2023年12月20日

貿易統計23年11月-輸出入ともに弱い動き

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.輸出が3ヵ月ぶりに減少

財務省が12月20日に公表した貿易統計によると、23年11月の貿易収支は▲7,769億円の赤字となり、事前の市場予想(QUICK集計:▲9,900億円、当社予想は▲10,387億円)を上回る結果となった。輸出が前年比▲0.2%(10月:同1.6%)と3ヵ月ぶりに減少したが、輸入が前年比▲11.9%(10月:同▲12.5%)と7ヵ月連続で前年比二桁の大幅減少となったため、貿易収支は前年に比べ12,807億円の改善となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲5.6%(10月:同▲3.4%)、輸出価格が前年比5.7%(10月:同5.2%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲3.5%(10月:同▲3.2%)、輸入価格が前年比▲8.7%(10月:同▲9.6%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は▲4,089億円と30ヵ月連続の赤字となったが、10月の▲5,013億円から赤字幅が縮小した。輸出が前月比▲1.8%の減少となったが、輸入の減少幅(同▲2.7%)がそれを上回った。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 23年11月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=94.0ドル(当研究所による試算値)と、10月の92.9ドルから上昇した。足もとの原油価格(ドバイ)は70ドル台後半まで下落しており、長期契約で販売する際に指標価格に上乗せされる調整金、船賃、保険料などを含めた通関ベースの原油価格は、12月に80ドル台まで低下することが見込まれる。

当面は、原油価格の下落や円安の一巡に伴う輸入価格の低下が貿易赤字の縮小要因となるだろう。

2.輸出入ともに弱い動き

23年11月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比3.4%(10月:同8.8%)、EU向けが前年比▲11.8%(10月:同0.4%)、アジア向けが前年比▲7.5%(10月:同▲7.7%)、うち中国向けが前年比▲9.9%(10月:同▲9.4%)となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 23年11月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比▲4.2%(10月:同0.8%)、EU向けが前月比▲6.3%(10月:同0.4%)、アジア向けが前月比▲1.5%(10月:同▲4.0%)、うち中国向けが前月比▲1.4%(10月:同▲0.1%)、全体では前月比▲4.8%(10月:同▲2.2%)となった。

23年10、11月の平均を23年7-9月期と比較すると、米国向けが▲2.2%、EU向けが▲3.8%、アジア向けが▲2.2%、中国向けが▲0.2%低くなっている(全体は▲3.0%低い)。

EU向け、アジア向けは23年夏場以降低迷が続いており、7-9月期まで堅調だった米国向けも、米国経済の減速を反映し、このところ弱い動きとなっている。

一方、23年11月の輸入数量指数は前月比▲2.0%(10月:同▲1.7%)となり、10、11月の平均は7-9月期を▲1.0%下回っている。

輸出は海外経済の減速、輸入は国内需要の停滞を背景に、このところ弱い動きとなっている。累積的な金融引き締めの影響で景気が減速している欧米向けを中心に、輸出は当面弱い動きが続くことが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2023年12月20日「経済・金融フラッシュ」)

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