2024年03月29日

雇用関連統計24年2月-就業者数が大幅に増加する一方、新規求人数は減少が続く

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は前月から0.2ポイント上昇の2.6%

完全失業率と就業者の推移 総務省が3月29日に公表した労働力調査によると、24年2月の完全失業率は前月から0.2ポイント上昇の2.6%(QUICK集計・事前予想:2.4%、当社予想は2.5%)となった。

労働力人口が前月から31万人の増加となる中、就業者が前月から22万人増加し、失業者は前月から12万人増の182万人(いずれも季節調整値)となった。労働市場への参入が大幅に増えたことが失業者の増加につながったが、就業者も大幅に増加している。ヘッドラインの数字ほど内容は悪くない。
就業者数は前年差61万人増(1月:同25万人増)と19ヵ月連続で増加し、前月から増加幅が大きく拡大した。産業別には、宿泊・飲食サービス業が前年差12万人増(1月:同22万人増)と20ヵ月連続、製造業が前年差25万人増(1月:同16万人増)、と4ヵ月連続で増加したことに加え、卸売・小売業が前年差6万人増(1月:同11万人減)と4ヵ月ぶり、医療・福祉が前年差15万人増(1月:同18万人増)と2ヵ月ぶりに増加した。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
雇用者数(役員を除く)は前年に比べ81万人増(1月:同44万人増)と24ヵ月連続で増加した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差49万人増(1月:31万人増)と4ヵ連続、非正規の職員・従業員数が前年差32万人増(1月:同13万人増)と6ヵ月連続で増加した。

2.減少が続く新規求人数

厚生労働省が3月29日に公表した一般職業紹介状況によると、24年2月の有効求人倍率は前月から0.01ポイント低下の1.26倍(QUICK集計・事前予想:1.27倍、当社予想も1.27倍)となった。有効求人数が前月比0.5%の増加となったが、有効求職者数が同1.0%と求人数を上回る伸びとなったことが求人倍率の低下につながった。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.02ポイント低下の2.26倍となった。新規求人数が前月比1.6%の増加、新規求職申込件数が同2.8%の増加となった。

新規求人数は前年比▲3.6%(1月:同▲3.0%)と6ヵ月連続で減少した。産業別には、生活関連サービス・娯楽業が前年比▲7.9%(1月:同5.7%)と2ヵ月ぶりに減少したほか、製造業(同▲8.7%)、建設業(同▲2.4%)が12ヵ月連続、卸売・小売業(同▲4.5%)が9ヵ月連続、宿泊・飲食サービス業(同▲8.4%)が4ヵ月連続で減少した。
有効求人倍率の推移/産業別新規求人数
充足率と就職件数 雇用情勢は改善傾向が続いているが、23年に入ってからは有効求人倍率の低下、新規求人数の減少が続いており、企業の求人意欲に陰りが出てきたことを示している。特に、宿泊・飲食サービス業は就業者の大幅増加が続く一方、新規求人数が減少に転じており、両者の動きが大きく乖離している。

充足率(新規求人数に対する就職件数の割合)が10%台前半の過去最低水準で推移するなど、ハローワークの求人が採用につながりにくくなっていることを背景に、採用方法がハローワークから民間職業紹介所、広告等の他のチャネルにシフトしている可能性が考えられる。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2024年03月29日「経済・金融フラッシュ」)

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