2024年04月01日

宿泊旅行統計調査2024年2月~物価高の中でも日本人延べ宿泊者数は2ヵ月連続でコロナ禍前を上回る~

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1.日本人延べ宿泊者数は好調を維持

観光庁が3月29日に発表した宿泊旅行統計調査によると、2024年2月の延べ宿泊者数は4,815万人泊(1月:4,565万人泊)となった。前年同月比は17.0%(1月:同15.6%)、新型コロナウイルスの影響が出る前の2019年同月比でみると、10.6%(1月:同6.9%)となった。

2024年2月の日本人延べ宿泊者数は3,670万人泊(1月:3,441万人泊)となり、前年同月比は4.2%(1月:2.9%)と2ヵ月連続のプラスとなり、2019年同月比は7.1%(1月:同2.8%)とコロナ禍前の水準を5ヵ月連続で上回った。

2024年2月の外国人延べ宿泊者数は1,144万人泊(1月:1,124万人泊)となり、2019年同月比は23.4%(1月:同22.0%)と、8ヵ月連続でコロナ禍前の水準を上回った。
延べ宿泊者数の推移(2019年同月比)/日本人延べ宿泊者数の推移(前年比)
客室稼働率の推移 2024年2月の客室稼働率は全体で54.4%(1月:同51.2%)、2019年同月差▲7.5%(1月:同▲2.8%)と、コロナ禍前の水準を下回っている。

宿泊施設タイプ別客室稼働率は、旅館は34.7%、2019年同月差▲3.8%(1月:同▲4.1%)、リゾートホテルは54.2%、2019年同月差▲4.1%(1月:同▲4.5%)、ビジネスホテルは72.2%、2019年同月差▲3.7%(1月:同▲3.4%)、シティホテルは70.1%、2019年同月差▲8.9%(1月:同▲7.8%)、簡易宿所は25.0%、2019年同月差▲4.9%(1月:同▲2.2%)であった。2019年同月差は旅館が2ヵ月連続のマイナス、それ以外のタイプの宿泊施設でもマイナス圏での推移が続いた。

2.2次避難によって石川県の延べ宿泊者数は大幅上昇

北陸応援割の概要 2024年2月の延べ宿泊者数速報と同時に2024年1月の都道府県別の延べ宿泊者数の実績が公表された。それによると、1月の北陸の日本人延べ宿泊者数は新潟県が2019年比▲11.1%(前年比:▲2.3%)、富山県が同4.2%(同:0.7%)、石川県が同40.7%(同:76.1%)、福井県が同▲33.5%(同:▲4.2%)となった。新潟県、福井県は震災の影響もあり、日本人延べ宿泊者数に落ち込みがみられるが、富山県、石川県ではコロナ禍前、前年を上回っている。特に石川県では大幅に宿泊者数が増加している。これは、能登半島地震の2次避難者が含まれているためと考えられる。石川県の発表では、2次避難者は金沢市以南・県外のホテルや旅館に移送されており、その人数は2月13日時点で累計7165人となっている。2次避難者の宿泊数が統計に反映されているため、石川県の日本人延べ宿泊者数は増加している。

なお、3月からは北陸応援割が開始されており、富山県、新潟県、福井県、石川県では、1泊の宿泊旅行代金の50%が最大2万円1まで補助される。北陸応援割による旅行需要の押し上げが期待される。

日本人延べ宿泊者数は、全国旅行支援の効果が剥落した後もコロナ禍前の水準を上回って推移を続けている。物価高による実質所得の低下やホテル代の高騰など下振れリスクはあるが、日本人延べ宿泊者数の先行きは、引き続きコロナ禍前の水準を上回って推移する公算が大きい。
 
1 宿泊数や宿泊県数によって上限金額が変わる

3.中国人観光客数のマイナス幅は縮小傾向

国籍別外国人延べ宿泊者数 外国人宿泊者数のうち、国別が分かる従業者数10人以上の施設でみると、2024年2月の中国人延べ宿泊者数は2019年比▲26.0%(1月:同▲37.2%)と、韓国(同37.6%)、香港(同5.5%)、台湾(同40.7%)、アメリカ(同75.5%)など他の国・地域と比較すると回復が遅い状況が続いている。中国では、日中間の航空便数の回復が遅れていることや不動産市場の低迷による景気下押しの影響などから回復が遅れている。

中国人宿泊者数の回復には時間がかかっているが、マイナス幅は縮小してきている。コロナ禍前に比べて為替レートが円安の水準にあることが追い風となって、外国人延べ宿泊者数は増加を続けるだろう。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2021年4月  日本生命保険相互会社入社
     2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

(2024年04月01日「経済・金融フラッシュ」)

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