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- 2024・2025年度経済見通し(24年5月)
2024年05月17日
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(物価の見通し)
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、2023年1月に前年比4.2%と1981年9月以来41年4ヵ月ぶりの高い伸びとなった後、政府による電気・都市ガス代の負担緩和策の影響などから鈍化傾向が続き、2023年9月以降は2%台で推移している。
今回の物価上昇は、円安、原油高に伴う輸入物価の急上昇を起点としたものだった。このところ原油価格は横ばい圏で推移しているが、米国の利下げ観測の後退などから円安・ドル高が再び進行しており、1ドル=150円台半ばとなっている。マクロモデルによるシミュレーションで、2021年以降の円安、原油高による累積的な消費者物価の押し上げ効果を試算すると、2021年から2022年半ばにかけて急拡大した押し上げ幅は、原油価格の下落を受けて2022年末頃から縮小傾向となり、2023年半ばには前年に比べた押し上げ幅が小幅なマイナスとなった。しかし、円安による消費者物価の押し上げ幅は拡大傾向が続いており、2023年度後半以降は前年に比べた押し上げ幅が再び拡大している。
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、2023年1月に前年比4.2%と1981年9月以来41年4ヵ月ぶりの高い伸びとなった後、政府による電気・都市ガス代の負担緩和策の影響などから鈍化傾向が続き、2023年9月以降は2%台で推移している。
今回の物価上昇は、円安、原油高に伴う輸入物価の急上昇を起点としたものだった。このところ原油価格は横ばい圏で推移しているが、米国の利下げ観測の後退などから円安・ドル高が再び進行しており、1ドル=150円台半ばとなっている。マクロモデルによるシミュレーションで、2021年以降の円安、原油高による累積的な消費者物価の押し上げ効果を試算すると、2021年から2022年半ばにかけて急拡大した押し上げ幅は、原油価格の下落を受けて2022年末頃から縮小傾向となり、2023年半ばには前年に比べた押し上げ幅が小幅なマイナスとなった。しかし、円安による消費者物価の押し上げ幅は拡大傾向が続いており、2023年度後半以降は前年に比べた押し上げ幅が再び拡大している。
今回の見通しでは、原油価格(WTI)は1バレル=80ドル台前半で横ばい圏の推移が続き、為替レートは米国が2024年12月から利下げに転じることを前提に円高・ドル安が進み、2025年度末には1ドル=140円弱となることを想定している。このため、円安、原油高による消費者物価上昇率の押し上げ幅は、2024年後半以降は縮小し、2025年度末には前年比でみた押し上げはゼロ%に近づくことが見込まれる。2022年1月から実施されてきたガソリン、灯油等に対する燃料油価格激変緩和措置は2024年4月末までとされていたが、5月以降も延長されることとなった。一方、2023年2月から実施されてきた電気・都市ガス代の激変緩和措置は2024年5月使用分で激変緩和の幅を縮小した後、6月使用分以降は延長されないこととなった。今回の見通しでは、ガソリン、灯油等に対する燃料油価格激変緩和措置は2024年度末まで現行どおり、2025年度は補助率を縮小した上で継続することを前提とした。
エネルギー価格は2023年2月から前年比でマイナスが続いているが、2024年5月から電気代の再生可能エネルギー発電促進賦課金単価が1.40円から3.49円(1kWh当たり)に引き上げられること、電気代・都市ガス代の値引き額が2024年5月使用分(CPIの反映は6月)で半減、6月以降はなくなることから、上昇率がプラスに転じ、再びコアCPIの押し上げ要因となる。エネルギー価格の上昇率は2024年夏頃には前年比で二桁の高い伸びとなり、コアCPI上昇率への寄与度は1%程度まで拡大することが予想される。
また、サービス価格は2%台前半の伸びが続いているが、2024年の春闘賃上げ率が前年を大きく上回ることを受けて、上昇ペースは今後さらに加速する公算が大きい。財と比べてサービスの価格は人件費によって決まる部分が大きい。実際、サービス価格と賃金の連動性は非常に高く、2023年のサービス価格の上昇率は前年比1.8%となり、2023年のベースアップ2%程度とほぼ一致した。連合の集計結果で、2024年の春闘賃上げ率のうちベースアップに相当する「賃上げ分」が3.57%(第5回集計結果)となっていることを踏まえると、サービス価格は3%台まで上昇率が高まることが予想される。
コアCPIは、食料(除く生鮮食品)の伸び率鈍化をエネルギー価格の上昇ペース加速が打ち消す形で、2024年度前半は前年比2%台後半の推移が続くだろう。2024年度後半以降は円高に伴う財価格の上昇率鈍化を主因として2%台前半まで鈍化し、2025年度入り後には日銀の物価目標である2%を割り込むことが予想される。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年05月17日「Weekly エコノミスト・レター」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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