コラム
2023年09月06日

増える特定技能在留外国人~外国人との共生のため、さらなる整備が必要~

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1. 外国人労働者に注目が集まる

総務省は2023年7月26日に住民基本台帳に基づく人口動態調査(2023年1月1日現在)を公表した。それによると、人口は1973年の調査以降初めて全都道府県で減少し、1億2541万6877人と昨年から51万1025人減少した。

内訳をみると、日本人住民が1億2242万3038人と前年から80万523人減少、外国人住民が299万3839人と前年から28万9498人増加した。日本人住民の人口は、2009年をピークに14年連続で減少している。
日本人の生産年齢人口の構成比推移 日本人住民の生産年齢人口(15~64歳)は7226万2175人で1995年を除くと毎年減少し、構成比も低下傾向にある。生産年齢人口は社会経済の担い手として重要な役割を果たすため、構成比が低下していることは日本にとって無視できない課題である。

生産年齢人口の構成比が低下することは労働力不足に直結する。加えて、足元ではコロナ禍の制限が撤廃されたことで、サービス需要などが活発になり、宿泊飲食業など非製造業における人手不足が顕著になっている。労働力確保の重要性が高まる中で、外国人の受け入れに注目が集まる。

2. 特定技能制度の意義と特徴

こうした情勢を踏まえて、2019年4月に新たな在留資格である「特定技能1号」及び「特定技能2号」が創設された。この在留資格の意義は、中小・小規模事業者をはじめとした深刻化する人手不足に対応するため、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みを構築することである。

特定技能1号とは、特定産業分野(介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の12分野)に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格である。

特定技能1号の在留期間は1年を超えない範囲内で法務大臣が個々の外国人について指定する期間ごとの更新(通算で上限5年まで)となっている。技能水準及び日本語能力水準は試験等で確認され1、家族の帯同は認められておらず、受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象となっている。

特定技能2号とは、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格である。特定技能2号に該当する業種は、「建設」、「造船・舶用工業」の2業種のみだったが、2023年6月9日に特定技能1号を取得できる業種のうち介護を除く211業種で特定技能2号を取得できるように方針の一部が変更されることが発表された。

特定技能2号の在留期間は3年、1年又は6か月ごとの更新となっており、技能水準については試験等で確認されるが、日本語能力水準は試験等での確認がない。また要件を満たせば家族(配偶者、子)の帯同が可能で、受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象外となっている。
特定技能のポイント
 
1 技能実習2号を修了した外国人は技能水準及び日本語能力水準の試験が免除される
2 介護分野については、現行の専門的・技術的分野の在留資格「介護」があることから、特定技能2号の対象分野となっていない

3. 特定技能制度の運用状況

特定技能在留外国人は制度設立以降、増加を続けている。2023年5月末現在で、特定技能1号在留外国人数は167,313人となっており、その内訳は介護が21,152人、ビルクリーニングが2,653人、製造3分野(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)が34,735人、建設が17,404人、造船・舶用工業が6,123人、自動車整備が2,183人、航空が323人、宿泊が265人、農業が20,274人、漁業が2,086人、飲食料品製造業が51,915人、外食業が8,200人となっている。特定技能2号在留外国人数は11人で、全て建築分野である。

都道府県別特定技能在留外国人数をみると、2023年3月末現在で、愛知県が13,387人と最も多く、全体の8.6%が在留している。次いで、大阪府が9,367人(構成比:6.0%)、埼玉県が8,860人(同:5.7%)、千葉県が8,745人(同:5.6%)となっている。一方、秋田県は237人と最も少なく、全体の0.2%を占めており、次いで鳥取県が438人(同:0.3%)、島根県が480人(同:0.3%)となっている。

政府は特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針の中で、特定技能制度について、人材が不足している地域の状況に配慮し、特定技能の在留資格をもって本邦に在留する外国人が大都市圏その他の特定地域に集中して就労することにならないようにするために必要な措置を講じるように努めるとの方針を示している。しかし、実際には三大都市圏や北海道、広島県、福岡県など特定地域に特定技能在留外国人は集中している。
特定技能1号在留外国人数(2023年5月末現在)/都道府県別特定技能在留外国人数
全体として特定技能在留外国人数は増えているものの、産業別にみるとばらつきが大きい。特定産業分野ごとの受入れ見込み数をみると、介護は50,900人、ビルクリーニングは20,000人、製造3分野(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)は49,750人、建設は34,000人、造船・舶用工業は11,000人、自動車整備は6,500人、航空は1,300人、宿泊は11,200人、農業は36,500人、漁業は6,300人、飲食料品製造業は87,200人、外食業は30,500人となっている。
特定産業分野別特定技能在留外国人数 この受入れ見込み数は当該分野における人手不足が深刻であり、当該分野の存続・発展のために外国人受入れが必要であることを有効求人倍率、雇用動向調査その他の公的統計又は業界団体を通じた所属企業への調査等の客観的な指標等を用いて、特定産業分野を所管する関係行政機関が決定している。

2023年5月末現在の特定技能在留外国人数から、受入れ見込み数の達成率を計算すると、製造3分野(素形材・産業機械・電気・電子情報関連製造業)が68.9%と最も高い。次いで、飲食料品製造業が59.5%、造船・舶用工業が55.7%、農業が55.5%、建設が51.2%となっている。一方、外食業は26.9%、航空は24.8%、ビルクリーニングは13.3%と低く、宿泊は2.4%と極めて低い。

4. まとめ

特定技能在留外国人数が増加し続けるなかで、政府は在留外国人との共生社会の実現を目指して「外国人材受入れ・共生のための総合的対応策」を2023年6月9日に発表した。その中で、外国人のための日本語教育等の取組や情報発信の強化、外国人への支援を実施することにより、共生社会を目指す方針が示されているが、特定技能在留外国人の偏在や、受入れ見込み数の達成率の相違など特定技能制度における改善点は多い。

特定技能在留外国人が特定地域に偏在しないようにするためには、都道府県ごとの必要生活費を周知し、地方で生活する金銭的メリットをアピールするなど、積極的な誘致が必要だろう。

受入れ見込み数の外国人を雇用するためには、人材が不足する分野における賃上げなど、雇用環境のさらなる整備が求められる。

特定技能2号在留外国人は2023年5月末現在で11名と少ないが、特定技能2号は、在留期間に上限がなく、家族の帯同も認められるため、特定技能1号より魅力的であり、取得を希望する外国人労働者は少なくないだろう。特定技能2号の方針変更に加えて、政府が技能実習を廃止し、特定技能へ移行することを検討していることなどから、特定技能在留外国人は、1号、2号ともに今後も増加していくことが予想される。日本語教育を始めとした受け入れ態勢のさらなる充実や適正な労働環境の確保などが課題である。
 
 

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経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

(2023年09月06日「研究員の眼」)

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