- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 日本経済 >
- 法人企業統計23年7-9月期-企業収益絶好調でも盛り上がりに欠ける設備投資
2023年12月01日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1.3四半期連続の増収増益
製造業は、売上高の伸びが23年4-6月期の前年比7.6%から同3.5%へ大きく鈍化したことが減益につながった。また、売上高経常利益率が22年7-9月期の8.9%から8.6%に悪化したことも収益の押し下げ要因となった。売上高経常利益率を要因分解すると、人件費要因は小幅なプラスとなったが、変動費要因、金融費用要因がマイナスとなった。
非製造業は、売上高の伸びが4-6月期の前年比5.0%から同5.6%へと高まったことに加え、売上高経常利益率が22年7-9月期の4.2%から5.6%に改善したことが収益の押し上げ要因となった。変動費は前年比3.8%(4-6月期:同4.1%)と高めの伸びが続いたが、売上高の伸びがそれを上回ったため、変動費要因が大幅なプラスとなった。
非製造業は、売上高の伸びが4-6月期の前年比5.0%から同5.6%へと高まったことに加え、売上高経常利益率が22年7-9月期の4.2%から5.6%に改善したことが収益の押し上げ要因となった。変動費は前年比3.8%(4-6月期:同4.1%)と高めの伸びが続いたが、売上高の伸びがそれを上回ったため、変動費要因が大幅なプラスとなった。
2.経常利益(季節調整値)は3四半期連続で過去最高水準を更新
経常利益を業種別に見ると、製造業は、石油・石炭(前年比211.5%)、はん用機械(同47.8%)、鉄鋼(同28.5%)、金属製品(同22.0%)、輸送用機械(前年比18.2%)が大幅増益となる一方、情報通信機械(同▲60.7%)、業務用機械(同▲41.3%)、電気機械(同▲23.0%)が前年比で二桁の減益となるなど、業種毎のばらつきが目立つ形となった。
非製造業は、サービス業(前年比▲0.5%)が小幅な減益に転じたが、建設業(同87.7%)、不動産業(同32.4%)、運輸・郵便業(同31.4%)、情報通信業(同24.3%)が高い伸びとなった。燃料費高騰の影響で赤字が続いていた電気業は23年1-3月期に6四半期ぶりの黒字となった後、4-6月期、7-9月期と3四半期連続で黒字を確保した。
非製造業は、サービス業(前年比▲0.5%)が小幅な減益に転じたが、建設業(同87.7%)、不動産業(同32.4%)、運輸・郵便業(同31.4%)、情報通信業(同24.3%)が高い伸びとなった。燃料費高騰の影響で赤字が続いていた電気業は23年1-3月期に6四半期ぶりの黒字となった後、4-6月期、7-9月期と3四半期連続で黒字を確保した。

23年4-6月期の経常利益(季節調整値)は27.2兆円となり、3四半期連続で過去最高水準を更新した。製造業、非製造業ともに過去最高に近い水準となっている。
7-9月期の経常利益(季節調整値)は、非製造業が前期比で小幅なマイナスとなったが、前期までの高い伸びの反動もあり、均してみれば好調を維持している。また、製造業は、生産活動の停滞が続く中でも円安の恩恵を受けて底堅い動きが続いている。
3.設備投資は伸び悩みが続く
4.7-9月期・GDP2次速報は1次速報とほぼ変わらず
本日の法人企業統計の結果等を受けて、12/8公表予定の23年7-9月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比▲0.6%(前期比年率▲2.2%)と予想する。1次速報の前期比▲0.5%(前期比年率▲2.1%)とほぼ変わらないだろう。
設備投資は1次速報の前期比▲0.6%から同▲0.8%へ下方修正されると予想する。
設備投資は1次速報の前期比▲0.6%から同▲0.8%へ下方修正されると予想する。

1次速報段階では、設備投資の需要側推計値は前年比▲0.4%となっていた。本日の法人企業統計の結果は設備投資の下方修正要因と考えられる。
なお、法人企業統計は23年7-9月期から開業準備法人の取り扱いを変更し、開業準備法人であっても費用等の発生が認められる法人は調査対象から除かないこととなった。このため、23年4-6月期と7-9月期の間には断層が生じている。内閣府では断層調整を行って設備投資の推計を行うが、財務省が参考として公表した開業準備中法人を除いた前期比(売上高、経常利益、設備投資)は公表値と同じ伸びとなっており、断層調整の影響は限定的と推察される。
また、民間在庫変動は1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映されるが、1次速報の前期比・寄与度▲0.3%から変わらないだろう。
その他の需要項目では、公的固定資本形成は9月の建設総合統計の結果が反映され、前期比▲0.5%から同▲0.4%へ上方修正されると予想する。
なお、12/8の23年7-9月期GDP2次速報では、22年度の年次推計値が併せて公表され、四半期の計数は23年1-3月期までが速報値から年次推計値に改定される。23年7-9月期の成長率は、法人企業統計を中心とした基礎統計の追加に加え、22年度の年次推計に伴う遡及改定の影響を受けるため、不確定要素が多いことを念頭に置いておく必要がある。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年12月01日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
斎藤 太郎のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/30 | 2025年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測~ | 斎藤 太郎 | Weekly エコノミスト・レター |
2025/04/30 | 鉱工業生産25年3月-1-3月期は4四半期ぶりの減産、トランプ関税の影響で4月以降も低迷が続く見込み | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
2025/04/18 | 消費者物価(全国25年3月)-コアCPI上昇率は25年度入り後も3%台が続く公算 | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
2025/04/17 | 貿易統計25年3月-1-3月期の外需寄与度は前期比▲0.6%程度のマイナス、4月以降の輸出の落ち込みは不可避 | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
新着記事
-
2025年05月01日
ユーロ圏GDP(2025年1-3月期)-前期比0.4%に加速 -
2025年04月30日
2025年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測~ -
2025年04月30日
「スター・ウォーズ」ファン同士をつなぐ“SWAG”とは-今日もまたエンタメの話でも。(第5話) -
2025年04月30日
米中摩擦に対し、持久戦に備える中国-トランプ関税の打撃に耐えるため、多方面にわたり対策を強化 -
2025年04月30日
米国個人年金販売額は2024年も過去最高を更新-トランプ関税政策で今後の動向は不透明に-
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【法人企業統計23年7-9月期-企業収益絶好調でも盛り上がりに欠ける設備投資】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
法人企業統計23年7-9月期-企業収益絶好調でも盛り上がりに欠ける設備投資のレポート Topへ