2023年04月27日

投資経験の拡がりと今後の意向-経験者は増えるものの課題はリテラシーの向上

生活研究部 井上 智紀

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1――はじめに

金融庁が四半期ごとに公表している「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況に関する調査」をみると、NISA・つみたてNISAの口座数、買付額は順調に伸びており1、年齢別では2020年以降、60歳代以上の高齢層で口座数が減少に転じている一方で20~30歳代は2021年3月末以降、口座数、買付額ともに20~40%の増加を示しているなど、口座数の伸び率こそ鈍化しつつあるものの、若年層においても資産形成に向けた動きが拡がっているように見受けられる〔図表1〕。
図表1 NISA・つみたてNISAの口座数および買付額の推移(前年同期比)
一方、マクロに視点を移してみると、日本銀行「資金循環」における家計金融資産は2022年末には史上初めて2,000兆円を超えている〔図表2〕。過去の推移をみると、コロナ前の2019年から2020年にかけては前年比でマイナスに転じていたものが、2021年には7.9%増と大きく増加に転じている。しかし、種類別の構成比でみると、「株式・投信等」は2015年以降、概ね15%前後の横ばいで推移しており、NISA口座数やNISA口座における投資額の拡大の影響は埋もれてしまっているようにも思われる。
図表2 家計金融資産総額および種類別構成比の推移
実際のところ、NISAやiDeCoなどの制度の導入や、コロナ禍の自粛生活を通じて、投資経験はどのような層にどの程度拡がっているのだろうか。本稿では、弊社が2023年3月末に実施した「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査2」の個票データを用いて、投資経験の状況や今後の意向について尋ねた結果を概観する。
 
1 加入者数の増加はiDeCoでも同様であり、国民年金基金連合会「加入者数等について(令和5年2月時点)」によればiDeCoの加入者は2020年3月からの3年間を通して対前年20%以上(2023年は2月末時点で2022年3月末比19.9%増)の増加となっている。
2 調査概要は以下の通り。調査対象:全国の20~74歳の一般個人(調査会社登録パネル)。調査時期:2023年3月29日~3月31日。有効回答サンプル数:2,558s

2――投資経験の有無と意向

2――投資経験の有無と意向

投資(株式や債券、投資信託、FX、仮想通貨など)の経験についてたずねたところ、全体では「これまでに経験はないし、今後も始めるつもりはない」が48.5%で最も多く、「5年以上」(21.8%)が続く。「これまでに経験はないが、今後始めたい」は15.2%、コロナ禍に入ってから投資を始めた『3年未満』は11.1%と、それぞれ1割に留まる結果となっている〔図表3〕。
図表3 投資経験の有無と意向
属性別にみると、性別では男性で「投資経験あり」が女性に比べ高く、女性で「これまでに経験はないし、今後も始めるつもりはない」が男性に比べ高い〔図表4〕。年代別では『3年未満計』、「これまでに経験はないが、今後始めたい」ともに若年層ほど高い傾向にあり、20代ではいずれも2割を超えている。一方、『投資経験あり』、「5年以上」は高齢層ほど高く、60代以上では「5年以上」が3分の1を占める結果となっている。また、職業別では民間正規、公務員で『投資経験あり』『3年未満計』が高く、パート・アルバイト、専業主婦(夫)・無職では「これまでに経験はないし、今後も始めるつもりはない」が6割弱と高くなっている。
図表4 投資経験の有無と意向(属性別)

3――投資先および利用している制度と今後の利用意向

3――投資先および利用している制度と今後の利用意向

1投資先および利用している制度
投資経験がある者を対象に、現在の投資先および利用している制度について尋ねたところ、全体では「株式」が65.1%で最も多く、「株式投信・ETF」(34.8%)、「一般NISA」(30.6%)、「つみたてNISA」(27.6%)の順で続いている〔図表5〕。
図表5 現在の投資先および利用している制度
属性別にみると、性別では男性で「株式」「株式投信・ETF」、「仮想通貨」、「FX」、「不動産投資」で女性に比べ高く、女性で「つみたてNISA」が男性に比べ高くなっている〔図表6〕。また、年代別では若年層ほど「つみたてNISA」が、高齢層ほど「一般NISA」が高くなっているほか、40代では「仮想通貨」「ポイント投資」が他の年代に比べ高い。職業別では民間正規、公務員で「つみたてNISA」、「ポイント投資」、「iDeCo」が高く、民間正規では「株式投信・ETF」、「ポイント投資」も高い。また、嘱託・契約・派遣で「外貨預金」が、自営業・自由業で「株式」、「一般NISA」、「仮想通貨」、「不動産投資」が、専業主婦(夫)・無職で「一般NISA」が、それぞれ高くなっている。投資経験の程度別にみると、5年未満の層では「つみたてNISA」が高く、3~5年未満では「仮想通貨」も高くなっている。一方、5年以上の層では「株式」が突出して高くなっているほか、「株式投信・ETF」、「一般NISA」も高くなっている。
図表6 現在の投資先および利用している制度
2今後の利用意向
投資経験者および今後始める意向がある者を対象に、今後利用してみたい投資先・制度について尋ねたところ、全体では「株式」が47.6%で最も多く、「つみたてNISA」(34.0%)、「一般NISA」(27.0%)、「株式投信・ETF」(20.8%)、「ポイント投資」(20.3%)の順で続いている〔図表7〕。
図表7 今後利用してみたい投資先・制度
属性別にみると、性別では男性で「株式」、「株式投信・ETF」のほか「一般NISA」、「FX」、「仮想通貨」が女性に比べ高く、女性で「つみたてNISA」が男性に比べ高くなっている〔図表8〕。年代別では40代以下で「つみたてNISA」が、30~50代で「iDeCo」が、30代で「ポイント投資」が高くなっているほか、50代で「一般NISA」が、60代以上で「株式」が、それぞれ高くなっている。職業別では、民間正規で「株式投信・ETF」、「iDeCo」が高く、パート・アルバイトで「つみたてNISA」が、公務員で「株式」、「iDeCo」が、自営業・自由業で「株式」、「FX」、「仮想通貨」が、それぞれ高くなっている。投資経験・意向別にみると、これまでに経験はないが、今後始めたい層および3年未満の層で「つみたてNISA」が高くなっている。また、3年以上の層では「株式」、「一般NISA」、「株式投資信託・ETF」が高く、2~5年未満の層では「仮想通貨」も高くなっている。
図表8 今後利用してみたい投資先・制度
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