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- 米雇用統計(23年1月)-非農業部門雇用者数は前月比+51.7万人と市場予想(+18.8万人)のおよそ3倍となる大幅な増加
2023年02月06日
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1.結果の概要:雇用者数は市場予想を大幅に上回ったほか、失業率は予想を下回る
2月3日、米国労働統計局(BLS)は1月の雇用統計を発表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+51.7万人の増加1(前月改定値:+26.0万人)と+22.3万人から上方修正された前月、市場予想の+18.8万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を大幅に上回った(後掲図表2参照)。
失業率は3.4%(前月:3.5%、市場予想:3.6%)と前月からの上昇を見込んだ市場予想に反して▲0.1%ポイント低下した(後掲図表6参照)。労働参加率2は62.4%(前月:62.3%、市場予想:62.3%)と前月から+0.1%ポイント上昇し、市場予想を上回った(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
失業率は3.4%(前月:3.5%、市場予想:3.6%)と前月からの上昇を見込んだ市場予想に反して▲0.1%ポイント低下した(後掲図表6参照)。労働参加率2は62.4%(前月:62.3%、市場予想:62.3%)と前月から+0.1%ポイント上昇し、市場予想を上回った(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
2.結果の評価:大幅な金融引締めにも関わらず、堅調な雇用増加の継続を確認
1月の非農業部門雇用者数(前月比)は前月から低下するとの予想に反して、市場予想のおよそ3倍となる大幅な増加を示した。大幅な上振れの要因として、未季調の1月の雇用者数(前月比)が18年~22年平均で▲286万人となっているのに対して、23年は▲251万人と例年に比べてレイオフが少なかったことに伴う季節調整の影響や、荒天となった12月から1月は気候が穏やかとなったことなどが指摘されている。しかしながら、後述するように年次改訂で22年6月から12月にかけて前月比の増加数が毎月平均+5万人程度上方修正されたことと併せて雇用増加ペースが当初想定された以上に堅調である可能性が高いだろう。

時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比+0.3%(前月改定値:+0.4%、市場予想:+0.3%)と+0.3%から上方修正された前月を下回った一方、市場予想に一致した。前年同月比は+4.4%(前月改定値:+4.8%、市場予想:+4.3%)と+4.6%から上方修正された前月を下回った一方、市場予想は上回った(図表1)。
このようにみると、1月の雇用統計はFRBがインフレ抑制のために大幅な金融引締めを行って労働市場の減速を目指しているのに反して、23年入り後も労働市場が堅調を維持していることを確認する結果と言えよう。次回3月のFOMC会合までにもう1回雇用統計を確認する機会があるが、来月の雇用統計でも堅調な雇用増加や賃金上昇の堅調な伸びが示された場合にはFRBのタカ派姿勢は一層強まる可能性があろう。
3.事業所調査の詳細:広範な業種で雇用の伸びが加速
事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+39.7万人(前月:+22.6万人)と前月から雇用の伸びが大幅に加速した(図表2)。

財生産部門は前月比+4.6万人(前月:+4.3万人)と前月から小幅ながら伸びが加速した。建設業が+2.5万人(前月:+2.6万人)と概ね前月並みの伸びを維持したほか、製造業が+1.9万人(前月:+1.2万人)と前月から伸びが加速した。
政府部門は前月比+7.4万人(前月:▲0.9万人)と前月から大幅な増加に転じた。内訳をみると、連邦政府が+0.5万人(前月:横這い)と前月から小幅ながら伸びが加速したほか、州・地方政府が+6.9万人(前月:▲0.9万人)と大幅な増加に転じた。
前月(12月)と前々月(11月)の雇用増加数(改定値)は前月が+26.0万人(改定前:+22.3万人)と+3.7万人上方修正されたほか、前々月が+29.0万人(改定前:25.6万人)と+3.4万人上方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は+7.1万人の上方修正となった(図表3)。なお、今月は昨年の年次改訂も発表された。6月から12月まで毎月上方修正(月間平均で+5.4万人)されたほか、通年でも月間平均で+2.6万人上方修正された。
BLSの公表に先立って2月1日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+10.6万人(前月改定値:+25.3万人、市場予想:+18.0万人)と+23.5万人から小幅上方修正された前月、市場予想を下回った。この結果、ADP社の統計は雇用統計とは異なり、大幅に雇用の伸びが加速した政府部門は含んでいないものの、雇用の伸びが大幅に加速した雇用統計とは不整合な動きとなった。
1月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が33.08ドル(前月:32.93ドル)となり、前月から+10セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.7時間(前月:34.4時間)と前月から+0.3時間増加した。この結果、週当たり賃金は1,146.14ドル(前月:1,132.79ドル)と前月から増加した(図表4)。
BLSの公表に先立って2月1日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+10.6万人(前月改定値:+25.3万人、市場予想:+18.0万人)と+23.5万人から小幅上方修正された前月、市場予想を下回った。この結果、ADP社の統計は雇用統計とは異なり、大幅に雇用の伸びが加速した政府部門は含んでいないものの、雇用の伸びが大幅に加速した雇用統計とは不整合な動きとなった。
1月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が33.08ドル(前月:32.93ドル)となり、前月から+10セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.7時間(前月:34.4時間)と前月から+0.3時間増加した。この結果、週当たり賃金は1,146.14ドル(前月:1,132.79ドル)と前月から増加した(図表4)。
4.家計調査の詳細:労働参加率は22年3月以来の水準に上昇
家計調査のうち、1月の労働力人口は前月対比で▲0.5万人(前月:+43.9万人)と前月からマイナスに転じた3。内訳を見ると、就業者数が+8.4万人(前月:+71.7万人)と増加した一方、失業者数が▲8.8万人(前月:▲27.8万人)と減少して全体を押し下げた。非労働力人口は+17.0万人(前月:▲30.3万人)と増加に転じた。これらの結果、労働参加率は62.4%と22年3月以来の水準となった(図表5)。
一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は1月が82.7%(前月:82.4%)と前月から上昇した。男女の内訳は、男性が88.5%(前月:88.5%)と前月から横這いとなった一方、女性が76.9%(前月:76.4%)と上昇して全体を押し上げた。
1月の失業率は前述のように労働参加率の改善を伴って低下しており、引き続き労働需給が逼迫していることを確認した(図表6)。
一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は1月が82.7%(前月:82.4%)と前月から上昇した。男女の内訳は、男性が88.5%(前月:88.5%)と前月から横這いとなった一方、女性が76.9%(前月:76.4%)と上昇して全体を押し上げた。
1月の失業率は前述のように労働参加率の改善を伴って低下しており、引き続き労働需給が逼迫していることを確認した(図表6)。
3 2023年から人口推計を変更しているため、2022年と断層が生じている。ここで記載している労働力人口、就業者数、失業者数、非労働力人口はこの断層を調整した後のもの
4 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
5 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年02月06日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1824
経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
窪谷 浩のレポート
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