利の1%上昇で約1兆円程度の返済額の増加が生じることになる。これは、民間最終消費支出が300兆円程度であることを考慮に入れると、1%程度の金利上昇が生じたとしても、変動金利型のローン残高の割合が増えることによる家計支出への影響は、マクロで見ると、家計の消費支出額の0.3%程度ということになる。実際には5年ルール*1や125%ルール*2のある契約も多く存在しており、この試算結果よりも緩やかな上昇幅に留まるものと考えられる。固定金利型よりも適用金利が相対的に低い変動金利型には、毎月の元本返済額が相対的に大きいという特徴があり、より早期に元本返済が進む[図表2]。そのため、変動金利型で借り入れている住宅ローン利用者の元本返済が相応に進んでいるものとみられ、金利上昇による家計の消費への影響は限定的であると結論付けることができる。
しかも、平均的に見れば、持家世帯であっても負債額よりも貯蓄額の方が大きい状況にあり、賃金上昇や貯蓄からの収入増によってある程度は対処できるものと考えられる。
ただし、ミクロで見ると、住宅ローンの残存年限が長い債務者に金利上昇の影響が集中することが懸念される。特に、持家世帯の貯蓄や負債を世代別に見ると、20代、30代や40代では貯蓄よりも負債の方が大きく、金利上昇すると負担の方が大きくなる。これらの世代は老後に向けた長期的な資産形成も同時に行っていく必要があるが、金利上昇下では貯蓄の積み上げも難しくなるだろう。このような将来不安に波及する問題への対応策として、引き続き企業に対して賃金上昇を促していくのに加えて、住宅ローン減税の拡充や利子補給などの政策を実施していく必要性もあるかもしれない。
ただし、ミクロで見ると、住宅ローンの残存年限が長い債務者に金利上昇の影響が集中することが懸念される。特に、持家世帯の貯蓄や負債を世代別に見ると、20代、30代や40代では貯蓄よりも負債の方が大きく、金利上昇すると負担の方が大きくなる。これらの世代は老後に向けた長期的な資産形成も同時に行っていく必要があるが、金利上昇下では貯蓄の積み上げも難しくなるだろう。このような将来不安に波及する問題への対応策として、引き続き企業に対して賃金上昇を促していくのに加えて、住宅ローン減税の拡充や利子補給などの政策を実施していく必要性もあるかもしれない。
*1 金利が上昇しても、5年間は毎月の返済額が変わらないルールのことを指す
*2 5年経過後の6年目からの毎月の返済額は、今までの返済額に対して125%の金額までしか上げることができないとするルールのことを指す
(2024年09月06日「基礎研マンスリー」)
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経歴
- 【職歴】
2005年4月 住友信託銀行株式会社(現 三井住友信託銀行株式会社)入社
2014年9月 株式会社ニッセイ基礎研究所 入社
2021年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・経済産業省「キャッシュレスの普及加速に向けた基盤強化事業」における検討会委員(2022年)
・経済産業省 割賦販売小委員会委員(産業構造審議会臨時委員)(2023年)
【著書】
成城大学経済研究所 研究報告No.88
『日本のキャッシュレス化の進展状況と金融リテラシーの影響』
著者:ニッセイ基礎研究所 福本勇樹
出版社:成城大学経済研究所
発行年月:2020年02月
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