2020年02月21日

生命保険の相場感-保険料・保障額の相場感の形成要因

生活研究部 井上 智紀

文字サイズ

■要旨

本稿では、消費者の保険料や保障額に対する相場感に焦点をあて、相場感を有する消費者の特徴について概観するとともに、こうした相場感を形成する要因を明らかにすることを試みた。

分析の結果、保険料や保障額について相場感があるとする者の割合は、いずれも約3割となっており、女性や高齢層、複数種類の保険契約経験を有する者に比較的多く、保険に関する知識については、自身の保険知識についての主観的評価が高い者ほど多くなっていることが示された。ただし客観的知識と主観的評価のミスマッチ、とりわけ客観的にみて十分な知識がないにも関わらず、自己評価のみが高い層における相場感は、過度な保障の抑制により本来必要であるはずの保障が十分に確保できずリスクに晒されていることも危惧された。

こうした相場感の形成要因については、保険料・保障額ともに各種のマス媒体やウェブ媒体等の情報源との接触を通じて、それぞれ形成されているほか、世代により異なる情報源との接触が寄与しているものや、同じ情報源であっても世代により相場感への影響の方向が異なる様も示された。また、保険に関する取引経験については、「年間支払保険料」について保険料・保障額ともに有意に負の影響が示された。このほか、生命保険に対する知識では、客観的知識については有意な結果が得られず、主観的評価が有意に正の影響があり、係数としても最も大きくなっていた。このことは、保険料や保障額の相場感については、世代により異なる各種の情報源との接触を通じて形成されているものの、必ずしも正確な知識に基づくものではないこと、一方で、相場感を有するようになることは、家計における保険料支出の抑制に向けた動機づけとなっている可能性があることを意味している。

このように、日常生活の中で接する各種の情報源を通じて得た情報が消費者自身の相場感の形成につながっているのであれば、これらの情報源を通じて売り手側から正しい情報を積極的に提供し、より正しい知識を得てもらうために活用していく方法もあろう。ただし消費者とのコミュニケーションにおいて、正しい情報を伝え理解を促すためには、接点となる情報源(媒体)のみならず、情報の内容(コンテンツ)や状況(コンテキスト)まで踏み込んで把握していくことも不可欠といえる。どのようなコンテンツを、どのようなコンテキストの中で発信していくか、筆者自身の今後の研究課題とするとともに、売り手側の創意にも期待したい。

■目次

1――はじめに
2――保険料・保障額の相場感
  1|属性別
  2|保有商品種類数別
  3|保険リテラシー別
3――相場感の形成要因
4――結果とインプリケーション
  1|分析結果の総括
  2|インプリケーション
Xでシェアする Facebookでシェアする
経歴

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【生命保険の相場感-保険料・保障額の相場感の形成要因】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

生命保険の相場感-保険料・保障額の相場感の形成要因のレポート Topへ