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- キャッシュレス化による感染症対策について考える-公衆衛生とデータ利活用に関する問題点の整理
2020年05月25日
■要旨
■目次
はじめに
1――現金決済に関する公衆衛生上の問題点の整理
1|現金の付着物に関する実証研究
2――海外の中央銀行による現金決済への対応と「非接触」型決済の利用拡大
1|海外の中央銀行による現金決済への対応
2|実店舗における「非接触型」によるキャッシュレス化とオンラインショッピングの普及拡大
3――感染症の拡大阻止のためのデータ利活用に関する課題
- 「現金決済の公衆衛生上の問題点を解決する目的でキャッシュレス決済を推奨すべきかどうか」「感染症拡大を阻止する目的での購買履歴データの利活用に問題点や課題はないか」の2点に着目して、感染症拡大に対するキャッシュレス化の有効性について議論する。
- 科学的な見地から、非接触型の決済手段の普及拡大は、現金取扱業務を担当する従業員を感染リスクから守る目的で導入するのが最も効果的であると考えられる。
- 現金取扱業務を担当する従業員が感染リスクから守られることで、感染症の拡大時に生命線となる病院、飲食料品、宅配のサービスを消費者も安心して享受できるようになる。
- しかしながら、キャッシュレス化したとしても直接的にも間接的にも何かしらの接触は避けられないためキャッシュレス決済に過剰な期待をかけるのは禁物で、手洗いを励行すべきと考える。
- 経済環境の急激な悪化により、手数料や資金繰りなどのキャッシュレス化に要するコストを負担するのが難しい店舗が数多く存在するとみられる。店舗サイドのコスト負担を回避するような有効な政策が導入されない限りにおいて、公衆衛生上の問題解決を企図したキャッシュレス化の進展は限定的である。
- 海外では感染症の拡大に対抗する上で、購買履歴データや位置データなどのビッグデータを利活用することが効果的であった。しかし、爆発的な感染拡大を阻止するまでに効果を発揮するには、人口のほとんどをカバーする程度で購買履歴データや位置データを収集する必要があるとの指摘がある。
- ビッグデータ収集や有効的な利活用については、利便性とプライバシーのトレードオフ関係の問題が課題となる。そのため、感染症の拡大阻止の目的でデータ利活用の効果を最大限に発揮するには、データを提供する側から見て、独占的にデータを収集する主体が信頼できる対象であることが肝要となる。
- 今後到来が予想されている第2波、第3波において、経済活動を維持しながら新型コロナウイルスに対抗していくには、ビッグデータ利活用の知恵を有効に活用できるかどうかがカギを握っている。緊急事態宣言が段階的に解除される中で、戦略的かつ実効的なデータ利活用の議論が行われることが望まれる。
■目次
はじめに
1――現金決済に関する公衆衛生上の問題点の整理
1|現金の付着物に関する実証研究
2――海外の中央銀行による現金決済への対応と「非接触」型決済の利用拡大
1|海外の中央銀行による現金決済への対応
2|実店舗における「非接触型」によるキャッシュレス化とオンラインショッピングの普及拡大
3――感染症の拡大阻止のためのデータ利活用に関する課題
(2020年05月25日「基礎研レポート」)
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03-3512-1848
経歴
- 【職歴】
2005年4月 住友信託銀行株式会社(現 三井住友信託銀行株式会社)入社
2014年9月 株式会社ニッセイ基礎研究所 入社
2021年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・経済産業省「キャッシュレスの普及加速に向けた基盤強化事業」における検討会委員(2022年)
・経済産業省 割賦販売小委員会委員(産業構造審議会臨時委員)(2023年)
【著書】
成城大学経済研究所 研究報告No.88
『日本のキャッシュレス化の進展状況と金融リテラシーの影響』
著者:ニッセイ基礎研究所 福本勇樹
出版社:成城大学経済研究所
発行年月:2020年02月
福本 勇樹のレポート
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