2024年03月21日

米住宅着工・許可件数(24年2月)-着工件数は前月から大幅な増加に転じ、市場予想も上回る

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:住宅着工、許可件数ともに市場予想を上回る

3月19日、米国センサス局は2月の住宅着工、許可件数を発表した。住宅着工件数(季節調整済、年率)は152.1万件(前月改定値:137.4万件)と133.1万件から上方修正された前月、市場予想の144.0万件(Bloomberg集計の中央値)を大幅に上回った(図表1、図表3)。

着工許可件数(季節調整済、年率)は151.8万件(前月改定値:148.9万件)と147.0万件から小幅上方修正された前月、市場予想の149.6万件を上回った(図表2、図表5)。
(図表1)住宅着工件数/(図表2)住宅着工許可件数

2.結果の評価:前月の反動もあって、着工、許可件数ともに戸建ておよび集合住宅が増加

住宅着工件数の伸びは前月比+10.7%(前月:▲12.3%)と2桁の落ち込みとなった反動もあって、23年5月以来の2桁の伸びとなった(図表3)。戸建てが+11.6%(前月:▲4.9%)、集合住宅が+8.3%(前月:▲27.9%)といずれも前月からプラスに転じた(図表4)。

前年同月比は+5.9%(前月:+2.5%)と4ヵ月連続でプラスを維持した。内訳をみると、集合住宅が▲34.8%(前月:▲30.0%)と2ヵ月連続で2桁のマイナスとなったものの、戸建てが+35.2%(前月:+23.0%)と8ヵ月連続でプラスを維持したほか、2桁のプラスとなって全体を押し上げた。

地域別寄与度(前月比)は、北東部が▲1.0%ポイント(前月:+0.5%ポイント)と前月からマイナスに転じたほか、西部が▲2.0%ポイント(前月:▲2.7%ポイント)と2ヵ月連続のマイナスとなった。一方、中西部が+4.9%ポイント(前月:▲4.5%ポイント)、南部が+8.7%ポイント(前月:▲5.6%ポイント)と前月からプラスに転じて全体を押し上げた。
(図表3)住宅着工件数(伸び率)/(図表4)住宅着工件数前月比(寄与度)
先行指標である住宅着工許可件数は、前月比が+1.9%(前月:▲0.3%)と着工件数同様、前月からプラスに転じた(図表5)。戸建てが+1.0%(前月:+2.2%)と13ヵ月連続のプラスと回復が持続したほか、集合住宅が+4.1%(前月:▲5.3%)と前月からプラスに転じた(図表6)。

前年同月比は+2.4%(前月:+10.0%)と4ヵ月連続のプラスとなった。集合住宅が▲29.0%(前月:▲22.8%)と12ヵ月連続で2桁のマイナスとなった一方、戸建てが+29.5%(前月:+36.5%)と8ヵ月連続でプラスとなったほか、2桁の大幅な伸びとなって全体を押し上げた。
(図表5)住宅着工許可件数(伸び率)/(図表6)住宅着工許可件数前月比(寄与度)
(図表7)住宅市場指数(項目別) 一方、全米建設業協会(NAHB)による戸建て新築住宅販売のセンチメントを示す住宅市場指数は、3月が51(前月:48)と4ヵ月連続で上昇し、23年7月以来の50を上回ったほか、前月から横這いを見込んだ市場予想(48)も上回った(図表7)。

内訳は販売現況が56(前月:52)、販売見込みが62(前月:60)、客足が34(前月:32)とそれぞれ前月から改善した。

NAHB会長のカール・ハリス氏は「購入者の需要は引き続き旺盛で、もし今年後半に住宅ローン金利が下がり続ければ、より多くの消費者が傍観者から市場に飛び込むだろう」と住宅ローン金利の低下が住宅需要を押し上げることを指摘する一方、「根強い需要がある一方で、建築業者は、建築可能な敷地や熟練労働者の不足、住宅建設コストを上昇させ続ける新たな制限規定など、供給側のいくつかの課題に引き続き直面している」と述べて住宅供給の課題を指摘した。このため、今後見込まれる住宅ローン金利の低下に伴い住宅市場は回復が見込まれるものの、住宅供給の問題から本格的な回復はほど遠いとみられる。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2024年03月21日「経済・金融フラッシュ」)

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