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- 消費者物価(全国23年7月)-補助率縮小に、円安、原油高が重なり、ガソリン、灯油価格は8月以降に大幅上昇へ
2023年08月18日
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1.電気・都市ガス代の下落率拡大がコアCPIを押し下げ

全国旅行支援の一部終了に伴い宿泊料(6月:前年比5.5%→7月;同15.1%)の上昇ペースが加速し、携帯電話通信料(6月:前年比2.9%→7月:同10.2%)の上昇率が高まったが、電気代、都市ガス代の下落率が拡大したことがコアCPIを押し下げた。
生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比4.3%(6月:同4.2%)、総合は前年比3.3%(6月:同3.3%)であった。
コアCPIの内訳をみると、ガソリン(6月:前年比▲1.6%→7月:同1.1%)が6ヵ月ぶりに上昇し、灯油(6月:前年比▲2.2%→7月:同▲1.4%)の下落率が縮小したが、電気代(6月:前年比▲12.4%→7月:同▲16.6%)、ガス代(6月:前年比▲1.1%→7月:同▲5.3%)の下落率が拡大したことから、エネルギー価格の下落率は6月の前年比▲6.6%から同▲8.7%へと拡大した。ガソリン、灯油は6月から燃料油価格激変緩和措置の補助が段階的に縮減されている中、原油高、円安が進んでいることが価格の押し上げにつながっている。

サービスは前年比2.0%(6月:同1.6%)と上昇率が前月から0.4ポイント拡大した。外食の伸びは鈍化したが、全国旅行支援の縮小から宿泊料の伸びが加速したほか、タクシー代、携帯電話通信料の値上げなどがサービス価格を押し上げた。
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.78%(6月:▲0.58%)、食料(除く生鮮食品・外食)が1.91%(6月:1.88%)、その他財が1.00%(6月:1.23%)、サービスが0.99%(6月:0.89%)、全国旅行支援が▲0.03%(6月:同▲0.13%)であった。
2.物価上昇品目の割合は8割越えが続く
3.ガソリン、灯油価格は大幅上昇へ
7月のコアCPIは前年比3.1%となり、電気代、ガス代の下落幅拡大を主因として、上昇率が前月から0.2ポイント縮小した。しかし、コアコアCPIは前年比4.3%と前月から伸びを高めており、基調的な物価上昇圧力は高まっている。
ガソリン、灯油等に対する燃料油価格激変緩和措置の補助率は6月以降、段階的に引き下げられており、9月末には同措置が終了する予定となっている。補助率の縮小に円安、原油高が重なったことで、ガソリンの店頭価格は13週連続で上昇している。8/14時点のガソリン店頭価格は、1リットル当たり181.9円(全国平均、レギュラー)まで上昇し、過去最高値(08年8月の185.1円)に近づいている。激変緩和措置が予定通り終了した場合、ガソリン、灯油は前年比で二桁の高い伸びとなる公算が大きい。
また、23年2月から実施されている電気・都市ガス代の激変緩和措置は、10月には値引き額が半減される予定となっている。ガソリン・灯油、電気・都市ガス代を合わせた激変緩和措置によって、コアCPI上昇率は22年1月以降、押し下げられてきたが、23年10月には逆に押し上げ要因となることが見込まれる。
ガソリン、灯油等に対する燃料油価格激変緩和措置の補助率は6月以降、段階的に引き下げられており、9月末には同措置が終了する予定となっている。補助率の縮小に円安、原油高が重なったことで、ガソリンの店頭価格は13週連続で上昇している。8/14時点のガソリン店頭価格は、1リットル当たり181.9円(全国平均、レギュラー)まで上昇し、過去最高値(08年8月の185.1円)に近づいている。激変緩和措置が予定通り終了した場合、ガソリン、灯油は前年比で二桁の高い伸びとなる公算が大きい。
また、23年2月から実施されている電気・都市ガス代の激変緩和措置は、10月には値引き額が半減される予定となっている。ガソリン・灯油、電気・都市ガス代を合わせた激変緩和措置によって、コアCPI上昇率は22年1月以降、押し下げられてきたが、23年10月には逆に押し上げ要因となることが見込まれる。
4.コアCPIは23年度末まで2%の物価目標を上回る伸びが続く見込み
足もとで再び円安が進んでいることには留意が必要だが、物価高の主因となっていた輸入物価の上昇には歯止めがかかっており、23年7月の輸入物価は前年比▲14.1%の大幅マイナスとなった。このため、今後は原材料コストを価格転嫁する動きが徐々に弱まり、財価格の上昇率は鈍化することが見込まれる。
一方、サービス価格は2%まで伸びを高めたが、サービス価格との連動性が高いベースアップが23年に2%程度となる中で、長期にわたり値上げが行われなかった分、値上げ幅が大きくなる可能性が高いことを考慮すれば、上昇ペースはさらに加速する可能性が高い。物価上昇の中心は、これまでの財からサービスへ徐々にシフトしていくだろう。
現時点では、コアCPIは前年の高い伸びの裏が出ることもあり、23年9月に2%台後半に伸びが鈍化した後、電気・都市ガス料金の補助金が10月に半減された上で継続することを前提として、23年度末まで2%台の伸びが続くと予想している。
一方、サービス価格は2%まで伸びを高めたが、サービス価格との連動性が高いベースアップが23年に2%程度となる中で、長期にわたり値上げが行われなかった分、値上げ幅が大きくなる可能性が高いことを考慮すれば、上昇ペースはさらに加速する可能性が高い。物価上昇の中心は、これまでの財からサービスへ徐々にシフトしていくだろう。
現時点では、コアCPIは前年の高い伸びの裏が出ることもあり、23年9月に2%台後半に伸びが鈍化した後、電気・都市ガス料金の補助金が10月に半減された上で継続することを前提として、23年度末まで2%台の伸びが続くと予想している。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年08月18日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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