2022年12月28日

家計金融資産の状況-世代間の偏在と家計ポートフォリオの差異-

生活研究部 井上 智紀

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■要旨

日本銀行「資金循環」によれば、5年前(2017年度末)の1,848兆円をピークに2019年度にかけて減少傾向にあった家計金融資産は、コロナ禍で経済が停滞する中増加に転じ、2021年度末には2,000兆円を超え、負債を差し引いた差額でみても、2019年度末の1,462兆円から2021年度末には1,632兆円と初めて1,600兆円を超えている。一方で厚生労働省の各種統計からは生活保護の被保護世帯は増加の一途を辿っているほか、相対的貧困率が上昇している可能性も窺える。

家計の金融資産はどのように分布し、どのような金融商品で保有されているのだろうか。本稿では、家計金融資産の偏在の状況および家計ポートフォリオの状況について分析した結果、世代を問わず貯蓄がない世帯が1割程度存在しているものの、依然として家計金融資産の大半が高齢層に集中する状況が続いていること、貯蓄がある世帯の金融資産の振り向け先となる金融商品では、高齢層ほど潤沢な資金を保有するようになるためか、保有率、シェアともに定期預貯金と株式の割合が高まる様がみてとれた。

将来に向けた資産形成という観点からは若年層を中心に、株式や投資信託などのリスク性金融商品への投資を促進していくことは肝要ではあろう。しかし、決済口座である普通預貯金を除くシェアとしてみた場合、すでに株式と投資信託をあわせたシェアは若年層でも3割前後に達していることを踏まえれば、既に投資に振り向けられる余裕資金を捻出できない状況に陥っているようにも思われる。今後予定されているNISAの制度改正や、今後の賃金の動向が生活者の投資の促進につながっていくか、今後も引き続き注視していく必要があろう。

■目次

1――はじめに
2――家計金融資産偏在の状況
3――家計金融資産のポートフォリオ
  1|金融商品の保有状況
  2|商品種類別のポートフォリオ
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生活研究部  

井上 智紀

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