2024年02月27日

消費者物価(全国24年1月)-コアCPI上昇率は2%まで低下したが、2月には2%台後半まで高まる見込み

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPI上昇率は前月から0.3ポイント縮小の2.0%

総務省が2月27日に公表した消費者物価指数によると、24年1月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比2.0%(12月:同2.3%)となり、上昇率は前月から0.3ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:1.8%、当社予想は2.0%)を上回る結果であった。
消費者物価指数の推移 全国旅行支援の反動による押し上げ幅が縮小したことにより、宿泊料が12月の前年比59.0%から同26.9%へと上昇率が大きく縮小したこと、食料(生鮮食品を除く)の伸びが鈍化したこと、エネルギーの下落率が拡大したことがコアCPI上昇率を押し下げた。

一方、新型コロナウイルス感染症の影響で価格取集が困難となったことから、21年1月から3年間にわたって前年同月比0.0%が続いていた外国パック旅行費の価格が反映され、前年比62.9%の高い伸びとなったことが、コアCPI上昇率を0.16ポイント押し上げた。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比3.5%(12月:同3.7%)、総合は前年比2.2%(12月:同2.6%)であった。

コアCPIの内訳をみると、ガソリン(12月:前年比4.5%→1月:同4.7%)、灯油(12月:前年比3.2%→1月:同4.0%)の上昇率は高まったが、電気代(12月:前年比▲20.5%→1月:同▲21.0%)、ガス代(12月:前年比▲13.8%→1月:同▲15.3%)の下落率が拡大したことから、エネルギー価格の下落率は12月の前年比▲11.6%から同▲12.1%へと拡大した。

食料(生鮮食品を除く)は前年比5.9%(12月:同6.2%)となり、23年8月の同9.2%をピークに鈍化傾向が続いている。前年の上昇ペースが速かったことの裏が出ている面もあるが、23年12月、24年1月と2ヵ月続けて前月比▲0.1%の下落となっており、価格転嫁の動きが止まりつつある。乳卵類、中華麺、冷凍食品(コロッケ、ハンバーグ、ぎょうざ)などは引き続き前年比で二桁の高い伸びとなっているが、伸び率が鈍化する品目が増えている。外食は23年3月の前年比6.9%をピークに鈍化傾向が続いており、1月は同3.4%(12月:同3.6%)となった。
消費者物価(生鮮食品を除く総合)の要因分解 サービスは前年比2.2%(12月:同2.3%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント縮小した。約3年ぶりに実勢価格が反映された外国パック旅行費が大幅に上昇する一方、宿泊料、外食の上昇率鈍化がサービス価格の伸びを抑制した。それ以外の品目では、一般路線バス代(12月:前年比4.8%→1月:同5.3%)、カラオケルーム使用料(12月:前年比4.4%→1月:同5.7%)などが伸びを高めた。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲1.12%(12月:▲1.06%)、食料(除く生鮮食品・外食)が1.23%(12月:1.34%)、その他財が0.80%(12月:0.93%)、サービスが0.97%(12月:0.81%)、全国旅行支援が0.12%(12月:0.28%)であった。

2.物価上昇品目数が4ヵ月ぶりに増加

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、1月の上昇品目数は434品目(12月は421品目)、下落品目数は54品目(12月は61品目)となり、上昇品目数が4ヵ月ぶりに前月から増加した。上昇品目数の割合は83.1%(12月は80.7%)、下落品目数の割合は10.3%(12月は11.7%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は72.8%(12月は69.0%)であった。

3.コアCPI上昇率は24年度入り後も2%台が続く見込み

コアCPIは23年1月の前年比4.2%をピークに24年1月には2.0%まで伸びが鈍化したが、2月には前年同月に開始された激変緩和措置による押し下げが一巡し、電気代、都市ガス代の下落率が大きく縮小することから、一気に2%台後半まで伸びを高める可能性が高い。

先行きについては、財価格の上昇率がさらに鈍化する一方、サービス価格は人件費の増加を価格転嫁する動きが続くことから、2%台の伸びが続く公算が大きい。

コアCPI上昇率は、24年4月末までとなっている電気代、都市ガス代、ガソリン、灯油等に対する激変緩和措置がさらに延長される(電気代、都市ガス代は補助金を半減)ことを前提として、24年度前半まで2%台を続けた後、24年度後半には食料など財価格の上昇率鈍化を主因として、1%台後半まで低下することが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2024年02月27日「経済・金融フラッシュ」)

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