2023年12月01日

雇用関連統計23年10月-失業率は低下したが、製造業の新規求人数は大幅減少が続く

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は前月から0.1ポイント低下の2.5%

完全失業率と就業者の推移 総務省が12月1日に公表した労働力調査によると、23年10月の完全失業率は前月から0.1ポイント低下の2.5%(QUICK集計・事前予想:2.6%、当社予想も2.6%)となった。

労働力人口が前月から▲6万人の減少となる中、就業者が前月から▲7万人減少し、失業者は前月から▲2万人減の175万人(いずれも季節調整値)となった。失業率は2ヵ月連続で低下したが、労働力人口が2ヵ月連続で減少するなど、非労働力化の進展が失業者減少の要因となっており、内容を伴った失業率の低下とはいえない。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
就業者数は前年差16万人増(9月:同21万人増)と15ヵ月連続で増加した。産業別には、医療・福祉が前年差▲4万人減(9月:同▲7万人減)と2ヵ月連続で減少したが、宿泊・飲食サービス業が前年差18万人増(9月:同24万人増)と16ヵ月連続、卸売・小売業が前年差4万人(9月:同5万人)と6ヵ月連続で増加し、製造業が前年差0万人(9月:同▲21万人減)と3ヵ月ぶりに減少に歯止めがかかった。

雇用者数(役員を除く)は前年に比べ22万人増(9月:同53万人増)と20ヵ月連続で増加したが、増加幅は前月から大きく縮小した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差▲3万人減(9月:44万人増)と3ヵ月ぶりに減少したが、非正規の職員・従業員数が前年差24万人増(9月:同8万人増)と2ヵ月連続で増加した。

2.製造業の新規求人数は大幅減少が続く

厚生労働省が12月1日に公表した一般職業紹介状況によると、23年10月の有効求人倍率は前月から0.01ポイント上昇の1.30倍(QUICK集計・事前予想:1.29倍、当社予想は1.28倍)となった。有効求人数が前月比0.0%、有効求職者数が同▲0.3%といずれも前月からほぼ横ばいとなった。有効求人倍率が前月から上昇したのは22年12月以来10ヵ月ぶりだが、有効求人数はほぼ横ばいにとどまっており、労働需要が明確に高まっているわけではない。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.02ポイント低下の2.24倍となった。新規求人数が前月比1.9%の増加となり、新規求職申込件数の伸び(同1.1%)を上回った。

新規求人数は前年比▲1.8%(9月:同▲3.4%)と2ヵ月連続で減少した。産業別には、宿泊・飲食サービス業が前年比2.2%と25ヵ月連続で増加したが、製造業(同▲10.6%)、建設業(同▲6.2%)が8ヵ月連続、卸売・小売業(同▲3.0%)、生活関連サービス・娯楽業(同▲2.1%)が5ヵ月連続で減少した。
有効求人倍率の推移/産業別新規求人数
社会経済活動の正常化やインバウンド需要の拡大を受けて、宿泊・飲食サービス業は就業者数、新規求人数ともに増加が続いている。一方、製造業は生産活動の停滞を反映し、新規求人数の大幅減少が続き、その他の業種でも求人数の減少が目立っている。

企業の人手不足感は非常に強いものの、生産活動の停滞や物価高に伴う個人消費の弱さを反映し、宿泊・飲食サービス業以外の業種では、企業の求人意欲にやや陰りが見られる。
 
 

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(2023年12月01日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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