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2025年06月24日
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■要旨
■目次
1――はじめに
2――HHIによる日本国債市場の寡占度分析
1|HHIとは?
2|日本銀行を含むHHIの推移
3|日本銀行を除いたHHIの推移
3――市場参加者の保有構造と制度的制約
1|預金取扱金融機関の保有構造:金融規制と流動性リスクへの対応
2|生命保険会社の保有構造:ALMと会計制度による保有構造の形成
4――まとめ:金融正常化下で浮上する日本国債市場の構造的寡占リスク
- 本稿は、日本国債市場における市場構造の寡占状況をハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)を用いて定量的に分析し、金融政策の正常化局面におけるリスク要因を検討するものである。
- HHIの分析により、日本銀行を含めた場合の日本国債市場は極めて高い寡占度にあり、異次元緩和を経て市場が「政策管理下」に置かれた構造が明らかとなった。
- 日本銀行を除いた場合でも、市場参加者の多様化の傾向はみられるものの、預金取扱金融機関および生命保険会社による保有が依然として高水準にあり、「準寡占状態」にある。
- 預金取扱金融機関は、金利リスクや流動性リスクへの対応として、日銀当座預金を中心に短期資産へのシフトを進めており、これはレバレッジ比率規制やIRRBB、LCRといった制度的要因にも起因している。
- 一方、生命保険会社は、長期の保険負債と整合的な会計制度やALMの観点から日本国債を重視しているが、ソルベンシー規制対応に伴う長期債への投資は一定の段階に達したとの指摘もある。
- 金融政策の正常化によって「脱日本銀行」が進展しても、制度的制約の下では主要プレーヤーの日本国債保有余力には限界がある。
- 市場が特定業態に過度に依存する状態では、構造的なリスクの顕在化を契機に連鎖的な保有行動の変化が起こりやすく、市場の流動性や価格安定性に脆弱性が生じるリスクがある。
- よって、日本国債市場における健全な価格形成機能を回復させるためには、国債発行の年限構成の見直しに加え、金融規制の調整や多様な運用主体の育成といった中長期的な制度改革が不可欠である。
■目次
1――はじめに
2――HHIによる日本国債市場の寡占度分析
1|HHIとは?
2|日本銀行を含むHHIの推移
3|日本銀行を除いたHHIの推移
3――市場参加者の保有構造と制度的制約
1|預金取扱金融機関の保有構造:金融規制と流動性リスクへの対応
2|生命保険会社の保有構造:ALMと会計制度による保有構造の形成
4――まとめ:金融正常化下で浮上する日本国債市場の構造的寡占リスク
(2025年06月24日「基礎研レポート」)
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経歴
- 【職歴】
2005年4月 住友信託銀行株式会社(現 三井住友信託銀行株式会社)入社
2014年9月 株式会社ニッセイ基礎研究所 入社
2021年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・経済産業省「キャッシュレスの普及加速に向けた基盤強化事業」における検討会委員(2022年)
・経済産業省 割賦販売小委員会委員(産業構造審議会臨時委員)(2023年)
【著書】
成城大学経済研究所 研究報告No.88
『日本のキャッシュレス化の進展状況と金融リテラシーの影響』
著者:ニッセイ基礎研究所 福本勇樹
出版社:成城大学経済研究所
発行年月:2020年02月
福本 勇樹のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
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