- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 労働市場 >
- 将来人口推計に基づく2070年の外国人労働者依存度について-産業別の推計
将来人口推計に基づく2070年の外国人労働者依存度について-産業別の推計

総合政策研究部 准主任研究員 鈴木 智也
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1――総人口に占める外国人比率は2070年に 10.8%まで拡大
今回の人口推計における最大の特徴と言えるのが「外国人の入国超過数」の増加である。推計では、2070年に総人口は8,700 万人と2020年国勢調査による1億 2,615 万人から▲31.0%減少する見込みである一方、外国人人口は939万人と2020年同調査による275万から+2.4倍に増加する見込みとされた。これは、入国超過数が高水準にあった直近の状況が、維持されるとの仮定に基づいている。具体的には、コロナ禍の影響が大きかった2020年を除く、2016年から2019年までの実績値から入国超過数の平均を求め、その水準の入国超過数が今後も続くとの想定を置いている。これは、外国人の入国超過数が、前回2017年推計との比較で約+2.4倍に増える計算であり、毎年16.4万人ずつ増えるとされる。
日本人人口は、少子高齢化と人口減少により減少が続くと見込まれる一方、外国人人口は増加が続くとの見込みであり、総人口に占める外国人比率は、2070年に10.8%(2023年1月1日時点:2.3%1)まで上昇する。
1 総務省統計局「令和5年6月報」(2023年1月確定値)
2――労働者に占める外国人比率は2070年に 12.3%まで拡大
これは、産業全体が2050年頃には、現在のコンビニと同程度の依存度(2020年時点の外国人従業員比率:9.0%3)に上昇することを意味する。とりわけサービス業では、3人に1人が外国人となるなど、もはや外国人抜きには産業が立ち行かない状況が生じると見込まれる。
2 サービス業(他に分類されないもの)には、ビルメンテナンス業、自動車整備業、警備業などが含まれる。
3 一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会「新たな外国人材受入れに係るコンビエンスストア業界の考え方」
(2020年6月11日)
3――人口減少社会を乗り越える、日本の選択肢
ただ、これだけ外国人が増えると、様々な面で課題が生じると思われる。例えば、外国人子女の教育問題や金融包摂の問題、日本の雇用慣行の問題など。社会の法制度や企業の商習慣など、多くのことを大きく変えていくことが必要になる。
また、今回の推計では、外国人が毎年16.4万人ずつ増えていくとの前提が置かれているが、世界的に高齢化が進む中で、外国人材をめぐる獲得競争は、激しくなっていくことが予想される。外国人に日本を選んでもらうためには、今から準備を進めていくことが欠かせない。そろそろ現実的な外国人政策が、本気で必要になって来たと言える。
なお、これとは逆に、外国人への依存度を極力下げる方向に舵を切るのであれば、日本は相当大きな構造転換を覚悟しなければならない。少子化対策に今から振り切ったとしても、働き手が実際に増えるのは20年近く先の話であり、その間の生産年齢人口の減少は、毎年平均▲72.3万人という計算になる。これは、人口規模で全国第44位の徳島県に匹敵する規模であり、この規模の働き手が毎年消滅していくことを意味する。個人の働き方、企業のビジネスモデル、社会の規範制度など、様々なものを大きく変えていく必要がある。
将来の在り方は、国民の総意に基づいて決められるべきものである。日本の将来像をどう描くのか。議論を始めるだけでなく方向性を決めて、実際に動くところまで求められていると言えよう。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年07月12日「研究員の眼」)

03-3512-1790
- 【職歴】
2011年 日本生命保険相互会社入社
2017年 日本経済研究センター派遣
2018年 ニッセイ基礎研究所へ
2021年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
鈴木 智也のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/10 | 日米交渉、為替条項はどうなる?-トランプ1.0の宿題 | 鈴木 智也 | 研究員の眼 |
2025/04/08 | トランプ政権の時間軸-世界や米国の有権者はいつまで我慢できるのか | 鈴木 智也 | 研究員の眼 |
2025/01/09 | 揺れ動いた原子力政策-国民意識から薄れていた「E」の復活 | 鈴木 智也 | 基礎研マンスリー |
2024/12/17 | 第2次トランプ政権との対峙-為替で見方が変わる交渉材料 | 鈴木 智也 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年05月01日
ユーロ圏GDP(2025年1-3月期)-前期比0.4%に加速 -
2025年04月30日
2025年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測~ -
2025年04月30日
「スター・ウォーズ」ファン同士をつなぐ“SWAG”とは-今日もまたエンタメの話でも。(第5話) -
2025年04月30日
米中摩擦に対し、持久戦に備える中国-トランプ関税の打撃に耐えるため、多方面にわたり対策を強化 -
2025年04月30日
米国個人年金販売額は2024年も過去最高を更新-トランプ関税政策で今後の動向は不透明に-
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【将来人口推計に基づく2070年の外国人労働者依存度について-産業別の推計】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
将来人口推計に基づく2070年の外国人労働者依存度について-産業別の推計のレポート Topへ