2023年11月30日

鉱工業生産23年10月-生産は一進一退だが、電子部品・デバイスの在庫調整進展は明るい材料

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.10月の生産は前月比1.0%

鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 経済産業省が11月30日に公表した鉱工業指数によると、23年10月の鉱工業生産指数は前月比1.0%(9月:同0.5%)と2ヵ月連続で上昇し、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:前月比0.8%、当社予想は同1.6%)通りの結果となった。出荷指数は前月比0.2%と2ヵ月連続の上昇、在庫指数は前月比0.8%と3ヵ月ぶりに上昇した。

10月の生産を業種別に見ると、鉄鋼(前月比▲0.9%)、非鉄金属(同▲0.8%)は低下したが、在庫調整の進捗を受けて電子部品・デバイスが前月比6.6%の高い伸びとなったほか、工場の一時稼働停止があったものの供給制約の緩和から自動車が前月比2.0%の上昇となった。

財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は23年7-9月期の前期比▲4.2%の後、10月は前月比2.6%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は23年7-9月期の前期比▲3.5%の後、10月は前月比1.6%となった。
財別の出荷動向 GDP統計の設備投資は、23年4-6月期が前期比▲1.0%、7-9月期が同▲0.6%と2四半期連続で減少した。設備投資は、高水準の企業収益を背景に基調としては底堅さを維持していると判断されるが、23年度入り後は生産活動の停滞を反映し、弱い動きとなっている。

消費財出荷指数は23年7-9月期の前期比▲1.9%の後、10月は前月比2.6%となった。10月は耐久消費財が前月比▲0.3%(7-9月期:前期比▲3.7%)、非耐久消費財が前月比1.7%(7-9月期:前期比0.0%)であった。

GDP統計の民間消費は、23年4-6月期が前期比▲0.9%、7-9月期は同▲0.0%となった。22年度中は高水準の貯蓄を背景に高めの伸びが続いたが、貯蓄率の水準が平常時に近づくもとで、物価高による実質所得減少の影響で23年度入り後は弱めの動きとなっている。

2.電子部品・デバイスの在庫調整が進展

製造工業生産予測指数は、23年11月が前月比▲0.3%、12月が同3.2%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(10月)、予測修正率(11月)はそれぞれ▲2.9%、▲0.4%であった。

予測指数を業種別にみると、グローバルなITサイクルの調整を反映し、低迷が続いてきた電子部品・デバイスは10月に前月比6.6%の高い伸びとなった後、11月が前月比▲1.3%、12月が同1.9%と横ばいの動きだが、11月の生産計画は前月から3.8%上方修正されている。

電子部品・デバイスの出荷・在庫バランス(出荷・前年比-在庫・前年比)は23年9月(11.6%)に続き、10月(12.3%)もプラスとなった。10月は在庫が前年比▲15.6%(9月:同▲20.1%)と大幅な低下が続く一方、出荷のマイナス幅が9月の前年比▲8.5%から同▲3.4%へと縮小した。

鉱工業全体は一進一退が続いているが、これまで生産の押し下げ要因となってきた電子部品・デバイスの在庫調整が進展していることは、先行きを見る上で明るい材料と言えるだろう。
最近の実現率、予測修正率の推移/電子部品・デバイスの出荷・在庫バランス
23年10月の生産指数を11、12月の予測指数で先延ばしすると、10-12月期の生産は前期比1.9%の上昇となるが、実際の生産が計画から下振れる傾向があることを考慮すれば、前期比1%弱の伸びにとどまり、7-9月期の落ち込み(前期比▲1.2%)を取り戻すには至らない可能性が高い。海外経済の減速に伴う輸出の伸び悩みが続くことに加え、物価高の影響などから国内の財消費が弱めの動きとなっていることから、鉱工業生産は当面一進一退の動きが続くことが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2023年11月30日「経済・金融フラッシュ」)

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