2024年04月22日

のり弁×冷凍食品-消費の交差点(5)

生活研究部 研究員 廣瀨 涼

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本コラムのポイント

1――今最高に熱い冷凍商品市場

1――今最高に熱い冷凍商品市場

2022年10月に東京・秋葉原、2023年6月に大阪・梅田に期間限定で出店し、話題となった冷凍食品とアイスクリームが食べ放題のレストラン「チン!するレストラン」が2024年4月13日~28日までの期間限定、名古屋のグローバルゲートにオープンする1。店内では定番から最新の冷凍食品やアイスクリームを約200種類そろえ、客が好きな商品を自分でレンジアップして食べることができる新感覚の“食べ放題”を楽しむことができる。東京での出店時には、イベント開始の2日目にチケット完売し、キャンセル待ちは7,000~8,000人と、消費者の注目を集めていた。

また、イオンリテールは2022年8月、千葉県浦安市の「イオンスタイル新浦安MONA」内に日本最大級の約1,500品目の冷凍食品を取りそろえる新業態「@FROZEN」をオープンした。そもそも冷凍食品市場拡大の要因は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、家で素材から調理して食べる「内食」需要が定着した一方、より手軽な冷凍食品や総菜などの「中食」需要も高まったことにあるが、併せて、共働き世帯やシニアの少人数世帯が増えたことも要因だ。2024年4月現在「@FROZEN」は首都圏を中心に5店舗出店し、中でもイオンスタイルレイクタウン店では2,000品目以上が取り扱われており、イートインを隣接するほか、電子レンジも設置し、その場ですぐに食べることができる環境が提供されている2

筆者も日々の買い物で冷凍食品を購入する機会があるのだが、ラインナップはもちろん、「これが冷凍食品で食べれるの?」と驚く商品によく遭遇する。その中でも筆者が感動したのは弁当・惣菜専門店「オリジン弁当」の「のり弁当」を再現した冷凍食品3だ。過去の消費経験を思い返して欲しい。白身フライ、ちくわの磯部揚げ、きんぴらごぼう。どれも冷凍食品の定番であり、売り場で目にしたこともあると思う。しかし、筆者の知る限りそれらが弁当として冷凍されている商品を見たのは初めてだった。
 
1 株式会社日本アクセス「一日のキャンセル待ちが最大8,000組超えの「チン!するレストラン」が期間限定で名古屋に2024年4月にオープン!」 2023/12/12 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000090.000023710.html 
2 イオン株式会社「<日本最大級>冷凍食品専門店「@FROZEN」2023年度、5店舗出店」2023/07/28 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003918.000007505.html
3 2022年3月にはほっかほっか亭冷凍のり弁当が発売されている。食品新聞「ほっかほっか亭冷凍のり弁当」など一食完結型の冷凍食品や惣菜が充実 単身世帯を狙う「マルエツ プチ」オープン 2022/03/19 https://shokuhin.net/54105/2022/03/19/ryutu/kouri/

2――冷凍食品はおいしい

2――冷凍食品はおいしい

2019年には国民一人あたりの冷凍食品の年間消費量が23.4kg(約94食)と過去最高を記録している4。また、一般社団法人日本冷凍食品協会の『“冷凍食品の利用状況”実態調査5』によれば「普段冷凍食品を購入する際、どこに魅力を感じて購入しているか」という問いに対して男女とも5割以上が「おいしい」を理由に挙げている。
表1 普段冷凍食品を購入する際、どこに魅力を感じて購入しているか (複数回答)
また、2016年調査と比較すると女性で22.7ポイント、男性で17ポイント増加しており、時系列にみてもおいしさを理由に冷凍食品を購買している消費者が増加している。

今や我々の生活になくてはならなくなった冷凍食品だが、売り場を思い返せば一品物のおかずやパスタやチャーハンといった加工された主食がラインナップの中心であり、冷凍の白米が陳列されているところを見たことがなかった。もちろん常温で保存できるレトルトごはんやパックごはん市場が成立しているからこそ、必要性が見出されなかったと言えるのかもしれない。実際に、一般社団法人食品需給研究センターの「食品産業動態調査」によると、パックご飯(無菌包装米飯)とレトルト米飯を合わせた年間生産量は、2022年に24万5811トンと、2010年比で倍増している6。しかし、白米単品のみならず、白米とおかずという組み合わせの冷凍食品すら目にする機会はなかったように思われる。
図1 冷凍食品を「おいしい」と回答した割合 (男女別:複数回答)
 
4 冷食ONLINE「冷凍食品の歴史」https://online.reishokukyo.or.jp/learn/naruhodo/detail/history.html#ath
5 一般社団法人 日本冷凍食品協会「“冷凍食品の利用状況”実態調査結果について」令和2年4月
https://www.reishokukyo.or.jp/wp-content/uploads/research2020.pdf
6 一般社団法人食品需給研究センター「食品製造業の生産動向」 https://www.fmric.or.jp/stat/

3――TVディナーへの憧れ

3――TVディナーへの憧れ

特に北米においては「TVディナー」と呼ばれる複数の料理が組み合わされ、それだけで1回の食事になりえるプレート型の冷凍食品が1950年代以降普及している。アメリカの映画やシットコムドラマ等で登場人物たちがテレビを見ながら食べているアレである。筆者自身、動画コンテンツ登場するTVディナーに対して憧れがあり、現地で夕飯代わりに購入する事もあるのだが、その度に「なぜ日本では、このワンプレート型の冷凍食品が販売されていないのだろうか」と考えていた。あくまでも筆者の推測だが、それは主食の違い、つまり、北米において主食としての位置づけにある食べ物は、パン、ポテト、コーン、パスタといった冷凍に「親和性」のあるものが多いからではないだろうか7。現に、TVディナーのメニューを見てもマッシュポテトやパスタ、クリームコーンなどが定番であり、それらは調理された冷凍食品として市場からすでに受け入れられている。
図2 3食(計)の主食の構成比
一方日本においては、農林水産省の「令和3年度食生活・ライフスタイル調査8」によれば主食は「米食」が4割強で最も多く、特に夕食は米食が70.5%と圧倒的に多いことがわかっている。

米食が中心である日本の食文化において、TVディナーのようなワンプレート型の冷凍食品を作るには白米が必要なのである。ではなぜ白米の冷凍食品は存在しなかったのだろうか。これは筆者が考えるにお弁当の核ともいえる「ごはん」を高品質で提供することが難しかったからではないだろうか。
図3 食事別の主食の構成比
 
7 もちろん、そもそもの食文化としてメインとサイドという献立が一般的で、主食と呼ばれるモノを必ずしも食べないことも要因だと考える。
8 農林水産省大臣官房政策課「生活・ライフスタイル調査~令和3年度~調査報告書」令和4年3月10日 https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/attach/pdf/220310-1.pdf

(2024年04月22日「基礎研レター」)

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生活研究部   研究員

廣瀨 涼 (ひろせ りょう)

研究・専門分野
消費文化論、若者マーケティング、サブカルチャー

経歴
  • 【経歴】
    2019年 大学院博士課程を経て、
         ニッセイ基礎研究所入社

    ・令和6年度 東京都生活文化スポーツ局都民安全推進部若年支援課広報関連審査委員

    【加入団体等】
    ・経済社会学会
    ・コンテンツ文化史学会
    ・余暇ツーリズム学会
    ・コンテンツ教育学会
    ・総合観光学会

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