2021年11月08日

変動金利型と固定金利型のどちらの住宅ローンを選択すべきか-市場動向から最適な住宅ローンの借入戦略について考える

金融研究部 金融調査室長・年金総合リサーチセンター兼任 福本 勇樹

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■要旨
 
  • 個人の住宅ローン残高が増加傾向にある。その理由として、低金利環境の長期化、住宅ローン減税の順ざや、マンション価格の上昇が挙げられる。
     
  • このような環境の中で、変動金利型住宅ローンのシェアが拡大しており、一部の国内銀行の業態で獲得競争が激化している。
     
  • 個人は、変動金利型住宅ローンを借り入れるだけでなく、借入期間も長期化することで毎月の返済額を抑制しているとみられる。
     
  • 住宅ローンの適用金利が十分に低い水準にあることで、金利上乗せがあるものの、保障内容の充実した団体信用生命保険を取り組む個人が増えている。
     
  • 変動金利型住宅ローンを取り組む人が増えている中で、機動的に固定金利型に契約変更や借り換えを行うことは困難である。
     
  • 金融機関は金利上昇をヘッジするための金融商品を活用できるが、個人が金利上昇に備える方法は固定金利型と組み合わせる、預貯金の積み立て等を活用してリスクバッファを確保するなどに限られている。
     
  • 本稿では、固定金利型の返済額との差額を預貯金で積み立ててリスクバッファを確保しつつ変動金利型住宅ローンを借り入れる場合について、金利上昇に関するシナリオ分析を行った。
     
  • 本稿の分析によれば、今後5年間預貯金でリスクバッファを確保しながら変動金利型住宅ローンを借り入れると、1%程度の金利上昇が生じても、預貯金を原資に繰り上げ返済を行えば、固定金利型で借り入れるよりも月々の返済額は小さくなる。
     
  • 2%程度金利上昇が生じる場合は、今後15年以上低金利政策が継続しないと、固定金利型で借り入れるよりも月々の返済額が大きくなる可能性がある。
     
  • 2%程度の金利上昇に備えるには、住宅ローン減税分もリスクバッファとして預貯金等で確保しておく、当初の月々の返済額が大きくなるデメリットを受け入れてミックスローンを活用する、などの手段も合わせて検討する必要がある。


■目次

1――増加傾向にある個人の住宅ローン借入残高
  1|低金利環境の長期化
  2|住宅ローン減税の順ざや
  3|マンション価格の上昇
2――住宅ローン市場の動向
  1|変動金利型住宅ローンのシェアが拡大
  2|住宅ローンの借入期間の長期化
  3|住宅ローンのシェアを伸ばす信託銀行、地方銀行と新規参入銀行
  4|特約付きの団体信用生命保険を選好する個人の増加
3――変動金利型と固定金利型のどちらを選択すべきか
  1|変動金利型と固定金利型のメリットとデメリットの比較
  2|変動金利型住宅ローンの借り手が金利リスクを管理する際の3つの留意事項
  3|変動金利型住宅ローンの借り手がとりえる戦略(その1): ミックスローンの活用
  4|変動金利型住宅ローンの借り手がとりえる戦略(その2): リスクバッファを確保する
4――リスクバッファ付き変動金利型住宅ローンの効果検証
5――まとめ

(2021年11月08日「基礎研レポート」)

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金融研究部   金融調査室長・年金総合リサーチセンター兼任

福本 勇樹 (ふくもと ゆうき)

研究・専門分野
金融・決済・価格評価

経歴
  • 【職歴】
     2005年4月 住友信託銀行株式会社(現 三井住友信託銀行株式会社)入社
     2014年9月 株式会社ニッセイ基礎研究所 入社
     2021年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・経済産業省「キャッシュレスの普及加速に向けた基盤強化事業」における検討会委員(2022年)
     ・経済産業省 割賦販売小委員会委員(産業構造審議会臨時委員)(2023年)

    【著書】
     成城大学経済研究所 研究報告No.88
     『日本のキャッシュレス化の進展状況と金融リテラシーの影響』
      著者:ニッセイ基礎研究所 福本勇樹
      出版社:成城大学経済研究所
      発行年月:2020年02月

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