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投資経験の拡がりと今後の意向-経験者は増えるものの課題はリテラシーの向上

井上 智紀
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4――分析結果の総括とインプリケーション
これらの結果が示すように、コロナ禍にあった3年間、投資経験者の裾野は若年層を中心に着実に拡がっており、こうした裾野の拡大には、つみたてNISAの寄与があったことは間違いないように思われる。しかし、投資経験や投資先・制度の利用状況、今後の意向については性別や職業によっても差がある上、つみたてNISAが投資信託を対象とする積立投資の制度であるにもかかわらず、利用率では「つみたてNISA」の方が「株式投信・ETF」を上回っているなど、投資経験の浅い層においては、必ずしも十分な金融リテラシーを有しているとはいえない状況にある可能性もあるのではないだろうか。一方で、5年未満の投資経験者の中には、仮想通貨に投資したり、今後の投資先として関心を持つ者も見受けられる。数年の投資経験を経る中で多様な投資先にも視野が拡がることは避けられないものの、十分な金融リテラシーもないまま、仮想通貨などボラティリティの高い金融商品を投資先とすることは、家計にとって深刻なダメージをもたらすリスクを抱え込むことを意味している。
今回の調査結果では、今後投資を始めることを希望する者は1割程度に留まるものの、賃金の動向など今後の社会経済環境の変化によっては、投資家の裾野のさらなる拡大も見込まれよう。こうした若年層を中心とする新たに投資を始めようとする者にとって、つみたてNISAが有用な受け皿となることは言を俟たないものの、制度の仕組み上、口座開設時やNISA口座内で購入する金融商品を選択する際を除けば、殊更に投資に伴うリスクを意識する必要がなく、金融リテラシーを高める機会も得られない。前述の通り、数年の投資経験を経る中で、多様な商品への投資にも関心を寄せるようになることを前提とすれば、つみたてNISAの枠外にある多様な金融商品・投資先に関する知識を含めて、少しずつでも金融リテラシーを身につけていけるような仕組みも考えておく必要があるのではないだろうか。
(2023年04月27日「基礎研レポート」)
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