2023年11月24日

消費者物価(全国23年10月)-コアCPI上昇率は24年度入り後も2%台が続く見込み

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPI上昇率は2.9%

消費者物価指数の推移 総務省が11月24日に公表した消費者物価指数によると、23年10月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比2.9%(9月:同2.8%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:3.0%、当社予想は2.9%)を下回る結果であった。食料(生鮮食品を除く)の伸びは鈍化したが、電気・都市ガス代の補助金縮小によりエネルギー価格の下落率が縮小したこと、全国旅行支援の影響剥落に伴い宿泊料の上昇率が急拡大したことがコアCPIを押し上げた。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比4.0%(9月:同4.2%)、総合は前年比3.3%(9月:同3.0%)であった。
コアCPIの内訳をみると、ガソリン(9月:前年比8.7%→10月:同5.0%)、灯油(9月:前年比7.5%→10月:同4.8%)は上昇率が鈍化したが、電気代(9月:前年比▲24.6%→10月:同▲16.8%)、ガス代(9月:前年比▲12.5%→10月:同▲10.2%)の下落率が縮小したことから、エネルギー価格の下落率は9月の前年比▲11.7%から同▲8.7%へと縮小した。激変緩和措置のうち、ガソリン、灯油は補助率の拡大によって上昇率が鈍化する一方、電気・都市ガス代は補助金の半減によって下落率が縮小した。

食料(生鮮食品を除く)は前年比7.6%(9月:同8.8%)となり、上昇率は前月から1.2ポイント縮小した。前月比では0.4%の上昇と価格転嫁の動きは続いているが、前年の上昇ペースが速かったため、前年と比べた上昇率は大きく鈍化した。麺類(前年比10.8%)、乳卵類(同19.2%)、菓子類(同10.5%)などは引き続き前年比で二桁の高い伸びとなっているが、前年の上昇ペースが速かったことの裏が出ることで、伸び率が鈍化する品目が増え始めている。また、外食は23年3月の前年比6.9%をピークに7ヵ月連続で伸びが鈍化し、10月には同3.8%となった。
消費者物価(生鮮食品を除く総合)の要因分解 サービスは前年比2.1%(9月:同2.0%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。宿泊料が旅行需要の拡大に伴う価格上昇に加え、22年10月に開始された全国旅行支援による押し下げの裏が出たことから、9月の前年比17.9%から同42.6%へと急拡大したことがサービス価格を押し上げた。それ以外の品目では、外食の伸びは鈍化(9月:前年比5.0%→10月:同3.8%)し、放送受信料(NHK)(9月:前年比0.0%→10月:同▲10.0%)は低下したが、タクシー代(9月:前年比7.9%→10月:同8.4%)、テーマパーク入場料(9月:前年比0.4%→10月:同10.8%)、インターネット接続料(9月:前年比0.0%→10月:同4.1%)などが伸びを高めた。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.77%(9月:▲1.04%)、食料(除く生鮮食品・外食)が1.63%(9月:1.86%)、その他財が1.00%(9月:0.99%)、サービスが0.88%(9月:1.00%)、全国旅行支援が0.17%(9月:0.00%)であった。

2.物価上昇品目数が減少

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、10月の上昇品目数は438品目(9月は450品目)、下落品目数は48品目(9月は35品目)となり、上昇品目数が前月から減少した。上昇品目数の割合は83.9%(9月は86.2%)、下落品目数の割合は9.2%(9月は6.7%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は74.7%(9月は79.5%)であった。上昇品目数の割合は依然として高水準だが、前年の価格水準が高かったことが上昇品目数の減少につながった。

3.コアCPI上昇率は24年度入り後も2%台が続く見込み

11/2に閣議決定された政府の経済対策では、電気代、都市ガス代、ガソリン、灯油等に対する激変緩和措置が、24年4月まで延長されることとなった。足もとのガソリン店頭価格は、補助金がなければ1リットル当たり190円台後半となっており、円高、原油安が大きく進まない限り、24年春頃でも政府が目標としている175円を大きく上回る。また、補助額が一定となっている電気代、都市ガス代は、燃料価格の上昇を反映し今後は上昇することが見込まれる。24年4月末までとなっている激変緩和措置は補助を縮小した上で5月以降も継続される公算が大きい。
コアCPIに対するエネルギーの寄与度 電気・都市ガス代は24年1月まで下落率が拡大するが、2月には前年同月に開始された激変緩和措置による押し下げが一巡することから、下落率が大きく縮小することが見込まれる。また、ガソリン、灯油価格は激変緩和措置によって横ばいで推移するが、前年の水準が押し下げられているため、前年比ではプラスの伸びが続くだろう。エネルギー価格の上昇率は24年度入り後にはプラスに転じる可能性が高い。

また、サービス価格は前年比2.1%と、23年のベースアップと同程度の伸びとなったが、長期にわたって価格が据え置かれてきたこともあり、上昇率がさらに高まる公算が大きい。コアCPIは11月以降伸びが鈍化し、24年1月には2%程度となるが、2月には前年同月に導入された電気・都市ガス代の激変緩和措置で価格が大きく低下した反動が出ることから、伸び率が急速に高まるだろう。コアCPI上昇率は24年度入り後も2%台で推移することが予想される。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2023年11月24日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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