2023年12月12日

企業物価指数2023年11月~国内企業物価指数の前年比上昇率は11ヵ月連続で縮小、先行きはマイナスへ~

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1.国内企業物価指数(前年比)の伸びは2ヵ月連続で0%台

企業物価指数の推移 日本銀行が12月12日に発表した企業物価指数によると、2023年11月の国内企業物価の前年比は0.3%(10月:同0.9%)と11ヵ月連続で伸びが鈍化し、2ヵ月連続で0%台の伸びとなった。

内訳をみると23類別中、18類別が上昇し、5類別が低下した。石油・石炭製品は前年比3.5%(10月:0.5%)と伸びを高めた一方、飲食料品は前年比4.0%(10月:同5.0%)と伸びが鈍化し、電力・都市ガス・水道は政府による電気・ガス価格激変緩和対策により同▲24.5%(10月:同▲19.7%)と5ヵ月連続でマイナスとなった。
国内企業物価の前月比は11月に0.2%(10月:同▲0.3%)と3ヵ月ぶりにプラスに転じた。内訳をみると23類別中、6類別が上昇、8類別が横ばい、9類別が低下となった。電力・都市ガス・水道は前月比▲0.4%(10月:同0.7%)と2ヵ月ぶりにマイナスに転じたが、石油・石炭製品が同3.1%(10月:同▲5.4%)、非鉄金属が同1.4%(10月:同▲0.7%)とそれぞれプラスに転じたことが全体を押し上げた。
国内企業物価指数の推移/国内企業物価指数の前月比寄与度分解
現在、電気、ガス、ガソリンへの負担軽減策が実施されている。ガソリン、軽油、灯油、重油、航空機燃料を対象とした燃料油価格激変緩和措置は、2022年1月から実施されてきた。現在は、168円から17円を超える分については全額支援し、17円以下の部分は60%支援される。燃料油価格激変緩和措置は2024年4月末まで実施される予定である。

足もとのガソリン価格は、補助金がなければ1リットル当たり190円台となっており、政府が目標としている175円程度にはまだ距離がある。2024年4月末までとなっている激変緩和策は5月以降も継続される公算が大きい。

電気・都市ガス料金の負担軽減策は2023年2月から実施されてきた。補助額は、2023年9月使用分(10月請求分)から、都市ガスが1㎥あたり30円から15円へ、電気が低圧は1kWhあたり7円から3.5円へ、高圧は1kWhあたり3.5円から1.8円へ引き下げられている。負担軽減策は2024年4月使用分までは現在の補助額で実施され、5月は緩和の幅を縮小して実施される。

2.原油価格の上昇で輸入物価(契約通貨ベース)の前月比はプラスが続く

輸入物価指数変化率の寄与度分解(契約通貨ベース) 2023年11月の輸入物価は、契約通貨ベースでは前月比0.7%(10月:同1.4%)と3ヵ月連続でプラスとなった。内訳をみると、10類別中4類別で上昇、4類別で横ばい、2類別で低下となった。石油・石炭・天然ガスは前月比2.4%(10月:同2.9%)と3ヵ月連続でプラスとなり、全体を押し上げた。

2023年11月の円相場(対ドル)は前月比0.2%で、輸入物価は円ベースで同1.0%(10月:同2.5%)と4ヵ月連続のプラスとなった。円ベースの前年比は▲6.1%(10月:▲11.9%)と8ヵ月連続でマイナスとなった。

3.国内企業物価指数の前年比上昇率はマイナスへ

国内企業物価指数の前年比寄与度分解 国内企業物価の前月比は3ヵ月ぶりにプラスに転じ、輸入物価(契約通貨ベース)の前月比は3ヵ月連続でプラスとなった。物価上昇圧力が再び高まるリスクは残存している。しかし、国内企業物価指数の前年比上昇率は、政府の燃料油価格激変緩和措置や電気・都市ガス料金の負担軽減策に加え、前年の高い伸びの裏がでることもあり、先行きはマイナスとなるだろう。
 
 

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経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2021年4月  日本生命保険相互会社入社
     2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

(2023年12月12日「経済・金融フラッシュ」)

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