2024年03月01日

米個人所得・消費支出(24年1月)-PCE価格指数(前月比)は総合指数、コア指数ともに前月を上回る一方、市場予想に一致

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得(前月比)は市場予想を上回る一方、個人消費は市場予想に一致

2月29日、米商務省の経済分析局(BEA)は1月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+1.0%(前月:+0.3%)と前月、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%を上回った(図表1)。個人消費支出は前月比+0.2%(前月:+0.7%)と前月を下回った一方、市場予想の+0.2%に一致した。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は▲0.1%(前月改定値:+0.6%)と+0.5%から小幅上方修正された前月から5ヵ月ぶりにマイナスに転じた一方、市場予想の▲0.1%には一致した(図表5)。貯蓄率1は3.8%(前月:3.7%)と前月から+0.1%ポイント増加した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.3%(前月改定値:+0.1%)と+0.2%から小幅下方修正された前月を上回った一方、市場予想(+0.3%)に一致した。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.4%(前月改定値:+0.1%)と+0.2%から小幅下方修正された前月を上回った一方、市場予想(+0.4%)に一致した(図表6)。前年同月比は総合指数が+2.4%(前月:+2.6%)と前月を下回った一方、市場予想(+2.6%)に一致した。コア指数は+2.8%(前月:+2.9%)とこちらも前月を下回った一方、市場予想(+2.8%)に一致した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:コアPCE価格指数(前月比)は23年2月以来の伸びに加速

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 個人消費(前月比)の名目ベースは後述するように自動車関連を中心とする財消費の落ち込みから+0.2%と前月の+0.7%から伸びが大きく鈍化した(図表1)。

これに対して、個人所得(前月比)は後述するように1月はインフレを反映した年間生活費調整の伸びを反映して移転所得が+2.6%となったこともあって特殊要因で大幅な伸びとなった。この結果、貯蓄率は3.8%と22年12月以来の水準となった前月の3.7%からは僅かながら増加に転じた。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数は総合指数、物価の基調を示すコア指数ともに前年同月比では低下基調が持続しているものの、依然としてFRBの物価目標である2%を上回っている。さらに、前月比では総合指数、コア指数ともに前月から伸びが加速したほか、とくにコア指数では23年2月以来の伸びに加速するなど足元で物価上昇圧力が燻っていることを確認する結果となった。

3.所得動向:移転所得が特殊要因で大幅に増加

1月の個人所得(前月比)は移転所得が+2.6%(前月:0.1%)と前月から大幅に伸びが加速して所得全体を押し上げた(図表2)。これは1月に社会保障支給に関連してインフレを反映した年間生活費調整が+3.2%増加したことにより、社会保障受取額が増加したことが大きい。一方、利息配当収入が+2.1%(前月比+0.3%)とこちらも前月から大幅に伸びが加速した。これは一部企業が配当を増加させた影響とみられる。その他の所得項目では、賃金給与が+0.4%(前月:+0.5%)と前月から小幅に伸びが鈍化したほか、自営業所得が▲0.2%(前月:▲0.1%)と2ヵ月連続のマイナスとなったほか、前月から小幅ながらマイナス幅が拡大した。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、1月の名目が+0.3%(前月:+0.3%)と前月並みの伸びを維持した(図表3)。一方、価格変動の影響を除いた実質ベース(前月比)は横這い(前月:+0.2%)とこちらは小幅ながら伸びが鈍化した。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:自動車関連が大幅に減少

1月の名目個人消費(前月比)は、サービス消費が+1.0%(前月:+0.7%)と前月から伸びが加速した一方、財消費が▲1.2%(前月:+0.7%)と前月から大幅なマイナスに転じた(図表4)。

財消費は、耐久財が▲1.9%(前月:+1.1%)、非耐久財が▲0.8%(前月:+0.5%)といずれも前月から大幅なマイナスに転じた。

耐久財では、家具・家電が▲0.9%(前月:+0.6%)、娯楽財・スポーツカーが▲0.5%(前月:+0.6%)、自動車・自動車部品が▲4.6%(前月:+1.6%)といずれも前月からマイナスに転じたが、とくに自動車関連の消費の落ち込みが目立った。

非耐久財では食料・飲料が+0.2%(前月:+0.4%)、衣料・靴が横這い(前月:+1.3%)と前月から伸びが鈍化したほか、ガソリン・エネルギーが▲4.6%(前月:+0.4%)と前月から大幅なマイナスに転じて非耐久財消費全体を押し下げた。

サービス消費は、輸送サービスが+0.3%(前月:+1.0%)、娯楽サービスが+0.1%(前月:+1.9%)と前月から伸びが鈍化した。一方、医療サービスが+0.6%(前月:+0.6%)、金融サービスが+2.0%(前月:+1.9%)と前月並みの伸びを維持したほか、住宅・公共料金が+1.2%(前月:+0.3%)、外食・宿泊が+0.8%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速してサービス消費を押し上げた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格は前月比、前年同月ともに物価を押し下げ

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲1.4%(前月:▲0.3%)と4ヵ月連続のマイナスとなったほか、前月からマイナス幅が拡大した(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.5%(前月:+0.1%)と2ヵ月連続でプラスを維持したほか、前月からプラス幅が拡大した。

前年同月比は、エネルギー価格指数が▲4.9%(前月:▲1.7%)と4ヵ月連続のマイナスとなったほか、前月からマイナス幅が拡大した(図表7)。食料品価格指数は+1.5%(前月:+1.4%)と前月並みの伸びとなり、79ヵ月連続でプラスを維持した。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2024年03月01日「経済・金融フラッシュ」)

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