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- 家計金融資産はどこに向かうのか - 金融機関は選択基準の世帯間差異を読み解けるか
既に各処で報道されているとおり、先日公表された金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」によれば、二人以上世帯の世帯あたりの家計金融資産は平均で1,101万円と3年連続で減少し、金融資産を保有しない世帯の割合も前年比5ポイント増の31.0%となった。一方で、単身世帯では、金融資産を保有しない世帯の割合が37.2%と前年比3.4ポイント増加したにも関わらず、金融資産の平均は前年に比べ98万円増加し、798万円となっている。
金融資産全体に占める金融商品種類別の構成比をみると、二人以上世帯では「株式」が8.3%と前年に比べ2.7ポイント増加し、「預貯金」(55.0%)が1.9ポイント減少している。単身世帯でも同様に、「株式」は1.7ポイント増加し、「預貯金」は47.2%と3.3ポイント減少している(図表 1)。
二人以上世帯と単身世帯とを比較すると、二人以上世帯で「預貯金」、「生命保険」の構成比が単身世帯に比べ高く、単身世帯では「個人年金」、「株式」、「投資信託」が高い。特に「株式」では単身世帯で14.4%と二人以上世帯に比べ6.1ポイント高く、「投資信託」を含めれば家計金融資産全体の約2割をリスク性の金融商品に配分しており、単身世帯は金融商品への配分について、より高いリスクをとっているとみることができる。
また、金融商品の選択基準についてみると、二人以上世帯では「安全性」が41.8%でひときわ高く、「流動性」(29.5%)、「収益性」(14.5%)と続くのに対し、単身世帯では「安全性」が最も高いものの、その割合は27.7%であり、「流動性」(24.1%)と、「収益性」(24.0%)が僅差で続いている(図表 2)。それぞれ前年と比較すると、二人以上世帯では「収益性」が2.3ポイント減少しているのに対し、単身世帯では「収益性」が2.0ポイント増加し、「流動性」が4.7ポイント減少しており、世帯類型により、変化の方向が異なっている。
このように、世帯構成によって金融資産の配分やその選択基準、前年からの変化の方向性はそれぞれ異なっている1。両調査とも、属性別などの結果についてはまだ公開されていないため、詳細については改めて分析していく必要はあるが、このような変化の背景には、社会経済環境に対して、消費者が向けている視線の差異があるものと思われる。
大手企業における冬の賞与増加の報道をうけて、さらに所得増への期待が高まる中、金融機関が貯蓄・投資先として消費者に選ばれるためには、このような消費者間の差異を読み解く力も、求められているといえるのではないだろうか。
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- プロフィール
・1995年:財団法人生命保険文化センター 入社
・2003年:筑波大学大学院ビジネス科学研究科経営システム科学専攻修了(経営学)
・2004年:株式会社ニッセイ基礎研究所社会研究部門 入社
・2006年:同 生活研究部門
・2018年より現職
・山梨大学生命環境学部(2012年~)非常勤講師
・高千穂大学商学部(2018年度~)非常勤講師
・相模女子大学(2022年度~)非常勤講師
所属学会等
・日本マーケティング・サイエンス学会
・日本消費者行動研究学会
・日本ダイレクトマーケティング学会
・日本マーケティング学会
・日本保険学会
・生命保険経営学会
・一般社団法人全国労働金庫協会「これからの労働金庫のあり方を考える研究会」委員(2011年)
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