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さくらレポート(2024年1月)~景気判断は5地域で「回復」とされたが、先行きへの警戒感は強い~

経済研究部 安田 拓斗
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1.景気の総括判断は、全9地域中、2地域で引き上げ、6地域で据え置き、1地域で引き下げ
他には、生産は海外経済の回復ペース鈍化の影響を受けながらも、供給制約の緩和などから横ばい圏内で推移している。雇用・所得環境は労働需給の引き締まりを背景に、緩やかに改善している。
2.業況判断は製造業、非製造業ともに緩やかに改善
先行き(2024年3月)の景況感は、全9地域で悪化を見込んでおり、全国では▲5ポイントの悪化を見込んでいる。先行きの低下幅をみると、北陸が▲7ポイントと最も大きく、次いで北海道が▲6ポイント、近畿が▲5ポイント、東北、関東甲信越、東海、四国、九州・沖縄が▲4ポイント、中国が▲2ポイントとなった。景気は製造業・非製造業ともに持ち直しているものの、欧米の中央銀行による累積的な金融引き締めによる海外経済の減速や、消費者物価高止まりによる実質賃金の低下など景気の下振れリスクが残存しているため先行きへの警戒感は全体的に強い。今後も先行きを楽観視できない状況が続くだろう。
3.製造業の業況判断は緩やかに改善したが、先行きは悪化が見込まれる

近畿では、特に窯業・土石製品が+17ポイント、化学、金属製品、輸送用機械が+12ポイントと改善幅が大きかった。中国では、特に紙・パルプ(+43ポイント)、木材・木製品(+21ポイント)が大きく改善した。一方、前回調査から悪化した九州・沖縄では、特に鉄鋼(▲31ポイント)、繊維(▲11ポイント)の悪化幅が大きかった。地域によってばらつきはあるものの、製造業の業況判断は全体として緩やかに改善している。
地域別に先行きの変化幅をみると、北海道、東北が+2ポイントと最も大きく、次いで中国が+1ポイントとなった。一方、悪化を見込む地域をみると、北陸が▲8ポイントと悪化幅が最も大きく、次いで東海が▲4ポイント、近畿、九州・沖縄が▲3ポイント、関東甲信越が▲2ポイント、四国が▲1ポイントとなった。先行きの改善幅が最も大きかった東北では、特に鉄鋼(+31ポイント)、輸送用機械(+20ポイント)で大幅な改善が見込まれている。一方、先行きの悪化幅が最も大きかった北陸では、特に石油・石炭製品(▲33ポイント)、木材・木製品(▲25ポイント)、金属製品(▲25ポイント)で大幅な悪化が見込まれている。北海道、東北、中国では小幅な改善を見込むが、全体的に製造業の先行きは警戒感がうかがえる。
なお、日銀短観2023年12月調査では、2023年度の想定為替レート(全規模製造業ベース)が138.96円と、足もとの実勢(145円台前半)と比べて円高の水準を想定している。為替が現在の水準で推移すれば、利益計画の上方修正を通じて製造業の景況感は上振れていくだろう。
4.非製造業は先行きの警戒感が強い
地域別に先行きの変化幅をみると、北海道で▲9ポイントと大幅な悪化を見込み、次いで北陸、関東甲信越が▲7ポイント、東北、近畿、四国が▲6ポイント、東海、中国が▲5ポイント、九州・沖縄が▲4ポイントの悪化を見込んでいる。最も悪化幅が大きい北海道では宿泊・飲食サービス(▲28ポイント)、物品賃貸(▲24ポイント)が特に悪化を見込んでいる。北陸では情報通信(▲23ポイント)、建設(▲18ポイント)が特に悪化を見込んでいる。非製造業の先行きは、人手不足、物価高、実質賃金の低下など下振れリスクが残っていることから、警戒感が強い状況が続いている。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年01月11日「経済・金融フラッシュ」)
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