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不況下で高まる企業の人手不足感-有効求人倍率の低下と需給ギャップのマイナスをどうみるか
![](https://www.nli-research.co.jp/files/topics/45_ext_01_0.jpeg?v=1554184776)
経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎
最近の人手不足は、従来と異なる特徴がある。企業の人手不足感が急速に高まるなかでも、(1)労働市場の需給関係を反映する有効求人倍率が低下していること、(2)実際のGDPと潜在GDPの差を示す需給ギャップがマイナス圏にあることである。
企業の人手不足感とハローワークを対象とした求人動向が乖離している背景には、ハローワークの求人が実際の採用につながりにくくなっていることなどから、採用手段が他のチャネルにシフトしていることがあると考えられる。
企業が人手不足を感じるケースはふたつある。ひとつは、好況期に最終需要が拡大し、それに対応するための労働力の確保が追いつかない場合である。もうひとつは、労働市場の余剰労働力が構造的に不足しているため、企業が思うように労働投入量を増やすことができず、その結果として最終需要が低迷する場合である。
前者は循環的な側面が強く、景気が悪くなれば解消する人手不足だが、後者は景気とは関係なく人手が足りない状態であり、労働供給制約が経済成長を阻害するより深刻な人手不足といえる。現状の人手不足は、最終需要の拡大を起点として労働投入量が増えるというこれまでの人手不足とは異なっており、より深刻な人手不足に近づいている可能性がある。
現在は不況下の人手不足の状態にあり、短期的には最終需要の拡大によって需給ギャップをプラスに転換させることを優先すべきである。一方、中長期的には労働供給制約が経済成長を阻害する深刻な人手不足に陥ることを避けることが重要な課題となる。潜在労働力のさらなる掘り起こしや一人当たり労働時間の増加などによって労働投入量の減少に歯止めをかけることが求められる。
■目次
1――従来と異なる最近の人手不足
2――人手不足でも低下する有効求人倍率
3――人手不足でも需給ギャップはマイナス
4――深刻な人手不足を回避する方策
(2024年02月29日「基礎研レポート」)
![](https://www.nli-research.co.jp/files/topics/45_ext_01_0.jpeg?v=1554184776)
03-3512-1836
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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