2024年04月04日

さくらレポート(2024年4月)~景気の総括判断は7地域で引き下げ。製造業・非製造業ともに弱い動き~

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1.景気の総括判断は、全9地域中、2地域で据え置き、7地域で引き下げ

4月4日に日本銀行が公表した「地域経済報告(さくらレポート)」によると、景気の総括判断は、全9地域のうち、2地域で据え置き、7地域で引き下げとなった。景気の総括判断が据え置かれたのは、北海道、四国の2地域となり、引き下げられたのは、東北、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、九州・沖縄の7地域となった。景気の総括判断で、「回復している」との表現を用いた地域が、前回(2024年1月)は東北、北陸、関東甲信越、中国、九州・沖縄の5地域だった。今回(2024年4月)は、中国が「回復基調にある」へ下方修正され、さらに関東甲信越は「持ち直している」、震災により被害を受けた北陸は「持ち直しの動きがみられている」へもう一段下方修正されたことで「回復している」との表現を用いた地域は2地域となった。
各地域の景気の総括判断
需要項目別にみると、個人消費は物価上昇の影響を受けつつも着実に増加している。設備投資は高水準の企業収益を背景に増加している。住宅投資は住宅価格の上昇を受けて減少している。

他には、生産は自動車メーカーの不正問題発覚に伴う生産停止を受けて、一部に弱めの動きがみられる。雇用・所得環境は労働需給の引き締まりを背景に、緩やかに改善している。

2.業況判断は5地域で悪化、先行きの警戒感も強い

「地域別業況判断DI(全産業)」をみると、全9地域中、3地域で改善、1地域で横ばい、5地域で悪化し、全国では▲1ポイントの悪化となった。前回調査からの変化幅をみると、北海道、関東甲信越、四国が+1ポイント、九州・沖縄が横ばいとなった。一方、北陸が▲7ポイント、東海が▲5ポイント、東北が▲3ポイント、近畿が▲2ポイント、中国が▲1ポイントと悪化した。

先行き(2024年6月)の景況感は、全9地域中、1地域で横ばい、8地域で悪化を見込んでおり、全国では▲3ポイントの悪化を見込んでいる。先行きの悪化幅をみると、北海道が▲7ポイントと最も大きく、次いで九州・沖縄が▲6ポイント、四国が▲5ポイント、中国が▲4ポイント、近畿が▲3ポイント、関東甲信越、東海が▲2ポイント、北陸が▲1ポイント、東北が横ばいとなった。全体的に景況感は悪化しており、先行きへの警戒感も強い。
地域別の業況判断DIと変化幅(全産業)/全産業の改善・悪化幅(前回→今回)、(今回→先行き)

3.製造業は悪化、先行きは横ばいが見込まれる

製造業の業況判断DIは、全9地域のうち1地域で改善、3地域で横ばい、5地域で悪化し、全国では▲1ポイントの悪化となった。
地域別の業況判断DIと変化幅(製造業) 地域別に変化幅をみると、北海道が+7ポイントと改善し、東北、四国、九州・沖縄は横ばいとなった。一方、北陸、東海は▲8ポイントと最も悪化幅が大きく、次いで中国は▲5ポイント、近畿は▲3ポイント、関東甲信越は▲1ポイントとなった。

北海道では、はん用・生産用・業務用機械が+86ポイントと大幅に改善した。加えて、金属製品が+20ポイント、窯業・土石製品が+15ポイント、電気機械が+14ポイントと改善幅が大きかった。一方、前回調査から悪化した北陸では、特に紙・パルプ(▲33ポイント)、石油・石炭製品(▲33ポイント)、鉄鋼(▲33ポイント)の悪化幅が大きかった。中国では、特に木材・木製品(▲45ポイント)、輸送用機械(▲22ポイント)が悪化した。また近畿では、自動車メーカーの不正問題発覚に伴う生産停止の悪影響を受けて、輸送用機器(▲11ポイント)が悪化した。地域別の製造業の景況感は、北海道ははん用・生産用・業務用機械を中心に改善しているが、それ以外の地域では弱い動きとなっている。
先行きについては、全9地域中、4地域で改善、1地域で横ばい、4地域で悪化、全国では横ばいを見込んでいる。

地域別に先行きの変化幅をみると、最も改善を見込むのは東北で、改善幅は+7ポイントだった。次いで四国が+3ポイント、関東甲信越、東海が+1ポイント、中国は横ばいとなった。一方、悪化を見込む地域をみると、北海道が▲4ポイントと悪化幅が最も大きく、次いで九州・沖縄が▲2ポイント、近畿、北陸が▲1ポイントとなった。先行きの改善が見込まれる東北では、特に鉄鋼(+24ポイント)、輸送用機械(+22ポイント)、窯業・土石製品(+20ポイント)で大幅な改善が見込まれている。一方、先行きの悪化幅が最も大きかった北海道では、特にはん用・生産用・業務用機械(▲29ポイント)、金属製品(▲20ポイント)、電気機械(▲14ポイント)で大幅な悪化が見込まれている。製造業の先行きは地域ごとにばらつきがある。

なお、日銀短観2024年3月調査では、2024年度の想定為替レート(全規模製造業ベース)が141.18円と、足もとの実勢(151円台後半)と比べて円高の水準を想定している。為替が現在の水準で推移すれば、利益計画の上方修正を通じて製造業の景況感は上振れていくだろう。
製造業の改善・悪化幅(前回→今回)/製造業の改善・悪化幅(今回→先行き)

4.非製造業は横ばい、先行きは悪化を見込む

地域別の業況判断DIと変化幅(非製造業) 非製造業の業況判断DIは全9地域中、4地域で改善、1地域で横ばい、4地域で悪化し、全国は横ばいとなった。地域別に変化幅をみると、最も改善しているのは関東甲信越、中国で+2ポイントとなった。次いで北海道、四国が+1ポイント、九州・沖縄が横ばいとなった。一方、東北が▲5ポイント、北陸が▲4ポイント、東海が▲3ポイント、近畿が▲1ポイントの悪化となった。

改善幅が最も大きかった中国では、特に情報通信(+13ポイント)、運輸・郵便(+11ポイント)の改善幅が大きかった。一方、悪化幅が大きかった東北では宿泊・飲食サービス(▲20イント)、卸売(▲9ポイント)、電気・ガス(▲8ポイント)、不動産(▲7ポイント)の悪化幅が大きかった。また北陸では、年初に発生した能登半島地震によって旅行の取りやめが相次いだことで宿泊・飲食サービスが▲86ポイントと大幅に悪化した。非製造業の業況判断は地域ごとにばらつきはあるものの全体的に弱い動きとなっている。
先行きについては、全9地域で悪化を見込み、全国では▲5ポイントの悪化を見込んでいる。物価上昇の影響を受けて警戒感が強い。

地域別に先行きの悪化幅をみると、最も大きいのは四国で▲10ポイントの悪化を見込んでいる。次いで北海道で▲8ポイント、中国、九州・沖縄が▲7ポイント、近畿が▲6ポイント、東海が▲4ポイント、関東甲信越、東北が▲3ポイント、北陸が▲2ポイントの悪化を見込んでいる。

悪化幅が最も大きい四国では、特に建設(▲18ポイント)、卸売(▲17ポイント)、小売(▲10ポイント)の悪化を見込んでいる。北海道では、宿泊・飲食サービス(▲23ポイント)、不動産(▲17ポイント)、物品賃貸(▲17ポイント)、対事業所サービス(▲17ポイント)の悪化を見込んでいる。非製造業の先行きは、人手不足、物価高、実質賃金の低下など下押し圧力が残存していることから、警戒感が強い状況が続いている。
非製造業の改善・悪化幅(前回→今回)/非製造業の改善・悪化幅(今回→先行き)
 
 

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経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2021年4月  日本生命保険相互会社入社
     2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

(2024年04月04日「経済・金融フラッシュ」)

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