2023年10月31日

鉱工業生産23年9月-7-9月期は2四半期ぶりの減産

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.7-9月期は前期比▲1.3%と2四半期ぶりの減産

経済産業省が10月31日に公表した鉱工業指数によると、23年9月の鉱工業生産指数は前月比0.2%(8月:同▲0.7%)と3ヵ月ぶりに上昇したが、事前の市場予想(QUICK集計:前月比2.5%、当社予想は同2.3%)を下回る結果となった。出荷指数は前月比0.4%と3ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比▲1.1%と2ヵ月連続の低下となった。

9月の生産を業種別に見ると、8月に工場の一時稼働停止の影響で前月比▲3.9%と落ち込んだ自動車が、その反動もあり同6.0%の高い伸びとなり、汎用・業務用機械も同2.6%の上昇となったが、生産用機械が同▲3.4%と3ヵ月連続で低下したほか、電気・情報通信機械が同▲2.9%と2ヵ月ぶりに低下した。

23年7-9月期の生産は前期比▲1.3%(4-6月期:同1.4%)と2四半期ぶりの減産となった。業種別には、供給制約の緩和を受けて回復が続く自動車は前期比0.7%と5四半期連続の増産となったが、4-6月期の同5.9%から伸びが大きく鈍化した。また、4-6月期に5四半期ぶりに上昇した電子部品・デバイスは前期比▲2.0%(4-6月期:同2.8%)と再び落ち込んだほか、化学(除く医薬品)は前期比▲1.1%と9四半期連続の減産となった。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移/鉱工業生産の業種別寄与度
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は23年4-6月期の前期比3.8%の後、7-9月期は同▲4.2%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は23年4-6月期の前期比▲1.0%の後、7-9月期は同▲3.5%となった。

23年4-6月期のGDP統計の設備投資は、前期比▲1.0%の減少となった。設備投資は、高水準の企業収益を背景に基調としては底堅さを維持していると判断されるが、23年度入り後は生産活動の停滞を反映し、やや弱めの動きとなっている。
財別の出荷動向 消費財出荷指数は23年4-6月期の前期比3.4%の後、7-9月期は同▲2.3%となった。耐久消費財が前期比▲3.7%(4-6月期:同8.1%)、非耐久消費財が前期比▲0.5%(4-6月期:同▲2.3%)であった。

GDP統計の民間消費は、23年1-3月期の前期比0.6%の後、4-6月期は同▲0.6%と3四半期ぶりに減少した。新型コロナウイルス感染症の5類への移行を受けて、サービス消費が回復する一方、物価高の影響で食料、被服などの財消費は弱めの動きとなっている。

2.電子部品・デバイスの在庫調整が進展

製造工業生産予測指数は、23年10月が前月比3.9%、11月が同▲2.8%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(9月)、予測修正率(10月)はそれぞれ▲1.0%、▲0.9%であった。

予測指数を業種別にみると、グローバルなITサイクルの調整を反映し、低迷が続いている電子部品・デバイスは10月に前月比10.7%の大幅増産計画の後、11月は同▲5.9%となっている。
電子部品・デバイスの出荷・在庫バランス 電子部品・デバイスの出荷・在庫バランス(出荷・前年比-在庫・前年比)は21年10-12月期以降、マイナスが続いていたが、23年7-9月期は10.3%と8四半期ぶりにプラスに転じた。7-9月期は出荷が前年比▲9.9%と引き続き大幅な減少となったものの、在庫が同▲20.1%となり、出荷の減少幅を大きく上回った。

出荷・在庫バランスの改善が需要の回復によるものではないことには留意が必要だが、これまで生産の押し下げ要因となってきた電子部品・デバイスの在庫調整が進展していることは、明るい材料と言えるだろう。
 
23年9月の生産指数を10、11月の予測指数で先延ばしすると、10、11月の平均は7-9月期を2.3%上回るが、実際の生産が計画から下振れる傾向があることを考慮すれば、ほぼ横ばいにとどまることが見込まれる。海外経済の減速に伴う輸出の伸び悩みが続くことに加え、物価高の影響などから国内の財消費が弱めの動きとなっていることから、鉱工業生産の回復基調が明確となるまでにはしばらく時間がかかることが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2023年10月31日「経済・金融フラッシュ」)

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