2023年12月26日

雇用関連統計23年11月-宿泊・飲食サービス業は就業者の大幅増加が続く一方、新規求人数が2年2ヵ月ぶりに減少

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.非自発的離職による失業者の割合が低下

総務省が12月26日に公表した労働力調査によると、23年11月の完全失業率は前月から横ばいの2.5%(QUICK集計・事前予想:2.5%、当社予想も2.5%)となった。

労働力人口が前月から30万人の増加となる中、就業者が前月から26万人増加し、失業者は前月から2万人増の177万人(いずれも季節調整値)となった。失業率は前月と変らず、失業者は若干増加したが、労働市場への参入が進むもとで、就業者が大幅に増加したことは前向きの評価ができる。また、失業者の内訳を求職理由別(季節調整値)にみると、自発的な離職による者(自己都合)の割合が上昇し、雇用契約の満了や事業の都合といった非自発的離職による者の割合が低下しており、失業の深刻度も和らぐ形となっている。ただし、労働力調査は単月の振れが大きい統計であることには留意が必要だ。
完全失業率と就業者の推移
就業者数は前年差56万人増(10月:同16万人増)と16ヵ月連続で増加した。産業別には、卸売・小売業が前年差▲7万人減(10月:同4万人)と7ヵ月ぶりに減少したが、宿泊・飲食サービス業が前年差20万人増(10月:同18万人増)と17ヵ月連続で増加し、製造業が前年差33万人増(10月:同0万人)と4ヵ月ぶり、医療・福祉が前年差22万人増(10月:同▲4万人減)と3ヵ月ぶりに増加した。

雇用者数(役員を除く)は前年に比べ52万人増(10月:同22万人増)と21ヵ月連続で増加し、増加幅は前月から大きく拡大した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差23万人増(10月:▲3万人減)と2ヵ月ぶりに増加、非正規の職員・従業員数が前年差30万人増(10月:同24万人増)と3ヵ月連続で増加した。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数

2.宿泊・飲食サービス業の新規求人数が2年2ヵ月ぶりに減少

厚生労働省が12月26日に公表した一般職業紹介状況によると、23年11月の有効求人倍率は前月から0.02ポイント低下の1.28倍(QUICK集計・事前予想:1.30倍、当社予想も1.30倍)となった。有効求人数が前月比▲1.5%の減少となる一方、有効求職者数が同0.2%の増加となった。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.02ポイント上昇の2.26倍となった。新規求人数が前月比▲0.6%の減少となったが、新規求職申込件数の減少幅(同▲1.6%)がそれを上回ったことが求人倍率を押し上げた。

新規求人数は前年比▲4.8%(10月:同▲1.8%)と3ヵ月連続で減少した。産業別には、製造業(同▲10.5%)、建設業(同▲7.3%)が10ヵ月連続、卸売・小売業(同▲6.5%)、生活関連サービス・娯楽業(同▲12.5%)が6ヵ月連続で減少したことに加え、大幅な増加が続いてきた宿泊・飲食サービス業が前年比▲12.8%と2年2ヵ月ぶりに減少した。
有効求人倍率の推移/産業別新規求人数
23年11月は労働力調査が良好な内容となる一方、一般職業紹介は企業の求人意欲の陰りを示すものとなった。特に、宿泊・飲食サービス業は就業者の大幅増加が続く一方、新規求人数が減少に転じており、両者の動きが大きく乖離した。新規求人数の減少は、前年の伸びが高かった(22年11月:前年比21.2%)反動もあるが、同業種は人手不足感が非常に強いこと、就業者の大幅増加が続いていることを考慮すると、やや違和感がある。なんらかの特殊要因の可能性も考えられるため、来月以降の動きを確認する必要がある。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2023年12月26日「経済・金融フラッシュ」)

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