2024年04月19日

消費者物価(全国24年3月)-コアCPIは24年度半ばまで2%台後半の伸びが続く見通し

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPI上昇率は前月から0.2ポイント縮小の2.6%

消費者物価指数の推移 総務省が4月19日に公表した消費者物価指数によると、24年3月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比2.6%(2月:同2.8%)となり、上昇率は前月から0.2ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:2.6%、当社予想は2.7%)通りの結果であった。

エネルギーの下落幅は縮小したが、食料(生鮮食品を除く)、家具・家事用品の伸びが鈍化したことがコアCPI上昇率を押し下げた。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比2.9%(2月:同3.2%)、総合は前年比2.7%(2月:同2.8%)であった。
コアCPIの内訳をみると、ガソリン(2月:前年比4.5%→3月:同4.3%)、灯油(2月:前年比4.3%→3月:同4.7%)の上昇率は前月とほぼ変わらなかったが、電気代(2月:前年比▲2.5%→3月:同▲1.0%)、ガス代(2月:前年比▲9.4%→3月:同▲7.1%)の下落率が縮小したことから、エネルギー価格の下落率は2月の前年比▲1.7%から同▲0.6%へと縮小した。
消費者物価(生鮮食品を除く総合)の要因分解 食料(生鮮食品を除く)は前年比4.6%(2月:同5.3%)となり、23年8月の同9.2%をピークに鈍化傾向が続いている。前年の上昇ペースが速かったことの裏が出ている面もあるが、前月比で見ても上昇ペースは鈍化している。中華麺、バター、調理カレーなどは引き続き前年比で二桁の高い伸びとなっているが、伸び率が鈍化する品目が増えている。外食は23年3月の前年比6.9%をピークに鈍化傾向が続いており、3月は同2.6%(2月:同3.0%)となった。

サービスは前年比2.1%(2月:同2.2%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント縮小した。外国パック旅行費が2月の前年比70.3%から同73.5%へと伸びを高めたが、宿泊料(2月:前年比33.3%→3月:同27.7%)、外食の上昇率鈍化がサービス価格の伸びを抑制した。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響で価格取集が困難となっていた外国パック旅行費が消費者物価指数に反映されるようになったのは24年1月からだが、価格取集自体は23年3月に再開されていた1。仮に、23年3月から外国パック旅行費の価格が消費者物価指数に反映されていたとすると、24年3月の外国パック旅行費は前年比0.1%(23年3月は同73.4%)となる。また、24年3月の外国パック旅行費によるコアCPI上昇率への寄与度は0.18%だが、23年3月から指数に反映されていた場合、24年3月の寄与度はほぼ0%となる(23年3月の寄与度は0.2%弱)。
 
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.05%(1月:▲0.14%)、食料(除く生鮮食品・外食)が1.01%(2月:1.13%)、その他財が0.65%(2月:0.72%)、サービスが0.86%(2月:0.97%)、全国旅行支援が0.13%(2月:0.13%)であった。
 
 
1 総務省統計局「物価指数研究会 第24回(令和6年2月6日)」(https://www.stat.go.jp/info/kenkyu/cpi/index.html

2.物価上昇品目数が2ヵ月連続で減少

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、3月の上昇品目数は411品目(2月は423品目)、下落品目数は77品目(2月は66品目)となり、上昇品目数が2ヵ月連続で前月から減少した。上昇品目数の割合は78.7%(2月は81.0%)、下落品目数の割合は14.8%(2月は12.6%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は64.0%(2月は68.4%)であった。

上昇品目数の割合は依然として高水準だが、鶏卵(前年比▲3.6%)、風味調味料(同▲0.4%)、冷凍米飯(同▲0.5%)などのように、前年の価格水準が非常に高かった食料品を中心に、その裏が出ることで下落に転じる品目が目立つようになっている。

3.コアCPIは24年度半ばまで2%台後半の伸びが続く見込み

コアCPI上昇率は、政府による各種支援策に左右される展開が続いているが、コアコアCPIは23年8月の前年比4.3%をピークに24年3月には同2.9%まで低下しており、基調としては財を中心に上昇ペースの鈍化傾向が続いている。

しかし、電気代は24年5月から再生可能エネルギー発電促進賦課金単価が1.40円から3.49円(1kWh当たり)に引き上げられ、電気代・都市ガス代は24年5月使用分(CPIの反映は24年6月)に激変緩和の幅が縮小された後、6月使用分以降は延長されないことが決定した。電気代は5月から7月までの3ヵ月で20%近く値上がりすることが見込まれる。エネルギー価格は23年2月から前年比でマイナスが続いているが、24年4月に前年比ほぼ横ばいとなった後、5月には明確なプラスに転じ、再びコアCPIの押し上げ要因となる。エネルギー価格の上昇率は24年夏頃には前年比で二桁の高い伸びとなり、コアCPI上昇率への寄与度は1%程度まで拡大することが予想される。

また、サービス価格は2%台前半の伸びが続いているが、24年の春闘賃上げ率が前年を大きく上回ることを受けて、上昇ペースは今後さらに加速する公算が大きい。

連合が4/18に公表した「2024春季生活闘争 第4回回答集計結果」によれば、24年の平均賃上げ率は5.20%、ベースアップに相当する「賃上げ分」は3.57%となった。サービス価格の上昇率と賃金上昇率(ベースアップ)の連動性が高いことを踏まえれば、サービス価格の上昇率は3%台まで高まる可能性がある。

コアCPIは、24年度前半は2%台後半の伸びが続き、3%台となる月もあるだろう。現時点では、コアCPI上昇率は財価格の上昇率鈍化を主因として24年度後半に2%台前半まで鈍化し、25年度には日銀の物価目標である2%を若干割り込むと予想している。
コアCPIに対するエネルギーの寄与度/サービス価格と賃金(ベースアップ)
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2024年04月19日「経済・金融フラッシュ」)

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