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2025年06月16日

マスク着用のメンタルヘルスへの影響(1)-コロナ禍の研究を経て分かっていること/いないこと

保険研究部 准主任研究員 岩﨑 敬子

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■要旨

マスク着用が人々に与える影響に関する研究分野は、コロナ禍でのその研究の需要の高まりを受けて、近年急速に進展した。マスク着用の影響は、感染拡大予防効果のような医学的側面から、コミュニケーションの質など社会心理的側面まで多岐にわたる。コロナ禍を経た研究蓄積をもとに、そのメリットやデメリットを多面的に捉えることは、マスクとのより良い付き合い方を考える機会となるかもしれない。そこで本稿を含めて、全5回の基礎研レポート/基礎研レターでは、マスク着用の人々への影響について、「健康」「メンタルヘルス1・2」「コミュニケーション1・2」に分けて、コロナ禍を経た研究蓄積からわかっていること/いないことを紹介していく。本稿では、その第二弾として、コロナ禍でのマスク着用のメンタルヘルスへの影響を取り上げる。
 
WHOは、新型コロナウイルス感染拡大が始まった2020年の間に不安と抑うつの世界的有病率が約25%増加したことを報告している1。では、新型コロナウイルス感染拡大が人々のメンタルヘルスを悪化させるなかで、マスク着用はメンタルヘルスにどのような影響を与えたのだろうか。要約を先取りしてお伝えすると、コロナ禍でのマスク着用は、感染不安を軽減させることで、メンタルヘルスに良い影響を与えた可能性がある一方、差別の助長によってメンタルヘルスに悪い影響を与えた可能性も報告されている。さらに、メンタルヘルスの状態がマスク着用の動機となっている可能性も示唆されていることから、コロナ禍でのマスク着用とメンタルヘルスの相関関係は正負共に確認されており、その解釈には十分な注意が必要である。
 
1 World Health Organization. (2022). COVID-19 pandemic triggers 25% increase in prevalence of anxiety and depression worldwide. (https://www.who.int/news/item/02-03-2022-covid-19-pandemic-triggers-25-increase-in-prevalence-of-anxiety-and-depression-worldwide, 20250602 accessed)


■目次

1――コロナ禍のマスク着用とメンタルヘルスの正の相関関係
  1|コロナ禍で確認されてきたマスク着用とメンタルヘルスの正の相関関係
  2|コロナ禍でマスク着用とメンタルヘルスの間に正の相関がみられる理由
2――コロナ禍のマスク着用とメンタルヘルスの負の相関関係
  1|コロナ禍で確認されてきたマスク着用とメンタルヘルスの負の相関関係
  2|コロナ禍でマスク着用とメンタルヘルスの間に負の相関関係が見られる理由
3――コロナ禍でのマスク着用とメンタルヘルスの関係のまとめ

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年06月16日「基礎研レター」)

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保険研究部   准主任研究員

岩﨑 敬子 (いわさき けいこ)

研究・専門分野
応用ミクロ計量経済学・行動経済学 

経歴
  • 【職歴】
     2010年 株式会社 三井住友銀行
     2015年 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員
     2018年 ニッセイ基礎研究所 研究員
     2021年7月より現職

    【加入団体等】
     日本経済学会、行動経済学会、人間の安全保障学会
     博士(国際貢献、東京大学)
     2022年 東北学院大学非常勤講師
     2020年 茨城大学非常勤講師

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レポート紹介

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