2024年03月22日

消費者物価(全国24年2月)-サービス価格の上昇率はさらに高まる可能性

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPI上昇率は前月から0.8ポイント拡大の2.8%

消費者物価指数の推移 総務省が3月22日に公表した消費者物価指数によると、24年2月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比2.8%(1月:同2.0%)となり、上昇率は前月から0.8ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:2.8%、当社予想は2.9%)通りの結果であった。

食料(生鮮食品を除く)の伸びは鈍化したが、前年同月に開始された激変緩和措置による押し下げが一巡し、電気代、都市ガス代を中心にエネルギー価格の下落率が大きく縮小した。エネルギー価格の下落率縮小だけで、コアCPI上昇率は前月から0.98ポイント押し上げられた。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比3.2%(1月:同3.5%)、総合は前年比2.8%(1月:同2.2%)であった。
コアCPIの内訳をみると、ガソリン(1月:前年比4.7%→2月:同4.5%)、灯油(1月:前年比4.0%→2月:同4.3%)の上昇率は前月とほぼ変わらなかったが、電気代(1月:前年比▲21.0%→2月:同▲2.5%)、ガス代(1月:前年比▲15.3%→2月:同▲9.4%)の下落率が大きく縮小したことから、エネルギー価格の下落率は1月の前年比▲12.1%から同▲1.7%へと縮小した。

食料(生鮮食品を除く)は前年比5.3%(1月:同5.9%)となり、23年8月の同9.2%をピークに鈍化傾向が続いている。前年の上昇ペースが速かったことの裏が出ている面もあるが、前月比でみると横ばい圏の動きとなっており、価格転嫁の動きが止まりつつある。中華麺、冷凍食品(コロッケ、ぎょうざ)などは引き続き前年比で二桁の高い伸びとなっているが、伸び率が鈍化する品目が増えている。外食は23年3月の前年比6.9%をピークに鈍化傾向が続いており、2月は同3.0%(1月:同3.4%)となった。
消費者物価(生鮮食品を除く総合)の要因分解 サービスは前年比2.2%(1月:同2.2%)となり、上昇率は前月と変らなかった。1月に約3年ぶりに実勢価格が反映された外国パック旅行費の上昇率がさらに高まった(1月:前年比62.9%→2月:同70.3%)が、外食の上昇率鈍化がサービス価格の伸びを抑制した。それ以外の品目では、一般路線バス代(1月:前年比5.3%→2月:同5.9%)、高速バス代(1月:前年比3.4%→2月:同4.1%)、フィットネスクラブ使用料(1月:前年比3.3%→2月:同3.7%)などが伸びを高めた。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.14%(1月:▲1.12%)、食料(除く生鮮食品・外食)が1.13%(1月:1.23%)、その他財が0.72%(1月:0.80%)、サービスが0.97%(1月:0.97%)、全国旅行支援が0.13%(1月:0.12%)であった。

2.物価上昇品目数が2ヵ月ぶりに減少

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、2月の上昇品目数は423品目(1月は434品目)、下落品目数は66品目(1月は54品目)となり、上昇品目数が2ヵ月ぶりに前月から減少した。上昇品目数の割合は81.0%(1月は83.1%)、下落品目数の割合は12.6%(1月は10.3%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は68.4%(1月は72.8%)であった。

上昇品目数の割合は依然として高水準だが、食用油(前年比▲7.7%)、パスタソース(同▲1.5%)、調理ピザ(同▲0.4%)などのように、前年の価格水準が非常に高かった食料品を中心に、その裏が出ることで下落する品目が目立つようになっている。

3.コアCPIは24年夏頃まで2%台後半の伸びが続く見込み

コアCPI上昇率は、政府による各種支援策に左右される展開が続いているが、コアコアCPIは23年8月の前年比4.3%をピークに24年2月には同3.2%まで低下しており、基調としては財を中心に上昇ペースの鈍化傾向が続いている。

ただし、電気代については24年5月使用分(CPIへの反映は24年6月)から激変緩和の幅が縮小されることに加え、24年5月から再生可能エネルギー発電促進賦課金単価が1.40円から3.49円(1kWh当たり)に引き上げられることが決定した。このため、23年2月から前年比でマイナスが続いているエネルギー価格は24年3、4月に前年比ほぼ横ばいとなった後、5月には明確なプラスに転じ、再びコアCPIの押し上げ要因となることが見込まれる。

また、サービス価格は2%台前半の伸びが続いているが、24年の春闘賃上げ率が前年を大きく上回ることを受けて、上昇ペースは今後さらに加速する可能性が高い。

連合が3/15に公表した「2024春季生活闘争 第1回回答集計結果」によれば、24年の平均賃上げ率は5.28%、ベースアップに相当する「賃上げ分」は3.70%となった。サービス価格の上昇率と賃金上昇率(ベースアップ)の連動性が高いことを踏まえれば、サービス価格の上昇率は3%台まで高まる可能性がある。

コアCPIは、24年4月末までとなっている電気代、都市ガス代、ガソリン、灯油等に対する激変緩和措置がさらに延長される(電気代、都市ガス代は補助金を半減)ことを前提として、24年夏頃まで2%台後半の伸びが続くことが予想され、一時的に3%台となる可能性もあるだろう。
コアCPIに対するエネルギーの寄与度/サービス価格と賃金(ベースアップ)
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2024年03月22日「経済・金融フラッシュ」)

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