2024年02月29日

鉱工業生産24年1月-自動車の不正問題と能登半島地震の影響が重なり、20年5月以来の落ち込みに

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.1月の生産は20年5月以来の落ち込み

経済産業省が2月29日に公表した鉱工業指数によると、24年1月の鉱工業生産指数は前月比▲7.5%(12月:同1.4%)と2ヵ月ぶりに低下し、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲7.3%、当社予想は同▲7.6%)通りの結果となった。生産の低下幅は、世界的な新型コロナの感染拡大に伴う輸出の落ち込みやサプライチェーン障害の影響で急減産となった20年5月(前月比▲8.0%)以来の大きさとなった。出荷指数は前月比▲8.3%と2ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比▲1.8%と2ヵ月連続で低下した。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 1月の生産を業種別に見ると、自動車(前月比▲17.8%)、汎用・業務用機械(同▲12.6%)が前月比で二桁の大幅減産となったほか、電気・情報通信機械(同▲8.3%)、生産用機械(同▲8.0%)なども急速に落ち込むなど、ほとんどの業種が前月比でマイナスとなった。自動車メーカーの不正問題発覚に伴う生産停止と能登半島地震による一部工場の稼働停止が重なったことで、自動車だけでなく幅広い業種で生産が大きく落ち込んだ。
財別の出荷動向 財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は23年10-12月期の前期比1.3%の後、24年1月は前月比▲8.7%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は23年10-12月期の前期比2.7%の後、24年1月は前月比▲8.0%となった。

GDP統計の設備投資は、23年4-6月期が前期比▲1.4%、7-9月期が同▲0.6%、10-12月期が同▲0.1%と3四半期連続で減少した。日銀短観などの設備投資計画は強いが、資材価格高騰や人手不足に起因した工事進捗の遅れや計画などの先送りが設備投資の弱さにつながっているとみられる。

消費財出荷指数は23年10-12月期の前期比1.2%の後、24年1月は前月比▲5.5%となった。耐久消費財が前月比▲12.6%(10-12月期:同1.4%)、非耐久消費財が前月比▲0.5%(10-12月期:同1.5%)であった。

GDP統計の民間消費は、23年4-6月期が前期比▲0.7%、7-9月期が同▲0.3%、10-12月期が同▲0.2%と3四半期連続で減少した。個人消費は、高水準の貯蓄を背景に22年度中は高めの伸びが続いたが、物価高による実質所得の減少が続くなか、貯蓄率の大幅低下によって過剰貯蓄による押し上げ効果が剥落したこともあり、23年度入り後は弱い動きとなっている。

2.1-3月期は大幅減産へ

製造工業生産予測指数は、24年2月が前月比4.8%、3月が同2.0%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(1月)、予測修正率(2月)はそれぞれ▲4.9%、▲2.5%であった。

予測指数を業種別にみると、1月に前月比▲12.6%と急速に落ち込んだ輸送機械は2月が同6.6%、3月が同3.7%の増産計画となっている。1月の国内生産が0台だったダイハツは、国土交通省が安全性を確認し、出荷停止を解除した車種から生産を再開しているが、フル稼働にはほど遠い状況となっている。2月は生産用機械(前月比▲5.8%)以外の業種が増産計画となっているが、3月は減産計画の業種も多く、1月の大幅な持ち込みを考慮すれば、全体として戻りは弱い。
最近の実現率、予測修正率の推移/輸送機械の生産、在庫動向
24年1月の生産指数を2、3月の予測指数で先延ばしすると、24年1-3月期の生産は前期比▲3.2%となる。能登半島地震や自動車の不正問題の影響が和らぐことから、2月、3月と持ち直すことが見込まれるものの、1-3月期の大幅減産は不可避とみられる。生産指数が23年12月の水準を取り戻すのは4月以降となるだろう。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2024年02月29日「経済・金融フラッシュ」)

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