2024年03月11日

米国経済の見通し-予測期間において景気後退は回避を予想

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
 
  1. 米国の23年10-12月期の実質GDP成長率(前期比年率)は+3.2%(前期:+4.9%)と前期から低下も個人消費主導で堅調な伸びを維持。
     
  2. 堅調な雇用増加に伴う可処分所得の増加が個人消費を下支え。もっとも、可処分所得の伸びが鈍化していることに加え、過剰貯蓄が枯渇したほか、自動車ローンやクレジットカードの延滞率が増加するなど堅調な個人消費を維持できるか今後に不透明感。
     
  3. 一方、前年同月比でみたインフレ率の低下基調が持続する中、年初にはFRBによる早期利下げ観測が強まったものの、中銀関係者からの早期利下げ牽制発言や1月のインフレ率が市場予想を上振れて下げ止まりを示したことから早期の利下げ観測は後退。
     
  4. 米国経済はこれまでの累積的な金融引締めの影響から労働市場や個人消費の減速を背景に24年半ばにかけて景気減速を予想。その後はインフレが緩やかに低下する中、FRBが金融緩和に転じることもあって、25年にかけて緩やかな景気回復を見込む。成長率(前年比)は24年が+2.3%、25年が+1.6%成長を予想。24年の成長率が前回見通し(+1.5%)から大幅に上方修正された要因は、主に23年10-12月期の高成長に伴うプラスのゲタの影響が大きい。
     
  5. 金融政策は、FRBがインフレ率の動向を慎重に見極めた後、24年6月に利下げを開始し、24年は3回、25年は4回の利下げを予想。
     
  6. 上記見通しのリスクは、インフレ高進による政策金利の上振れに加え、24年の大統領選挙も睨んだ米国内政治の機能不全やトランプ氏再選に伴う政策の予見可能性の低下。

 
(図表1)米国の実質GDP成長率(寄与度)
■目次

1.経済概況・見通し
  (経済概況)10‐12月期の成長率は前期から低下も個人消費主導で堅調を維持
  (経済見通し)成長率は24年が+2.3%、25年が+1.6%を予想
2.実体経済の動向
  (労働市場、個人消費)労働市場、個人消費は緩やかに減速の予想
  (設備投資)緩やかな回復基調が持続
  (住宅投資)足元堅調も本格的な回復には程遠い
  (政府支出、債務残高)25年度以降の財政運営は流動的
  (貿易)堅調な米経済を背景に外需の成長率寄与度は低下へ
3.物価・金融政策・長期金利の動向
  (物価)コア、総合指数ともにインフレ率は緩やかに低下へ
  (金融政策)24年6月利下げ開始、年3回の利下げを予想
  (長期金利)24年10-12月期平均が3.9%、25年10-12月期がド3.4%への低下を予想
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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