2023年09月01日

法人企業統計23年4-6月期-経常利益(季節調整値)は過去最高水準を更新

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.2四半期連続の増益

経常利益の推移 財務省が9月1日に公表した法人企業統計によると、23年4-6月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比11.6%(1-3月期:同4.3%)と2四半期連続の増益となり、増益率は前期から高まった。製造業が前年比0.4%(1-3月期:同▲15.7%)と小幅ながら3四半期ぶりの増益となったことに加え、非製造業が前年比19.0%(1-3月期:同17.2%)と10四半期連続の増益となり、前期から伸びを高めたことが全体の収益を押し上げた。
製造業は、売上高の伸びが23年1-3月期の前年比2.3%から同7.6%へと高まったが、売上高経常利益率が22年4-6月期の11.2%から10.5%に悪化したことが収益の押し下げ要因となった。売上高経常利益率を要因分解すると、人件費要因はプラスとなったが、変動費が前年比10.2%の高い伸びとなり、利益率を大きく押し下げた。

非製造業は、売上高が1-3月期の前年比6.1%から同5.0%へと伸びが若干鈍化したが、売上高経常利益率が22年4-6月期の7.2%から8.2%に改善したことが収益の押し上げ要因となった。変動費、人件費、減価償却費がいずれも利益率の改善要因となった。
売上高経常利益率の要因分解(製造業)/売上高経常利益率の要因分解(非製造業)

2.経常利益(季節調整値)は過去最高水準を更新

経常利益を業種別に見ると、製造業は、輸送用機械(前年比56.5%)、はん用機械(同48.7%)、生産用機械(同29.9%)は大幅増益が続く一方、情報通信機械(同▲57.1%)、化学(同▲12.8%)、鉄鋼(同▲13.6%)、電気機械(同▲11.1%)が前年比で二桁の減益となるなど、業種毎のばらつきが目立つ形となった。

非製造業は、卸売・小売業(前年比▲1.9%)、物品賃貸業(同▲35.5%)が減益に転じたが、建設業(同38.2%)、不動産業(同36.0%)、サービス業(同20.2%)が高い伸びとなった。燃料費高騰の影響で赤字が続いていた電気業は23年1-3月期に6四半期ぶりの黒字(5,048億円)となった後、4-6月期は黒字幅が13,188億円まで拡大した。
経常利益(季節調整値)の推移 季節調整済の経常利益は前期比9.5%(1-3月期:同7.4%)と2四半期連続で増加した。製造業が前期比12.5%(1-3月期:同6.2%)、非製造業が前期比8.0%(1-3月期:同8.0%)となった。

23年4-6月期の経常利益(季節調整値)は26.9兆円となり、2四半期連続で過去最高水準を更新した。製造業は過去最高となった22年7-9月期を▲8.5%下回っているが、非製造業が23年1-3月期に続き過去最高を更新した。

4-6月期の企業収益は製造業、非製造業ともに改善したが、均してみれば、輸出、生産活動の低迷を主因として製造業が伸び悩む一方、経済正常化に伴う個人消費を中心とした国内需要の底堅さを背景に非製造業が大きく改善している。

先行きについては、海外経済の減速を背景に輸出の低迷が続く一方、サービスを中心に個人消費の増加が続くことが見込まれるため、企業収益の回復は当面、非製造業を中心としたものとなりそうだ。

3.設備投資は伸び悩み

設備投資(ソフトウェアを含む)の推移 設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比4.5%(1-3月期:同11.0%)と9四半期連続で増加したが、前期から伸びが鈍化した。製造業が前年比4.9%(1-3月期:同11.3%)と9四半期連続、非製造業が前年比4.4%(1-3月期:同10.8%)と4四半期連続で増加したが、いずれ前期から伸びが鈍化した。

季節調整済の設備投資(ソフトウェアを含む)は前期比▲1.6%(1-3月期:同2.8%)と5四半期ぶりに減少した。製造業は前期比0.8%(1-3月期:同4.4%)と3四半期連続で増加したが、非製造業が前期比▲3.0%(1-3月期:同2.0%)と5四半期ぶりに減少した。

4-6月期の設備投資はやや弱めの動きとなったが、均してみれば、高水準の企業収益を背景に回復が続いていると判断される。

4.4-6月期・GDP2次速報は下方修正を予想

本日の法人企業統計の結果等を受けて、9/8公表予定の23年4-6月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比1.3%(前期比年率5.1%)となり、1次速報の前期比1.5%(前期比年率6.0%)から下方修正されるだろう。

設備投資は1次速報の前期比0.0%から同▲0.9%へ下方修正されると予想する。

設備投資の需要側推計に用いられる法人企業統計の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比4.4%(1-3月期:同10.0%)と9四半期連続で増加したが、前期から伸びが鈍化した。法人企業統計ではサンプル替えや四半期毎の回答企業の差によって断層が生じるが、当研究所でこの影響を調整したところ、前年比1%程度と公表値を大きく下回る伸びとなった。また、金融保険業の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比9.5%(1-3月期:同3.7%)と2四半期連続で増加した。
2023年4-6月期GDP2次速報の予測 1次速報段階では、設備投資の需要側推計値は前年比6.3%となっていた。本日の法人企業統計の結果は設備投資の下方修正要因と考えられる。

また、民間在庫変動は1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映されるが、1次速報の前期比・寄与度▲0.2%から変わらないだろう。

その他の需要項目では、公的固定資本形成は6月の建設総合統計の結果が反映され、前期比1.2%から同0.1%へ下方修正されると予想する。
 
 

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(2023年09月01日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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