- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 不動産 >
- 不動産市場・不動産市況 >
- 住宅ローン審査はコロナ禍でも厳しくならない-無理をして借りる人も増加、計画は慎重に
2020年08月31日
■要旨
マンション価格を大きく左右するものの一つに住宅ローンの状況がある。買主の資金調達が容易な状態では売主の提示した価格で売買が成立する可能性が高い。一方、購入者が多額の住宅ローンの借入によって購入資金をまかなう場合、購入後に返済が困難になる可能性が高くなる。
マンションの購入者の自己資金と借入金の割合をみると、全国的に借入金に依存する割合が増加している。また、金融機関の住宅ローンの審査基準も緩和されてきたものと推定される。マンションの購入資金に対してローンを100%で借り入れてマンションを購入する人の割合は2014年以降増加を続けている。
個人向けの新規融資総額のリーマン・ショック後の動向を見ても、2009年度の住宅ローンの新規融資総額は前年比で大きな減少なく、翌2010年度ですぐに同水準に回復し、住宅ローンは借りやすい状況が続いていたとみられる。
一般的に必要な資金を借りやすい状態では不動産の価格が上がりやすくなるが、それは住宅の価格と住宅ローンの場合も同じである。マンションの年収倍率は上昇を続けており、平均年収との伸び率を比較すれば、年収の伸びよりもはるかにマンション価格の上昇のほうが大きかったことがわかる。
「住宅ローン返済に余裕があるか」を測る「返済負担率」を見ると、無理をして借り入れをする人の割合も増加しているようであるが、過去の推移をみれば、2009年度も「返済負担率が30%を超える人」は前年比で増加していた。コロナ禍の影響を受けても、ある程度確実な給与等の収入がある人に対する住宅ローンの審査はさほど厳しくはならないのではないだろうか。
しかし、「借入ができる」ことと「返済に余裕がある」ことは別である。せっかく良い物件を購入しても、住宅ローンを完済できなければ自分のものにはならない。
住宅ローンの利用を決める前に、実際に何がいくらかかるのかを計画に落とし込み、余裕をもって返済できるかを十分に検証する必要があるだろう。
■目次
1. はじめに
2. 住宅ローン金利は借入者に有利な状況が続いている
3. 金融機関にとってリスクが高いはずの「自己資金なしの購入者」が増えている
4. 住宅ローン融資額は順調に推移し、マンション価格の上昇に貢献している
5. 無理をして住宅ローンを借りる人も増加している。返済計画は十分に検証を
6. おわりに
マンション価格を大きく左右するものの一つに住宅ローンの状況がある。買主の資金調達が容易な状態では売主の提示した価格で売買が成立する可能性が高い。一方、購入者が多額の住宅ローンの借入によって購入資金をまかなう場合、購入後に返済が困難になる可能性が高くなる。
マンションの購入者の自己資金と借入金の割合をみると、全国的に借入金に依存する割合が増加している。また、金融機関の住宅ローンの審査基準も緩和されてきたものと推定される。マンションの購入資金に対してローンを100%で借り入れてマンションを購入する人の割合は2014年以降増加を続けている。
個人向けの新規融資総額のリーマン・ショック後の動向を見ても、2009年度の住宅ローンの新規融資総額は前年比で大きな減少なく、翌2010年度ですぐに同水準に回復し、住宅ローンは借りやすい状況が続いていたとみられる。
一般的に必要な資金を借りやすい状態では不動産の価格が上がりやすくなるが、それは住宅の価格と住宅ローンの場合も同じである。マンションの年収倍率は上昇を続けており、平均年収との伸び率を比較すれば、年収の伸びよりもはるかにマンション価格の上昇のほうが大きかったことがわかる。
「住宅ローン返済に余裕があるか」を測る「返済負担率」を見ると、無理をして借り入れをする人の割合も増加しているようであるが、過去の推移をみれば、2009年度も「返済負担率が30%を超える人」は前年比で増加していた。コロナ禍の影響を受けても、ある程度確実な給与等の収入がある人に対する住宅ローンの審査はさほど厳しくはならないのではないだろうか。
しかし、「借入ができる」ことと「返済に余裕がある」ことは別である。せっかく良い物件を購入しても、住宅ローンを完済できなければ自分のものにはならない。
住宅ローンの利用を決める前に、実際に何がいくらかかるのかを計画に落とし込み、余裕をもって返済できるかを十分に検証する必要があるだろう。
■目次
1. はじめに
2. 住宅ローン金利は借入者に有利な状況が続いている
3. 金融機関にとってリスクが高いはずの「自己資金なしの購入者」が増えている
4. 住宅ローン融資額は順調に推移し、マンション価格の上昇に貢献している
5. 無理をして住宅ローンを借りる人も増加している。返済計画は十分に検証を
6. おわりに
(2020年08月31日「不動産投資レポート」)
このレポートの関連カテゴリ
03-3512-1853
経歴
- 【職歴】
2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
2006年 総合不動産会社に入社
2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員
渡邊 布味子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/12/19 | 首都圏中古マンション市場動向(2024年11月)~「成約件数横ばい・成約価格横ばい」の局面に移行。東京では新規登録価格と成約価格の逆転も | 渡邊 布味子 | 基礎研レター |
2024/10/31 | 首都圏新築マンション市場の動向(2024年9月)~マンション発売戸数は今後も低水準にとどまる見通し | 渡邊 布味子 | 不動産投資レポート |
2024/09/11 | 不動産投資市場動向(2024年上半期)~外資の取得額が減少するも、全体では高水準を維持 | 渡邊 布味子 | 不動産投資レポート |
2024/09/06 | 東京オフィス市場は賃料の底打ちが明確に。物流市場は空室率高止まり-不動産クォータリー・レビュー2024年第2四半期 | 渡邊 布味子 | 基礎研マンスリー |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2025年01月15日
インド消費者物価(24年12月)~12月のCPI上昇率が2カ月連続で低下、食品インフレ和らぐ -
2025年01月15日
貸出・マネタリー統計(24年12月)~利上げが貸出金利に波及、定期預金残高の底入れが顕著に -
2025年01月15日
景気ウォッチャー調査2024年12月~インバウンド需要は好調継続~ -
2025年01月15日
Investors Trading Trends in Japanese Stock Market:An Analysis for December 2024 -
2025年01月15日
投資部門別売買動向(24年12月)~海外投資家は買い越し、個人は売り越し~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【住宅ローン審査はコロナ禍でも厳しくならない-無理をして借りる人も増加、計画は慎重に】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
住宅ローン審査はコロナ禍でも厳しくならない-無理をして借りる人も増加、計画は慎重にのレポート Topへ