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国際的なデジタル貿易と日本の赤字

経済研究部 主任研究員 高山 武士
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まとめ
最後に、デジタル収支は、経常収支(財・サービス収支と所得収支)の一部であることを踏まえて、改めて、主要国(日本、英国、米国、中国、EU)における規模感を再確認すると、デジタル輸出入はいずれの国でも財貿易やサービス貿易全体の規模と比較すれば限定的である(表紙図表2・3)。ただし、収支額では英国、米国、中国、EU(対域外)で黒字であり、特に英国や米国では財貿易が赤字であるため、国外からの収益源として一定の存在感があると考えられる。
日本は、主要先進国のなかでデジタル赤字の規模が大きく、この領域の競争力は相対的に低いと言える。デジタル貿易が盛んなアイルランドやインドでは英語という言語の利点や、人材や産業集積の強みを活かし競争力を伸ばしている。日本は、母国語が日本語であるなど、グローバルにサービスを展開する上で一定の壁があるため、これらの国を見本にして、デジタル貿易の競争力を迅速に向上させることは難しいように思われる。一方で、デジタル貿易分野の競争力が低くても、これら海外のサービスを利用して日本の強みのある分野で競争力を伸ばし成長すれば、日本にとってもメリットとなる。したがって、デジタル赤字は必ずしも問題とはいえないが、23年の財・サービス貿易を見ると、日本は財もサービスも赤字であり、過去に競争力のあったものづくりの分野を含めて、輸出全体でみた競争力の低下も懸念される状況にある。デジタル赤字は、経済のデジタル化が進む中で日本がどの産業、経済分野で競争力を高めていくべきかを改めて問うきっかけを提供していると思われる。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年08月28日「Weekly エコノミスト・レター」)

03-3512-1818
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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