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さらなるキャッシュレス化に向けた課題について整理する(1)-2022年の日本のキャッシュレス化の進展状況の振り返り

金融研究部 金融調査室長・年金総合リサーチセンター兼任 福本 勇樹
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1――キャッシュレス決済が日常的なものに
QRコード決済は、2021年の決済額は7.9兆円で、昨年より2.7兆円増加している。民間最終消費支出に対する決済額の割合は約2.6%に達した。QRコード決済がキャッシュレス決済比率のKPIに含まれたのは2018年からだが、約5年間で電子マネーの決済額(6兆円)を超える水準にまで拡大したことになる。図表4をみると、クレジットカードやデビットカードの紐づけ利用の伸び率が低いながらもQRコード決済が伸びていることが分かる。このことは、事前にチャージして決済する前払い方式での決済額が伸びていることを意味しており、チャージ残高も2019年末の1,122億円から2022年末は5,060億円にまで拡大している。この点は、チャージして決済する方式でのポイント還元率をクレジットカードやデビットカードの紐づけ利用と比べて高く設定するなど、QRコード決済の使い方によってポイント還元率に差をつける決済事業者があることに起因しているとみられる。QRコード決済の決済額は年末や決済事業者による大規模なポイント還元キャンペーンが実施されると一時的に決済単価が上がるものの、そうでない場合は店舗利用件数とおおよそ連動しており、決済単価が低いままなのが課題と言える(図表5、図表6)。つまり、高額決済の領域ではクレジットカードの牙城を崩せていない。今後、消費者向けの大規模な還元キャンペーンに頼らずとも、QRコードの決済額が拡大していくのかどうかが注目される。
1 クレジットカード、デビットカード、電子マネー、QRコード(ただし、クレジットカード・デビットカードからの紐づけ利用・チャージ分を除く)による決済額を民間最終消費支出で除したものである。「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標である。
2 執筆時点で日本クレジット協会による2022年のクレジットカード決済額が未公表であるため、本稿では経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査(クレジットカード業)」を用いた推定値で算出した。
3 「消費者実態調査の分析結果」(経済産業省、2023年3月3日)
4 「指数関数的な伸び」は、増加幅が徐々に拡大する特徴を持つ。
5 例えば、2021年よりこれまでカード型電子マネーの形態でサービス提供されてきたWAONやnanacoにおいても、クレジットカードに紐づけすれば、スマートフォンのアプリを活用したチャージだけではなく、オートチャージにも対応できるようになった。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年03月20日「基礎研レポート」)
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03-3512-1848
- 【職歴】
2005年4月 住友信託銀行株式会社(現 三井住友信託銀行株式会社)入社
2014年9月 株式会社ニッセイ基礎研究所 入社
2021年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・経済産業省「キャッシュレスの普及加速に向けた基盤強化事業」における検討会委員(2022年)
・経済産業省 割賦販売小委員会委員(産業構造審議会臨時委員)(2023年)
【著書】
成城大学経済研究所 研究報告No.88
『日本のキャッシュレス化の進展状況と金融リテラシーの影響』
著者:ニッセイ基礎研究所 福本勇樹
出版社:成城大学経済研究所
発行年月:2020年02月
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