2024年03月04日

法人企業統計23年10-12月期-設備投資が急回復し、10-12月期の実質GDPはプラス成長に上方修正へ

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.4四半期連続の増収増益

経常利益の推移 財務省が3月4日に公表した法人企業統計によると、23年10-12月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比13.0%(7-9月期:同20.1%)と4四半期連続の増益となり、3四半期連続で前年比二桁の高い伸びとなった。製造業が前年比19.9%(7-9月期:同▲0.9%)と2四半期ぶりの増益、非製造業が前年比9.5%(7-9月期:同40.0%)と12四半期連続の増益となった。
製造業は、売上高の伸びが23年7-9月期の前年比3.5%から同3.2%に鈍化したが、売上高経常利益率が22年10-12月期の6.5%から7.5%に改善したことが収益の押し上げ要因となった。売上高経常利益率を要因分解すると、原油高の一服に伴い変動費の伸びが鈍化したことが利益率を大きく押し上げた。

非製造業は、売上高の伸びが23年7-9期の前年比5.6%から同4.6%に鈍化したが、売上高経常利益率が22年10-12月期の5.8%から6.1%に改善したことが収益の押し上げ要因となった。金融費要因、人件費要因はマイナスとなったが、製造業と同様に変動費要因が大幅なプラスとなった。
売上高経常利益率の要因分解(製造業)/売上高経常利益率の要因分解(非製造業)

2.経常利益(季節調整値)は高水準を維持

経常利益を業種別に見ると、製造業は、電気機械(前年比▲29.5%)、情報通信機械(同▲37.6%)が4四半期連続の減益となったが、輸送用機械(同80.7%)、はん用機械(同79.9%)、化学(同20.8%)、金属製品(同20.4%)が前年比で二桁の高い伸びとなり、全体を大きく押し上げた。

非製造業は、運輸・郵便業(前年比▲38.5%)、卸売・小売業(同▲6.2%)、不動産業(同▲7.0%)、物品賃貸業(同▲5.5%)が減益に転じたが、建設業(同14.9%)、情報通信業(同35.1%)、サービス業(同38.1%)が大幅増益となった。燃料費高騰の影響で21年10-12月期から22年10-12月期まで赤字が続いていた電気業は、23年1-3月期に6四半期ぶりの黒字となった後、4四半期連続で黒字を確保した。
経常利益(季節調整値)の推移 季節調整済の経常利益は前期比▲2.6%(7-9月期:同▲0.5%)と2四半期連続で減少した。製造業が前期比▲3.4%(7-9月期:同4.2%)と2四半期ぶりに減少、非製造業が前期比▲2.2%(7-9月期:同▲3.0%)と2四半期連続で減少した。

経常利益(季節調整値)は前期比では2四半期連続で小幅な減少となったが、23年4-6月期までの高い伸びの反動もあり、前年比では二桁の高い伸びを続けている。また、23年10-12月期の経常利益(季節調整値)の水準は26.2兆円と過去3番目に高さとなっている(過去最高(22年4-6月期の27.0兆円)。企業収益は高水準で堅調に推移していると判断される。

3.設備投資が急回復

設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比16.4%(7-9月期:同3.4%)と11四半期連続で増加し、前期から伸びが急速に高まった。製造業が前年比20.6%(7-9月期:同5.5%)、非製造業が前年比14.2%(7-9月期:同2.2%)といずれも前期から伸びが大きく加速した。
設備投資(ソフトウェアを含む)の推移 季節調整済の設備投資(ソフトウェアを含む)は前期比10.4%(7-9月期:同2.3%)と2四半期連続で増加し、2011年10-12月期(同13.6%)以来の高い伸びとなった。製造業が前期比11.7%(7-9月期:同0.7%)と4四半期連続、非製造業が前期比9.6%(7-9月期:同3.2%)と2四半期連続で増加した。

企業収益が好調を続ける中、設備投資の回復ペースは緩やかにとどまっていたが、23年10-12月期はこれまでの遅れを一気に取り戻す形となった。また、日銀短観などの設備投資計画の強さに対し、GDP統計の設備投資は、資材価格高騰や人手不足による工事進捗の遅れや投資計画の先送りなどを要因として、弱さが目立っていたが、法人企業統計の設備投資が強い結果となったことで、両者の乖離は一気に縮小する公算が大きい。

4.10-12月期・GDP2次速報は上方修正を予想

本日の法人企業統計の結果等を受けて、3/4公表予定の23年10-12月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.3%(前期比年率1.1%)となり、1次速報の前期比▲0.1%(前期比年率▲0.4%)から上方修正されると予想する。

設備投資は1次速報の前期比▲0.1%から同2.8%へ大幅に上方修正されると予想する。
2023年10-12月期GDP2次速報の予測 設備投資の需要側推計に用いられる法人企業統計の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比11.7%(7-9月期:同1.7%)と11四半期連続で増加し、前期から伸びが大きく高まった。法人企業統計ではサンプル替えや四半期毎の回答企業の差によって断層が生じるが、当研究所でこの影響を調整したところ、前年比10%程度となった。また、金融保険業の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比45.0%(7-9月期:同▲20.7%)の大幅増加となった。

1次速報段階では、設備投資の需要側推計値は前年比▲0.1%となっていた。本日の法人企業統計の結果は設備投資の上方修正要因と考えられる。

また、民間在庫変動は1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映され、1次速報の前期比・寄与度▲0.0%から同▲0.1%へと下方修正されるだろう。

その他の需要項目では、民間消費は12月のサービス産業動向調査の結果などが反映され、前期比▲0.2%から同▲0.3%へ、公的固定資本形成は12月の建設総合統計の結果が反映され、前期比▲0.7%から同▲0.8%へ下方修正されると予想する。
 
 

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(2024年03月04日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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