2024年04月17日

貿易統計24年3月-1-3月期の外需寄与度は前期比▲0.4%程度のマイナスに

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.貿易収支(季節調整値)の赤字幅が拡大

財務省が4月17日に公表した貿易統計によると、24年3月の貿易収支は3,665億円の黒字となり、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:3,577億円、当社予想は4,641億円)通りの結果となった。輸出は前年比7.3%(2月:同7.8%)と伸びが鈍化したが、輸入が前年比▲4.9%(2月:同0.5%)と2ヵ月ぶりに減少したため、貿易収支は前年に比べ11,173億円の改善となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲2.1%(2月:同▲1.5%)、輸出価格が前年比9.6%(2月:同9.5%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲9.4%(2月:同1.3%)、輸入価格が前年比4.9%(2月:同▲0.8%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
原数値の貿易収支は黒字となったが、3月は年度末で輸出量が多く貿易黒字になりやすいという季節性がある。貿易収支の実勢を判断するためには季節調整値を用いることが適切である。季節調整済の貿易収支は▲7,015億円となり、2月の▲5,662億円から赤字幅が拡大した。また、24年1月が前月時点の黒字から赤字に修正されたため、貿易収支(季節調整値)は21年6月以降、34ヵ月連続の赤字となった。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 24年3月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=83.1ドル(当研究所による試算値)と、2月の83.7ドルから若干低下した。足もとの原油価格(ドバイ)は中東情勢の緊迫化を受けて90ドル台まで上昇しており、長期契約で販売する際に指標価格に上乗せされる調整金、船賃、保険料などを含めた通関ベースの原油価格は、24年4月に80ドル台後半、5月に90ドル台半ばまで上昇することが見込まれる。原油高、円安に伴う輸入価格の上昇が貿易赤字の拡大要因となる公算が大きい。

2.輸出入ともに弱い動きが続く

24年3月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比1.8%(2月:同10.9%)、EU向けが前年比▲6.5%(2月:同3.5%)、アジア向けが前年比▲1.7%(2月:同▲5.9%)、うち中国向けが前年比0.9%(2月:同▲7.1%)となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 24年1-3月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比▲2.1%(10-12月期:同1.3%)、EU向けが前期比▲1.7%(10-12月期:同▲3.0%)、アジア向けが前期比▲1.6%(10-12月期:同▲1.5%)、うち中国向けが前期比▲2.4%(10-12月期:同0.5%)、全体では前期比▲3.4%(10-12月期:同▲1.2%)となった。

1-3月期は主要国・地域向けの輸出が全て前期比でマイナスとなった。米国向けは均してみれば堅調を維持しているが、景気が低調に推移するEU向け、アジア向け、中国向けは弱い動きが続いている。

一方、24年1-3月期の輸入数量指数は前期比▲4.6%(10-12月期:同▲0.7%)となった。輸出は海外経済の減速、輸入は国内需要の停滞を背景に、弱い動きが続いている。先行きについては、国内需要の回復に伴い輸入が持ち直しに向かう一方、海外経済の減速を背景に輸出は当面弱めの動きが続くことが予想される。

3.1-3月期の外需寄与度は前期比▲0.4%程度のマイナスに

3月までの貿易統計と2月までの国際収支統計の結果を踏まえて、24年1-3月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出が前期比▲3%台半ばの減少、輸入が前期比▲1%台半ばの減少となった。この結果、1-3月期の外需寄与度は前期比▲0.4%(10-12月期:同0.2%)と2四半期ぶりのマイナスとなることが予想される。

当研究所では、鉱工業生産、建築着工統計等の結果を受けて、4/30のweeklyエコノミストレターで24年1-3月期の実質GDP成長率の予測を公表する予定である。現時点では、外需が成長率を押し下げることに加え、民間消費を中心に国内需要も低調な動きとなることから、前期比年率▲1%台後半のマイナス成長を予想している。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2024年04月17日「経済・金融フラッシュ」)

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