2023年12月27日

宿泊旅行統計調査2023年11月~延べ宿泊者数は3ヵ月連続でコロナ禍前の水準を上回る~

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1.外国人を中心に延べ宿泊者数は堅調に推移

観光庁が12月26日に発表した宿泊旅行統計調査によると、2023年11月の延べ宿泊者数は5,356万人泊(10月:5,378万人泊)となった。前年同月比は16.9%(10月:同22.0%)、新型コロナウイルスの影響が出る前の2019年同月比でみると、7.9%(10月:同7.4%)と、3ヵ月連続でコロナ禍前の水準を上回った。

2023年11月の日本人延べ宿泊者数は4,196万人泊(10月:4,152万人泊)となり、前年同月比は▲0.1%(10月:▲1.1%)と2ヵ月連続でマイナスとなったが、2019年同月比は3.4%(10月:同4.3%)とコロナ禍前の水準を上回った。

2023年11月の外国人延べ宿泊者数は1,160万人泊(10月:1,226万人泊)となり、2019年同月比は28.0%(10月:同19.5%)と5ヵ月連続でコロナ禍前の水準を上回った。

2023年11月の客室稼働率は全体で61.0%(10月:同62.0%)、2019年同月差▲4.6%(10月:同▲1.6%)と、マイナス幅が拡大した。延べ宿泊者数はコロナ禍前を回復したが、客室稼働率は依然としてコロナ禍前の水準を下回っている。

宿泊施設タイプ別客室稼働率をみると、旅館は41.8%、2019年同月差▲0.1%(10月:同1.3%)、リゾートホテルは55.9%、2019年同月差▲1.6%(10月:同▲0.3%)、ビジネスホテルは76.0%、2019年同月差▲3.9%(10月:同▲2.8%)、シティホテルは76.2%、2019年同月差▲6.3%(10月:同▲5.6%)、簡易宿所は26.1%、2019年同月差▲8.2%(10月:同▲7.0%)であった。旅館は2019年同月差がマイナスに転じ、それ以外のタイプの宿泊施設ではマイナス幅が拡大した。
延べ宿泊者数の推移(2019年同月比)/別客室稼働率の推移

2.日本人延べ宿泊者数はコロナ禍前と同程度の水準で推移する見通し

全国旅行支援を終了する自治体が増え、現時点(12月26日)で2024年1月以降も旅行支援を実施する自治体は三重県(平日ゆったりみえ旅キャンペーン1)と京都府(きょうと魅力再発見旅プロジェクト2)のみとなった。

全国旅行支援の需要喚起効果が剥落し、日本人延べ宿泊者数は前年比で2ヵ月連続のマイナスとなっている。日本人延べ宿泊者数の先行きは、コロナ禍根で抑えられた旅行需要が残存しているためコロナ禍前と比較して大きく落ち込む可能性は低いが、人件費高騰や物価高などによるホテル代高騰が向かい風となり、コロナ禍前と同程度で推移を続けるだろう。
 
1 三重県内に平日宿泊する人に対してクーポンを配布
2 京都府内に旅行する人に対して旅行費補助とクーポン配布

3.外国人延べ宿泊者数は引き続き増加する見通し

外国人宿泊者数のうち、国別が分かる従業者数10人以上の施設でみると、2023年11月の中国人延べ宿泊者数は2019年比▲48.6%(10月:同▲48.6%)と、香港(同9.6%)、台湾(同24.5%)、アメリカ(同61.5%)など他の国・地域と比較すると回復が遅い状況が続いている。中国では東京電力の処理水放出によって反日感情が高まったため日本への旅行を中止する動きや、日中間の航空便数の回復が遅れていることなどから回復スピードが鈍化したままとなっている。

一方、外国人延べ宿泊者数(従業者数10人以上の施設)の2019年比は2023年11月に全体が20.9%(10月:同13.5%)と3ヵ月連続のプラスとなり、中国を除いた全体が同47.7%(10月:同35.7%)と7ヵ月連続でコロナ禍前の水準を上回った。中国人延べ宿泊者数はコロナ禍前の半分程度の水準だが、中国以外の国からの宿泊者数はコロナ禍前を大幅に上回っている。

中国人宿泊者数の回復にはまだ時間がかかる公算が大きいが、コロナ禍前に比べて為替レートが依然として円安の水準にあることが追い風となって、今後も外国人宿泊者数は増加を続けるだろう。
国籍別外国人宿泊者数/中国を除いた外国人宿泊者数
 
 

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経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2021年4月  日本生命保険相互会社入社
     2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

(2023年12月27日「経済・金融フラッシュ」)

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