2023年12月01日

宿泊旅行統計調査2023年10月~延べ宿泊者数は2ヵ月連続でコロナ禍前を上回る~

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1.延べ宿泊者数は2ヵ月連続でコロナ禍前の水準を上回る

観光庁が11月30日に発表した宿泊旅行統計調査によると、2023年10月の延べ宿泊者数は5,314万人泊(9月:5,032万人泊)となった。前年同月比は20.6%(9月:同27.9%)、新型コロナウイルスの影響が出る前の2019年同月比でみると、6.2%(9月:同3.2%)と、2ヵ月連続でコロナ禍前の水準を上回った。

2023年10月の日本人延べ宿泊者数は4,133万人泊(9月:4,050万人泊)となり、前年同月比は▲1.5%(9月:5.1%)とマイナスに転じたが、2019年同月比は3.9%(9月:同0.0%)とコロナ禍前の水準を上回った。

2023年10月の外国人延べ宿泊者数は1,180万人泊(9月:982万人泊)となり、2019年同月比は15.0%(9月:同18.9%)と伸びが鈍化したものの、4ヵ月連続でコロナ禍前の水準を上回った。水際対策はすでに撤廃され、外国人宿泊者数は今後もコロナ禍前の水準を上回ることが予想される。

2023年10月の客室稼働率は全体で61.8%(9月:同60.0%)、2019年同月差▲1.8%(9月:同▲3.4%)と、マイナス幅が縮小した。延べ宿泊者数はコロナ禍前を回復したが、客室稼働率は依然としてコロナ禍前の水準を下回っている。
延べ宿泊者数の推移(2019年同月比)/客室稼働率の推移
宿泊施設タイプ別客室稼働率をみると、旅館は40.2%、2019年同月差0.7%(9月:同▲1.6%)、リゾートホテルは58.1%、2019年同月差0.3%(9月:同▲6.2%)、ビジネスホテルは74.6%、2019年同月差▲2.7%(9月:同▲3.4%)、シティホテルは74.7%、2019年同月差▲5.9%(9月:同▲8.5%)、簡易宿所は25.0%、2019年同月差▲7.7%(9月:同▲9.8%)であった。旅館、リゾートホテルは2019年同月差がプラスに転じ、それ以外のタイプの宿泊施設ではマイナス幅が縮小した。

2.物価上昇の向かい風を受けても、日本人旅行者数は堅調に推移

12月以降に全国旅行支援を実施する自治体 日本人延べ宿泊者数は全国旅行支援(宿泊料金の割引、クーポンの配布)が開始された2022年10月以降、堅調に推移している。

現時点(11月30日)で、8自治体が12月以降も、全国旅行支援を実施する。そのうちの多くでは、貸切バスを利用した団体旅行のみが対象となっており、個人旅行は除外されている。さらにホテル代高騰など物価高が向かい風となり、日本人延べ宿泊者数が減少する可能性がある。しかし、滋賀県や京都府などでは全国旅行支援を再開することを発表している。加えて、コロナ禍で抑えられた旅行需要が残存しているため、日本人延べ宿泊者数がコロナ禍前と比較して大きく落ち込む可能性は低いだろう。

3.外国人旅行者数はコロナ禍前を上回る状況が続く

外国人宿泊者数のうち、国別が分かる従業者数10人以上の施設でみると、2023年10月の中国人延べ宿泊者数は2019年比▲49.6%(9月:同▲48.3%)とマイナス幅が拡大した。香港(同▲3.9%)、台湾(同11.5%)、アメリカ(同56.8%)など他の国・地域と比較すると回復が遅い状況が続いている。東京電力の処理水放出によって中国の反日感情が高まり、日本への旅行を中止する動きによって回復スピードが鈍化したままとなっている。

一方、外国人延べ宿泊者数(従業者数10人以上の施設)の2019年比は2023年10月に全体が8.5%(9月:同8.8%)と2ヵ月連続のプラスとなり、中国を除いた全体が同29.3%(9月:同36.0%)と前月から伸びは鈍化したものの6ヵ月連続でコロナ禍前の水準を上回った。中国人延べ宿泊者数がコロナ禍前の半分程度の水準であるにもかかわらず、外国人延べ宿泊者数はコロナ禍前の水準を大きく上回っている。

中国人宿泊者数の回復にはまだ時間がかかる公算が大きいが、足元の円安が追い風となり、今後も外国人宿泊者数は回復基調を継続するだろう。
国籍別外国人延べ宿泊者数/中国を除いた国籍別外国人延べ宿泊者数
 
 

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経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2021年4月  日本生命保険相互会社入社
     2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

(2023年12月01日「経済・金融フラッシュ」)

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