2019年01月23日

外国人労働者との共生、優先課題は?-高齢者活躍で日本語教育の強化を

総合政策研究部 准主任研究員 鈴木 智也

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■要旨

2018年12月、新たな在留資格の創設を盛り込んだ改正入国管理法が成立した。2019年4月の同法施行により、今後5年間に最大34.5万人の新たな外国人材の受入れが想定されている。

外国人労働者の受入れで懸念されるのは、地域社会との間に生じる摩擦の問題である。外国人は、言語、宗教、慣習等の違いから生活上の問題を抱える場合が少なくない。外国人を孤立させることなく社会の一員として受入れる環境を整えることは、まさに喫緊の課題である。その中で、外国人の日本語能力の底上げは特に重要だ。今般の法改正では、日本語能力試験でN4程度(5段階中下から2番目)と必ずしも高度な水準を要求されている訳ではないものの、相互理解のためには円滑なコミュニケーションが必要であり、共通の言語は欠かせないものとなる。従って、外国人への日本語教育は、共生社会実現の最優先課題であると言えるだろう。

一方で、外国人労働者を受け入れる国内の日本語教育環境は、十分とは言い難い。日本語教育の質にばらつきがあるうえ、地域によっては日本語教室が開設されていないところも多い。また、日本語教師の確保にも課題がある。在留外国人が増加する一方で日本語教育人材は増えておらず、国内39,558人いる日本語教師の約6割は無報酬のボランティア頼みといった状況だ。新たな在留資格が創設されるのを前に、日本語教育の体制整備は待ったなしの課題である。

不足する日本語教育人材を如何に確保していくか。働き方改革実現では「高齢者の就業促進」が検討テーマのひとつとして挙げられているが、高齢者は日本語教師としても適材と言えよう。高齢者は日本語能力に優れるだけでなく日本文化への造詣も深く、人生経験も豊富とあって、これほど頼りがいのある人材はいない。

本稿では、日本語教育における高齢者活躍が外国人との共生につながることを示すと共に、高齢者向けのリカレント教育など、必要となる様々な課題について考察したい。

■目次

1――はじめに
2――共生社会の実現に向けて
  1|外国人は増加の見込み
  2|日本語教育の現状
  3|高齢者は日本語教師に最適
3――高齢者と外国人を結びつける取組み
  1|高齢者の意識改革
  2|インセンティブとコスト負担
4――求められるリカレント教育
  1|日本語教師の資格取得
  2|学び直しの支援策
5――おわりに
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総合政策研究部   准主任研究員

鈴木 智也 (すずき ともや)

研究・専門分野
日本経済・金融

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