2024年01月31日

鉱工業生産23年12月-10-12月期は2四半期ぶりの増産だが、一進一退を抜け出せず

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

文字サイズ

1.10-12月期は2四半期ぶりの増産

経済産業省が1月31日に公表した鉱工業指数によると、23年12月の鉱工業生産指数は前月比1.8%(12月:同▲0.9%)と2ヵ月ぶりに上昇したが、事前の市場予想(QUICK集計:前月比2.4%、当社予想は同2.5%)を下回る結果となった。出荷指数は前月比2.5%と2ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比▲1.2%と3ヵ月ぶりに低下した。

12月の生産を業種別に見ると、汎用・業務用機械が前月比9.3%の高い伸びとなったほか、生産用機械(同4.3%)、電子部品・デバイス(同2.0%)、自動車(同1.2%)などほとんどの業種が前月比でプラスとなった。

23年10-12月期の生産は前期比1.4%(7-9月期:同▲1.2%)と2四半期ぶりの増産となった。業種別には、供給制約の緩和を受けて回復が続く自動車が前期比3.3%と6四半期連続の増産となり、7-9月期の同0.7%から伸びを高めた。また、在庫調整の進展を受けて電子部品・デバイスが前期比6.7%(7-9月期:同▲1.9%)の高い伸びとなったほか、化学(除く医薬品)が前期比2.3%と10四半期ぶりの上昇となった。

10-12月期は2四半期ぶりの増産となったが、23年1-3月期が前期比▲1.8%、4-6月期が同1.4%、7-9月期が同▲1.2%となっており、均してみれば横ばい圏の動きにとどまっている。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移/鉱工業生産の業種別寄与度
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は23年7-9月期の前期比▲4.2%の後、10-12月期は同1.3%と2四半期ぶりに上昇した。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は23年7-9月期の前期比▲3.5%の後、10-12月期は同2.7%と6四半期ぶりに上昇した。

GDP統計の設備投資は、23年4-6月期が前期比▲1.3%、7-9月期が同▲0.4%と2四半期連続で減少した。設備投資は、23年度入り後は生産活動の停滞を反映し、弱い動きとなっているが、高水準の企業収益を背景に基調としては底堅さを維持していると判断される。10-12月期の設備投資は3四半期ぶりに増加することが予想される。
財別の出荷動向 消費財出荷指数は23年7-9月期の前期比▲1.9%の後、10-12月期は同1.4%と2四半期ぶりに上昇した。耐久消費財が前期比1.4%(7-9月期:同▲3.7%)、非耐久消費財が前期比1.9%(7-9月期:同0.0%)であった。

GDP統計の民間消費は、23年4-6月期が前期比▲0.6%、7-9月期は同▲0.2%と2四半期連続で減少した。個人消費は、高水準の貯蓄を背景に22年度中は高めの伸びが続いたが、物価高による実質所得の減少が続くなか、貯蓄率の大幅低下によって過剰貯蓄による押し上げ効果が剥落したこともあり、23年度入り後は弱めの動きとなっている。10-12月期の消費財出荷指数は堅調だったが、GDP統計の民間消費は低い伸びにとどまる可能性が高い。

2.1-3月期は再び減産となる公算大

輸送機械の生産、在庫動向 製造工業生産予測指数は、24年1月が前月比▲6.2%、2月が同2.2%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(23年12月)、予測修正率(24年1月)はそれぞれ▲2.5%、▲1.5%であった。

予測指数を業種別にみると、1月は輸送機械(前月比▲10.6%)、電気・情報通信機械(同▲8.4%)、汎用・業務用機械(同▲6.0%)などを中心に大幅減産計画となっている。1月は稼働日数が少ないことから季節調整値が大きく振れる傾向があるが、自動車については不正問題発覚に伴う生産停止の影響が十分に反映されておらず、さらに下振れる可能性がある。2月は増産計画となっているが、1月の大幅な落ち込みに対して戻りが弱い。
電子部品・デバイスの出荷・在庫バランス 一方、グローバルなITサイクルの調整を受けて、低迷が続いてきた電子部品・デバイスの出荷・在庫バランス(出荷・前年比-在庫・前年比)は9月に11.6%とプラスに転じた後、12月には23.7%までプラス幅が拡大した。12月は出荷が前年比▲1.4%(11月:同0.0%)と小幅なマイナスとなったが、在庫が前年比▲25.1%(11月:同▲21.0%)とマイナス幅が拡大した。在庫調整の進捗を受けて、電子部品・デバイスの生産は先行きも堅調に推移することが見込まれる。
 
23年12月の生産指数を24年1、2月予測指数で先延ばしすると、24年1、2月の平均は23年10-12月期を▲4.3%下回る。実際の生産の伸びが計画を下回る傾向があること、不正問題発覚に伴う生産停止により自動車が下振れる公算が大きい考慮すれば、24年1-3月期は減産に転じる可能性が高い。海外経済の減速に伴う輸出の低迷が続くことに加え、物価高の影響などから個人消費が弱めの動きとなっていることから、鉱工業生産は当面一進一退の状態から抜け出すことができないだろう。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2024年01月31日「経済・金融フラッシュ」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【鉱工業生産23年12月-10-12月期は2四半期ぶりの増産だが、一進一退を抜け出せず】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

鉱工業生産23年12月-10-12月期は2四半期ぶりの増産だが、一進一退を抜け出せずのレポート Topへ