2024年04月22日

2024年3月、グローバル株式市場は上昇が継続

金融研究部 准主任研究員・ESG推進室兼任 原田 哲志

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1――2024年3月、グローバル株式市場は上昇が継続

2024年3月、グローバル株式市場は堅調な推移となった。3月下旬、米FRB(連邦準備制度理事会)が政策金利見通しで年3回としていた利下げ予想を維持したことやAIブームを背景としたハイテク株高の流れなどが株式市場を支えた。代表的な世界株指数(含む新興国)であるMSCI All Country World Index (MSCI ACWI)のリターンは2024年3月 +3.2%(米ドル建グロス配当込み)1、過去1年(2023年4月-2024年3月)も+23.8%と上昇が続いている(図表1)。

2024年3月、先進国と新興国を比べると、新興国は先進国と比較して低いリターンにとどまった。先進国(MSCI  World Index)が+3.3%、新興国(MSCI Emerging Markets Index)が+2.5%となった(図表2)。
図表1 世界株指数の推移/図表2 先進国・新興国指数の推移
グロース・バリューでは、グロース指数(MSCI ACWI Growth Index)が+2.1%、バリュー指数(MSCI ACWI Value Index)が+4.4%とバリュー優位となった(図表3)。企業規模別では、大型株(MSCI ACWI Large Cap Index)が+3.1%、中型株(MSCI ACWI Mid Cap Index)が+3.6%、小型株(MSCI ACWI Small Cap Index)が+3.4%と中型株が最もパフォーマンスが高かった(図表4)。直近1年程度では、2月までは大型・グロース優位の展開が続いたが、3月はやや異なる傾向となった。
図表3 グロース・バリュー指数の推移/図表4 企業規模別指数の推移
 
1 以下、特に断りのない限りリターンは米ドル建グロス配当込みを示す。

2――国・業種別の動向

2――国・業種別の動向

2024年3月は国別に見ても上昇した国が多かった(図表5)。アルゼンチン(+12.7%)、スペイン(+11.5%)、コロンビア(+10.6%)がリターンが高かった。一方で、エジプト(▲33.0%)、香港(▲6.5%)、カタール(▲4.2%) がリターンが低かった。主要国について見ると、米国(+3.2%)、ドイツ(+4.0%) 、日本(+3.3%)となった。

大幅な下落となったエジプトでは、当局は従来1ドル30エジプトポンド前後で為替相場を管理していたが、為替相場を市場に委ねる方針に転換したことで1ドル47エジプトポンド(3月末時点)まで大幅な通貨安となったことが影響した。香港株式市場は下落傾向が続いており、過去1年では▲22.9%となっている。

アルゼンチンでは中央銀行が大幅な利下げを発表、インフレの抑制が期待されたことなどから3月は上昇した。
図表5 各国の株式市場のリターン
業種別に見ると、 エネルギー(+8.0%)、半導体・半導体製造装置(+7.5%)、不動産(+6.6%)がリターンが高かった。一方で、自動車・自動車部品(▲2.6%)、テクノロジー・ハードウェアおよび機器(▲0.1%)、耐久消費財・アパレル (±0.0%) がリターンが低かった(図表6)。

イスラエルでの地政学リスクの高まりを背景とした原油価格の高騰からエネルギーが上昇する一方で、電気自動車の販売不調が指摘される自動車・自動車部品などが下落した。
図表6 業種別リターン

3――世界の主要企業の株価動向

3――世界の主要企業の株価動向

世界の主要な企業の株価について見ると幅広い銘柄で株価が上昇した(図表7)。時価総額上位30位の企業では、エヌビディア(+16.3%) 、オラクル(+12.5%)、TSMC(+12.1%)のリターンが高かった。一方で、テスラ(▲13.0%)、アップル(▲5.5%)、ビザ(▲2.3%) のリターンが低かった。エヌビディアは生成AI向けGPUの需要増加などを背景に好調な決算を発表したことから上昇が続いている。一方で、テスラは同社が製造・販売する電気自動車の需要の衰退懸念などから下落傾向が続いている。
図表7 世界の主要企業の株価動向

4――今後の見通しと注目されるテーマ

4――今後の見通しと注目されるテーマ

グローバル株式市場は上昇が続いているが、地域によって状況はまちまちとなっている。国際通貨基金は2024年4月の世界経済見通しにおいて、「先進国は、成長率が2023年の1.6%から2024年は1.7%、2025年は1.8%へやや加速する見込みである一方、新興市場国・発展途上国は2023年の4.3%から、2024年と2025年はともに4.2%へやや鈍化する見込みで、先進国の加速を相殺する。」と予測している。国際通貨基金は各国中央銀行の利上げにもかかわらず世界経済は堅調なことや中国やその他の新興国の成長見通しが弱い点を指摘している2。こうした要因がグローバル株式市場に与える影響に引き続き注視していきたい。
 
2 国際通貨基金, 「世界経済見通し 安定かつ緩慢まちまちな様相の中、強靭性も 2024年4月」, 2024年 4月
 
 

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金融研究部   准主任研究員・ESG推進室兼任

原田 哲志 (はらだ さとし)

研究・専門分野
資産運用、オルタナティブ投資

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和証券SMBC(現大和証券)入社
         大和証券投資信託委託株式会社、株式会社大和ファンド・コンサルティングを経て
    2019年 ニッセイ基礎研究所(現職)

    【加入団体等】
     ・公益社団法人 日本証券アナリスト協会 検定会員
     ・修士(工学)

(2024年04月22日「基礎研レター」)

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