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- 消費者物価(全国24年3月)-コアCPIは24年度半ばまで2%台後半の伸びが続く見通し
2024年04月19日
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1.コアCPI上昇率は前月から0.2ポイント縮小の2.6%
コアCPIの内訳をみると、ガソリン(2月:前年比4.5%→3月:同4.3%)、灯油(2月:前年比4.3%→3月:同4.7%)の上昇率は前月とほぼ変わらなかったが、電気代(2月:前年比▲2.5%→3月:同▲1.0%)、ガス代(2月:前年比▲9.4%→3月:同▲7.1%)の下落率が縮小したことから、エネルギー価格の下落率は2月の前年比▲1.7%から同▲0.6%へと縮小した。

サービスは前年比2.1%(2月:同2.2%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント縮小した。外国パック旅行費が2月の前年比70.3%から同73.5%へと伸びを高めたが、宿泊料(2月:前年比33.3%→3月:同27.7%)、外食の上昇率鈍化がサービス価格の伸びを抑制した。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響で価格取集が困難となっていた外国パック旅行費が消費者物価指数に反映されるようになったのは24年1月からだが、価格取集自体は23年3月に再開されていた1。仮に、23年3月から外国パック旅行費の価格が消費者物価指数に反映されていたとすると、24年3月の外国パック旅行費は前年比0.1%(23年3月は同73.4%)となる。また、24年3月の外国パック旅行費によるコアCPI上昇率への寄与度は0.18%だが、23年3月から指数に反映されていた場合、24年3月の寄与度はほぼ0%となる(23年3月の寄与度は0.2%弱)。
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.05%(1月:▲0.14%)、食料(除く生鮮食品・外食)が1.01%(2月:1.13%)、その他財が0.65%(2月:0.72%)、サービスが0.86%(2月:0.97%)、全国旅行支援が0.13%(2月:0.13%)であった。
1 総務省統計局「物価指数研究会 第24回(令和6年2月6日)」(https://www.stat.go.jp/info/kenkyu/cpi/index.html)
2.物価上昇品目数が2ヵ月連続で減少

上昇品目数の割合は依然として高水準だが、鶏卵(前年比▲3.6%)、風味調味料(同▲0.4%)、冷凍米飯(同▲0.5%)などのように、前年の価格水準が非常に高かった食料品を中心に、その裏が出ることで下落に転じる品目が目立つようになっている。
3.コアCPIは24年度半ばまで2%台後半の伸びが続く見込み
コアCPI上昇率は、政府による各種支援策に左右される展開が続いているが、コアコアCPIは23年8月の前年比4.3%をピークに24年3月には同2.9%まで低下しており、基調としては財を中心に上昇ペースの鈍化傾向が続いている。
しかし、電気代は24年5月から再生可能エネルギー発電促進賦課金単価が1.40円から3.49円(1kWh当たり)に引き上げられ、電気代・都市ガス代は24年5月使用分(CPIの反映は24年6月)に激変緩和の幅が縮小された後、6月使用分以降は延長されないことが決定した。電気代は5月から7月までの3ヵ月で20%近く値上がりすることが見込まれる。エネルギー価格は23年2月から前年比でマイナスが続いているが、24年4月に前年比ほぼ横ばいとなった後、5月には明確なプラスに転じ、再びコアCPIの押し上げ要因となる。エネルギー価格の上昇率は24年夏頃には前年比で二桁の高い伸びとなり、コアCPI上昇率への寄与度は1%程度まで拡大することが予想される。
また、サービス価格は2%台前半の伸びが続いているが、24年の春闘賃上げ率が前年を大きく上回ることを受けて、上昇ペースは今後さらに加速する公算が大きい。
連合が4/18に公表した「2024春季生活闘争 第4回回答集計結果」によれば、24年の平均賃上げ率は5.20%、ベースアップに相当する「賃上げ分」は3.57%となった。サービス価格の上昇率と賃金上昇率(ベースアップ)の連動性が高いことを踏まえれば、サービス価格の上昇率は3%台まで高まる可能性がある。
コアCPIは、24年度前半は2%台後半の伸びが続き、3%台となる月もあるだろう。現時点では、コアCPI上昇率は財価格の上昇率鈍化を主因として24年度後半に2%台前半まで鈍化し、25年度には日銀の物価目標である2%を若干割り込むと予想している。
しかし、電気代は24年5月から再生可能エネルギー発電促進賦課金単価が1.40円から3.49円(1kWh当たり)に引き上げられ、電気代・都市ガス代は24年5月使用分(CPIの反映は24年6月)に激変緩和の幅が縮小された後、6月使用分以降は延長されないことが決定した。電気代は5月から7月までの3ヵ月で20%近く値上がりすることが見込まれる。エネルギー価格は23年2月から前年比でマイナスが続いているが、24年4月に前年比ほぼ横ばいとなった後、5月には明確なプラスに転じ、再びコアCPIの押し上げ要因となる。エネルギー価格の上昇率は24年夏頃には前年比で二桁の高い伸びとなり、コアCPI上昇率への寄与度は1%程度まで拡大することが予想される。
また、サービス価格は2%台前半の伸びが続いているが、24年の春闘賃上げ率が前年を大きく上回ることを受けて、上昇ペースは今後さらに加速する公算が大きい。
連合が4/18に公表した「2024春季生活闘争 第4回回答集計結果」によれば、24年の平均賃上げ率は5.20%、ベースアップに相当する「賃上げ分」は3.57%となった。サービス価格の上昇率と賃金上昇率(ベースアップ)の連動性が高いことを踏まえれば、サービス価格の上昇率は3%台まで高まる可能性がある。
コアCPIは、24年度前半は2%台後半の伸びが続き、3%台となる月もあるだろう。現時点では、コアCPI上昇率は財価格の上昇率鈍化を主因として24年度後半に2%台前半まで鈍化し、25年度には日銀の物価目標である2%を若干割り込むと予想している。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年04月19日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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