2024年03月29日

鉱工業生産24年2月-不正問題の影響で自動車生産が一段と落ち込む

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.自動車は2ヵ月連続の大幅減産

鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 経済産業省が3月29日に公表した鉱工業指数によると、24年2月の鉱工業生産指数は前月比▲0.1%(1月:同▲6.7%)と2ヵ月連続で低下し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比1.3%、当社予想は同1.5%)を下回る結果となった。出荷指数は前月比▲0.4%と2ヵ月連続の低下、在庫指数は前月比0.6%と7ヵ月ぶりに上昇した。

2月の生産を業種別に見ると、化学(除く無機・有機化学工業・医薬品)、パルプ・紙・紙加工品、電子部品・デバイスなど8業種が上昇したが、不正問題発覚に伴う生産停止の影響で1月に前月比▲15.9%の大幅減産となった自動車が同▲7.9%とさらに大きく落ち込んだことが生産全体を大きく押し下げた。
財別の出荷動向 財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は23年10-12月期の前期比0.9%の後、24年1月が前月比▲4.9%、2月が同▲4.1%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は23年10-12月期の前期比1.6%の後、24年1月が前月比▲7.1%、2月が同0.1%となった。

24年1、2月の平均を23年10-12月期と比較すると、資本財(除く輸送機械)は▲3.8%、建設財は▲5.9%低い。

23年10-12月期のGDP統計の設備投資は前期比2.0%と3四半期ぶりに増加したが、24年1-3月期は伸びが大きく鈍化する可能性が高い。

消費財出荷指数は23年10-12月期の前期比1.0%の後、24年1月が前月比▲5.2%、2月が同▲0.7%となった。2月は耐久消費財が前月比▲5.7%、非耐久消費財が前月比▲1.0%であった。

23年10-12月期のGDP統計の民間消費は前期比▲0.3%と3四半期連続で減少した。個人消費は、高水準の貯蓄を背景に22年度中は高めの伸びが続いたが、物価高による実質所得の減少が続くなか、貯蓄率の大幅低下によって過剰貯蓄による押し上げ効果が剥落したこともあり、23年度入り後は弱い動きとなっている。24年1-3月期の民間消費は、物価高の悪影響が続く中、生産停止に伴う自動車販売の落ち込みもあり、4四半期連続の減少となる可能性が高い。

2.1-3月期は大幅減産へ

製造工業生産予測指数は、24年3月が前月比4.9%、4月が同3.3%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(2月)、予測修正率(3月)はそれぞれ▲3.3%、▲1.0%であった。

予測指数を業種別にみると、1月(前月比▲9.9%)、2月(同▲11.5%)と2ヵ月連続で大きく落ち込んだ輸送機械は、3月が前月比10.9%、4月が同5.0%の大幅増産計画となっている。1月の国内生産が0台だったダイハツは、2月以降、国土交通省が安全性を確認し、出荷停止を解除した車種から生産を再開しているが、2月の生産台数は前年同月の8%にとどまった。3月に入ってから生産を再開する車種は増えているが、当面フル稼働にはほど遠い状況が続くだろう。輸送機械の2月の実現率は▲9.7%の大幅マイナスとなったが、3月以降の生産実績も計画から大きく下振れる可能性がある。
最近の実現率、予測修正率の推移/輸送機械の生産、在庫動向
24年2月の生産指数を3月の予測指数で先延ばしすると、24年1-3月期の生産は前期比▲4.7%となる。1-3月期が大幅減産となることは確実で、四半期ベースの落ち込み幅は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて緊急事態宣言が発令された20年4-6月期(前期比▲15.1%)以来の大きさとなりそうだ。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2024年03月29日「経済・金融フラッシュ」)

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